第620話 魔族

敵の魔族の四人がブラッドフォード大公国の俺の屋敷の山荘に程近い洞窟にいる。


魔族だって、人と変わりはしない、ただ顔つきやツノがあるとか、手の爪が尖っているとか、肌が黒いとか、羽が生えているやつがいるとか‥‥‥


目も人種ひとしゅとは違う。


そんな奴が弱気になって、話をしていること自体、信じられないことだが、実際に俺が蜂になって見にいった、国は、貧困に喘いでいるような感じに思えた。


違う世界だから当然か?


違う世界の人間だな。それが魔族だ。


だから魔族だって、家庭もあれば、子供もいる、それは、この世界と同じだ。


すぐにも信用して、奴らの元に転移して話をつけたいと思う自分がいる、しかし、それは罠だと言う自分もいることは事実だ。


どうしようか?


気持ち的には、今でも、魔族の元へ行って、話をつけることがいいと思うけど、罠だという疑いもないとはいえない。


「みんな、罠だと思う?」


「う〜ん、難しい問題ね」とソフィア


「もう、こうなったら、ご主人さまの意のままにしかないと思うのよ」とジャネット


「うん、その通り」とコリン


珍しくコリンが喋ってきた。


「最後には、俺次第だということだね」


「それしかないよね」とパトリシア


「よし、手をこまねいていても問題の解決にはならないから、十分、注意しながら、接近してみよう」


「うん、それでこそ、勇者」とイザベラ


「俺だけが転移していくから、あとは全員で警戒をしてもらえる?」


「うん、もちろん、了解」とソフィア


「早く帰ってきなさいよ」とイザベラ


イザベラは、いつも、こんな貴重なんだけど心配しているのは、わかっている。


「あれっ、そういえば、リアムとエマは?」


「あっ、そういえば、最近は見かけませんね」とシャーロット


「どこに行ったんだろう?」


「さぁ、言わずに、どこかに行ってしまいましたから‥‥‥」とセラフィーナ


「まぁ、いいか」


と思っていたところ、突然、頭が重くなった。


「ご主人さま、聞こえましたよ」


「えっ、リアムとエマ?」


俺の頭から降りてきたネコ、2匹は、リアムとエマだった。


「どこに行っていたの?」


「それは、もう、誰かが悪口を言うのか、探るためですよ」


エマが「もう違うでしょう」とリアムの頭をこづいている。


「ご主人さま、急にいなくなって、申し訳ありません。私たちは魔族の国に行って、同族と話をしてきました」とエマ


「えっ、俺に黙って、魔族の国に行ったの?」


「はい」


「魔族の国に猫なんているの?」


「はい、私たちと少し違いますが、います」


「そうなんだ、まぁ、行ったあとに報告されてもね」


「本当に、申し訳ありません」とエマ


「それで、どうだったの?」


話すのがリアムに変わって「あっちの奴らは、本当に汚いし、臭いし」と話し出す。


「でも、家で別れているネコもいるんじゃいの」


「そいつらも、痩せほそっているんですよ」とリアム


「えっ、家で飼っているんだから、食事はもらっているだろうに」


「それが、そうでもないんですよ」リアム


エマ「向こうの世界の猫に話を聞きましたが‥‥‥」


「向こうでも猫が話すことができるの?」


「実際には、話すことはできません。ですが、私たちであれば、それが可能なんです」


「へー、そうなんだ、すごいね、で?」


「はい、向こうの猫と話をしてみることで、多くの情報を持ってきました」


「エマ、リアム、2人はえらい」


「いえ、そんな‥‥‥」


「当然」


「それで、それで、猫たちは何て?」


「それがですね、俺たちが話す代わりに何か、食べるものをくれって言うので、あげることにしたんです」


「うん、うん、いいよ、それくらい」


「それがですね、私たちの異空間収納に入っている食べ物を全部、あげることになってしまって、今、収納には何も入っていなくて‥‥‥」


「あっ、じゃあ、あとであげるよ」


「あっ、ほんとうですか、ありがとうございます、ご主人さま」


リアムが「あの、それで俺たち腹ペコなんですが」


「えっ、君たちが食べるものもあげたの?」


「はい、そうなんです」


「じゃ、俺が異空間収納から食べるものを出すね」と行って焼き串を出したけど、こんなの猫がたべられるのか? と思っていたが、2人は人が食べるように焼き串を手で持って、食べている。


あれっ? あの手で、どうやって持てるんだ?


