第635話 帰還報告
俺たちは心配しているオーリス王国の王様に帰還報告を兼ねて訪れている。
なんと言っても、心配させたしね。
一応、ことの顛末を詳しく話をしているが、あの教皇が亡くなったと聞いて、王は驚いていた。
シャーロット「お父様、あの教皇は以前から、私、嫌いでした」
王「まあ、わしも好きではなかったが、では次の教皇には、誰がなるのかな?」
シャーロット「それは、まだ決まっていないと思います。王都のお城は、壊されてゴタゴタしていますから」
「あっ、そうか、そんなにひどいのか」
「ええ」
「それでクリス君‥‥‥」と王
「はい」
「君は、今回は、ゆっくりできるのかね」
「いいえ、早急に、するべきことがあります。」
「そうか、なんだか慌ただしいな」
「まぁ、今回は、こうして報告に来てくれた訳だから、食事でもしていかんか? それと泊まって、ゆっくりしていくといい」
「お父様、ありがとうございます」
「そうですね、たまには骨休めも必要ですから、よろしくお願いします」
「では、用意させよう」
*
俺たちは、豪勢な食事をして、用意してもらった、部屋へ、それぞれが中に入って休養を取ることにした。
今は城から俺はバルコニーに出てきて、虫の音を聞いている。
あちらこちらには明かりはついているが、ここまで明かりが届くこともなく、静かな夜を過ごしてる。
俺の部屋は明かりもつけないでバルコニーに出ているので、今は月が出ている部分だけ雲があり、綺麗な満天の星をみることができる。
今まで時間的な余裕がなくて、体も心も疲れきっていたので、こんな雰囲気の夜をしっかりと味わうことができる。
俺は一度、部屋の中に入り、お湯を魔法で出して温かいコーヒーを淹れた。
湯気が出るコーヒーカップを持って、またバルコニーに出てきた。
バルコニーに出て、熱々のコーヒーを飲んでいると、ギーッと音がして、足音が近づいてきた。
暗闇から近づいてきたのは、隣の部屋のアリシアだ。
そして、アリシアだけかと思ったら、シャーロットもいる。
確かアリシアとシャーロットは、今回は同じ部屋になっていたはずだ。
暗がりから近づいてくるところに、俺は違う気配を感じる。
念話「ご主人さま、リアムが回復して目を覚ましました」とジャネットが連絡してきた。
俺は、逃げるように空間に転移した。
「あっ、クリスが消えた」とアリシア
「えっ」とシャーロット
「もう、あと、もう少しだったのに」とアリシアが言っていた。
*
俺は空間に転移してきて、リアムの様子を伺う。
そうするとリアムは、元気になって食事をしているところだった。
「リアム、大丈夫か?」
「いや〜、申し訳ない、しばらく寝る時間をとっていなくて、そのせいもあって‥‥‥」と
「?、どうして寝る時間がなかった?」
「それはですね」
「うん、それは?」
そこにエマが、話を受け継いで‥‥‥
エマ「なんだか、どこからか本を見つけてきて、それに夢中になっているんですよ」
「えっ?」
リアムが頭をかきながら「いや〜、戦いの最中に眠くなりましてね、気がつくのが遅れたんですよ」
「それで、攻撃に当たってしまって、今まで寝ていたと?」
「はい、申し訳ありません」
「ハァ〜」
エマが「ご主人さま、本は取り上げますから許してください」
「うん、今回はエマに免じて許すけど、次はないよ。‥‥‥ところで、どんな本を読んでいたの?」
チラッとエマを見るリアムだけど、エマが頷いたので「勇者物語っていう本です」
「っ! ‥‥‥それで。その本は、どうなの?」
「いや、これが面白い、なんてものじゃないんです」
「そ、そうなんだ」
「まだ、一巻しか読んでいないんですけど」
「その本の中にですね、ご主人さまと同じ顔をした人が出てくるんですよ」
「っ」
「その人の活躍が、本当に面白くて‥‥‥メンバーの女性陣に、いつも敵わなくて‥‥‥?
