第621話 魔族2

リアムとエマの2人が洞窟の魔族を探る指令を帯びて潜入することになった。


この世界にはエマとリアムのように喋れる猫なんていない。


ということは2匹は、この世界の猫じゃない。


その2匹の猫が別の世界の同族を救いたいなんて考えること自体、不思議だけど、理解できる。


リアムとエマが転移して洞窟の近くにいる。


俺も、他人にばかり任せられなくなって、後から2匹を追うことにした。



俺とエマとリアムの三人?は、今、洞窟の近くにいるが気配を消して透明になっている。


念話でリアム『あれっ、ご主人さま、どうしたんです?』


念話『君たちばかりに任せていられないよ』


念話でエマが『じゃ、手伝ってもらえるんですね』


念話『うん、考えながら行動しようか?』


念話『はい』、『了解』と2匹が息を合わせて返事がきた。


念話「じゃ、そろそろ洞窟に行こうか?』


念話「行きますか」とエマ


俺たちは横に一列になって歩き始める。


エマとリアムは、歩いていくけど、俺は空中に浮かんで、下にある枝を踏まないようにした。


俺は検索魔法を発動しながら、地面の少し上に浮かんでいる。


四人の魔族は、洞窟に篭ったままで、まだ話をしている。


洞窟で話す内容じゃないことを喋っている。


主には家族の事とか生活の事とか‥‥‥


この話が本当のことであれば、戦う必要はないけど、もし演技や嘘であれば、危険なことになり得る。


ゆっくりと洞窟に向かって、音も立てずに3人で歩いていく。俺は飛行魔法で飛んでいるだけ。


洞窟の入り口にたどり着いた。


2匹と俺で、洞窟を覗き込みながら中を確認する。


なんだか変な感じがするのは、エマとリアムが、俺の視界に入らないこと。


3人?で洞窟を覗き込むことをしている割には、エマとリアムは猫なので低い位置から中を見ている。


洞窟を覗き込むエマとリアムが俺から見ると足元にいる。


それじゃ見えないだろうと俺は、エマとリアムを抱き抱える。


俺が何も言わずに抱き上げたので、2匹は驚いたようだけど、少しだけだった。


それから俺と目線が少し違うだけで、三人?で魔族を監視する。


念話「ご主人さま、どうしますか? このまま見ているだけですか?」とリアム


「いいや、中に入ろうか?」


「そうですね」とリアム


俺がエマとリアムを抱え上げて洞窟の中に飛行魔法を使って地面から5センチくらいを浮いて中に入っていく。


もちろん透明になることもしているので、魔族から気づかれることはない。


魔族は岩に座りながら、焚き火を焚いて寒そうにしている。まだ、そんなに寒い時期じゃないのに‥‥‥


魔族にとっては寒さは堪えるんだろうか?


俺たちにとっては、また暖炉を入れるような寒さじゃない。


ゆっくりと洞窟に入ってみるが、四人が手を温めてるように前に突き出しているところは人間と同じだ。


俺は、逃げることもできないようにするために、金縛りの魔法をかけて驚かないようにした。


「金縛り」とイメージをして、魔族の四人を動くことができないようにした。


「うおっ」


「動けない」


「動くことができない、どうしてだ?」


「何が起きている」


突然、動きを失った魔族四人に俺の姿だけ見せるために、エマとリアムを地面にに下ろした。


そして俺だけ、透明の魔法を解除した。


「キサマ、誰だ」


「誰だ?」


「どこから現れた?」


「どうして、ここが?」と口々に言っているが、俺は落ち着くまで待つことにした。


動くことができないことが、そろそろ不満になってきた。


「早く解除しろ」


「早くとけ」と言い出した。俺が現れたことで


「俺は勇者クリスだ」


「なに?」

「どうしてお前が?」

「どうしてお前が、ここにいる」

「なぜだ?」


「おまえたちに、ちょっと用があってきた」


「……」

「なんだ、その用とは?」と二人の男が返事を返したので、この二人が上官だろう。


「おまえたちの国は、いま、どうなっている?」


と魔族に話をしようと思っていたら、念話が入ってきた。


「俺たちの国?」と答えたところで、それを聞きながら念話に耳を傾ける。


念話はオーリス王国の国王からだった。


念話「勇者クリス様、ちょっと厄介なところから問題が上がった」と


念話で「……あとでいいですか?」


念話「うむ、まだ時間はあるので大丈夫だ、では連絡を待っている」


なんだろうか?


いまは魔族との話をつけることに優先させる。


「おまえ、俺たちの国のことをしっているのか?」


「ああ、少しな」


「俺たちの国は、こことは違う場所にあるのに、それでも知っているというのか?」と別の魔族。


「……」どう答えようか迷ってしまう。


「お前たちは、どうして、この人間の国に戦争を仕掛ける?」とこちらが答えるよりも先に質問して見た。


「それは、この星は豊だからだ」


「お前たちの国は、豊じゃないと?」


「ああ、そうだ」

「魔族の者の、食うものがない……」

「子供もお腹を空かせている」

「病気が流行っている」


と全員が俺の問いに答えを返した。


「どうして人のものばかり狙って、自分たちで努力しない?」


「努力はしたさ」

「そうさ、それでも、どうしようもないことがある」

「俺たちの星は滅亡に向かっている」

「そうだ、もうすぐ滅ぶだろう」


「なんだって、ほんとうなのか?」


「ああ、ほんとうだ」


「原因はなんだ?」


「原因は……」ここで言い淀んだ。


一人の魔族が「火山の噴火だ」と答えた。


「おまえ、ばかやろう、本当のことを言うな」と言われている。


「……お前たち、それで、この国に移住でもするつもりなのか?」


「ああ、そうだ」


この国の実情は言う必要はないけど。


ウルフの奴が、それを理由にして、魔族を動員していることもある。


兵を動員するためには理由が必要になる。


「お前たちが言うことに、根拠はあるのか?」


「ある」とすぐに答えが返ってきた。


魔族の男が「俺たちの星は、岩だらけの国で作物も育たない。しかし、それでも長年の、苦労のすえ、やっと作物の改良で、育つものができたんだが、3年前から、あちらこちらの火山が活性化しだした。

俺たちの国の調査員が動員され調査を行ったが、良い結果がでなかった。

それで抑えようと科学兵器も使ったが、それがかえって逆の結果になり、より一層、噴火が激しくなってしまった。

あちらこちらでマグマは吹き出し、もうすぐ王都までくるだろう」と真実味があることを言う。


しかし、それを、そのまま信用はできない。


確かに以前、蜂になって魔族の星まで行った時には、遠くで山の噴火が見られた。


それほど意識しなかったから気が付かなかったと言うよりも、あの時はウルフの方が気になっていたからだ。


「お前たち、王はどうしている?」


「王は、最近、新しくなった王がいるが、何もしない」

「そうだ、あの王は、以前の王よりも悪くなった」

「でも、王には逆らえない」

「王は強い」

「新しい王は、前の王を倒して、即位した」と一人の魔族が話す。


「前の王は?」


「新しい王に吸収された」


「吸収?」俺は知らないふりをした。


「そうだ、決闘で敗れた前王は、新しい王に吸収されてしまった。」

「我々が、防げなかった」

「王をお守りすることができなかった」

「俺たちが王の守りなのに…」


「お前たち、もしかして魔族の四天王か?」


「……ああ、そうだ、どうして知っている」

「おまえ、勇者だといったな」


「ああ、そうだが」


「頼む、俺たちの星を救ってくれ」


「……すぐに判断はできない……お前たちの星のこともあるが、裏付けもとる必要もあるし、この星にも急ぐべきことがある」


オーリス王国の王からの案件も気になる。


「では、裏付けを早急にとってほしい」と魔族の男


「そうだ、俺たちは急いでいる」


「それは無理だ」


「どうして、俺にも動けない理由がある。今は」


「では、動けるようにして早急にしてほしい」


「俺が動けるようになっても、お前らの世界にとっては、何もできないかもしれないぞ」


「動いてもらうだけでいい」


「そうだ、まずは現状を知ってもらうことだからな」


「お前たち、そんなに俺を、お前らの世界にいかせたいのか? 何か企んでいないか?」


「そんなことは考えていない、信じてくれ」




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