あれっ?
そういえば出てくる人もご主人さまと同じクリス? あれっ
あれっ、女性陣も同じ名前?」
エマが「もう、あなたね、これはご主人さまの活躍している物語を収めた本なのよ、知らなかったの?」
「えっ えーーーーーっ」とリアムが驚きの声。
「こ、この本が、ご主人さまの活躍を書いた本?」
ジャネットが「そうですよ」と固まっているリアムに行っているけど、リアムは聞いていない。
でも、二人がやっているリアクションも面白い、手を動かして。
ネコが2匹が足元にいて、真剣な話をしているなんて、つい、笑ってしまいそうになる。
でも、喋るネコ、2匹を連れているなんて、変わったチームだ。
本当は、どっちなんだろう。
猫なのか?
それともマントが、本当なのか?
ネコが進化して、剣やマントになったのかな?
そこにリアムを心配した全員が、空間に転移してきた。
俺はアリシアとシャーロットと目を合わせずらい。
で俺が、今のことを全員に話すと「まぁ、しょうがないよ」と言う声が多くなった。
ネコが本を読めるとは思う人は多くない。
その話を聞いたコリンが前に出てきて、本を差し出した。
「はい、これ」コリン
「えっ」と突然、差し出された本を見て驚くリアム。
「今、読んでいるのは1巻でしょ?」
「ええ」と驚きながら、自然と手が本に伸びている。
「これも読んでみて」とコリン
「あっ、はい」と受け取るリアム
それを全員が見ている‥‥‥
ネコに本をあげるコリン。
「読んだら、感想、お願い」
「あっ、はい、わかりました」
アリシアが「そうだよ、作者から本を手渡されるなんて、ないよ」
「えっ、作者?」
「本の表紙を見て」とアリシア
リアムは、本の表紙の作者が書いてる部分をじっと見る。
「え〜〜〜〜〜〜〜〜っ、嘘でしょ?」
コリンが「何が嘘なの?」
「だって、この本を書いた人、コリンって書いてありますけど、どこのコリンさんですか? もしかして、あなたですか?」
「そうだよ、悪い」
リアムがポカンとしている。
あまりに本人との差が大きいためだろうな。
突然、リアムがコリンの方を向いて、目を輝かす。
キラキラとした目でコリンを見ている。
エマが「リアム、気色悪いよ。女性をそんな目で見たらだめだよ」
「えっ、だって、こんな面白い本を、ここにいる人が書いているだなんて、夢にも思わなくて」
「ありがとう、リアム」とコリン
「先生、3巻目もお願いします」とリアム
「うん、それを読んだらね」
「ありがたき幸せ」と本を胸元に抱えて上を向いて目をつぶっている。
「でも夜更かししちゃダメだよ。ここにいるみんなが心配する」
「はい分りました、コリン姉さん」
「でも、コリン姉さんって、すごいですね」
「何が?」
「いや、こんな文章書けるなんて、こんな本が世の中に出たら大ベストセラーでしょうね」
そこに笑いが起きる。
「クスクス」
リアムだけが、え、何がおかしいの? つて顔をしている。
イザベラが「あのね、リアム、知らないみたいだから教えてあげる」
「‥‥‥はい?」
「たぶん、世界中で読まれている本だから」
「えっ」
「この本は、世界中で大ベストセラーなの」
「‥‥‥」
「もう、わからないネコね、勇者物語は、今、世界中で知らない人がいないくらい売れている本なの」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ーーーーーーー」
エマが「知らないのは、あなたくらいね。リアム」
「えっ、エマは知っていたのかい?」
「ええ、当然よ、だって面白いもの」
「そうだったんだ、知らないのは、俺だけ?‥‥‥‥‥‥でも、よかった、本をもらうことができて」
リアムが、とっても嬉しそうな顔をしているので、コリンもすごく喜んでいる。
俺たちも、リアムとコリンを見ていると、自然と顔が綻ぶ。
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