まぁ、そこは深く追求しないようにしよう。


2人は、美味しそうに焼き串を食べている。


俺は、早く2人の話を聞きたいけど、我慢して待っている。


2人が食べ終わった‥‥‥


「それで、早く話を聞かせてよ」


「まぁ、お待ちください」とリアム


今度は、2人は右手で顔を洗っている。毛繕いか?


そこにイザベラが「あなたたち、早く情報をリークしてよ」


とイザベラがいうと2人は顔を見合わせて「できたら、同族を援助してください」と頭を下げてきた。


「同族の死は、みるに耐えません」とエマ


「そんなに悪いの?」


「はい、向こうの同族のネコがいうのは、かなりひどくて、食べるものもないそうです」


「ということは、魔族の奴らも食べるものがない?」


「はい、その通りです」


「じゃ、どうやって食いつないでいるというの?」


「それはですね、草を食べているそうです」


「それは同族の猫だけ?」


「いいえ、魔族も同じように食べれる草を食べて生活しているそうです」


「畑はやっていないの?」


「作物ですよね、作物は、あまり育たないそうです。水も少なくて雨に頼っているそうですが、雨も少なくて‥‥‥」


「作物も育たないということだね」


「はい、その通りです」とリアム


「でも、この世界の食べ物は、持っていけないよ、ここが危なくなるから」


「はい、わかっております」とリアム


「う〜ん、どうしようか?」


イザベラが「クリスが勇者なんだから、王をのとってしまえばいいのよ」


「王を乗っ取る?」


「そうよ」とイザベラ


「それで俺に王になって、経営しろと?」


「そう」


「そんな簡単い行かないよ」


「でも水魔法で数回、雨を降らしたら、どうでしょう?」とリアム


「う〜ん? それもいい考えだけど、それで草とか生えやすくなればいいけど、そうすると、しばらくすると土が変化するかもだけど、どれくらいかかるか?」


「そうですよね」と声が落ち込んでいる


「そんなことをしたら、数十年、かかるよ」


「はい‥‥‥」


「でも、君たちの同族の命を助けるためには、行動するよ」


「本当ですか? ご主人さま」


「だって、エマとリアムが、そうしてもらいたいんだろう?」


「はい」


「どこの世界でも、命には変わりないよ」


「ええ、そうですよね、ご主人さま」とエマ


「ありがとうございます」とリアム


「別に2人に言われたからじゃないけど、行かなければいけないことだからね」


「リアム、エマ、状況はわかっている?」


「はい、洞窟にいる魔族の人たちですよね」


「そうなんだ」


「たぶんですが、何かの理由で逃げている方達だと思うんですが」


「それを偵察してきてもらえるとありがたいけど」


「えっ、私たちでいいんですか?」


「うん、君たちが適任だと思うんだ、理由は、その足にあるもの」


「えっ、足ですか?」と言って足を見ている。


「もしかして肉球ですか?」とエマ


「正解。君たちが持っている肉球は歩いても音がしにくいだろう?」


「はい、砂利道は無理ですが、普通の道なら大丈夫かと」


「お願いできるかな」


「はい、了解しました」と言って2人は直立して敬礼姿勢をとった。


「では、エマ君、リアム君、特別任務を与える、頑張ってくれたまえ、成功の報酬は、魚を差し上げよう」


「あっ、いえ、魚より肉の方が‥‥‥」とリアム


「じゃ、肉をあげよう」


「やった〜、張り切っていくぞ」といいながら2人は俺の前から転移した。


ソフィアが、「あの2人なら大丈夫ね」


イザベラが「うん、肉球とは思わなかったわ」


「うん、そうだね、肉球最高」とソフィア


シャーロットが「あの2人の肉球なんて、最高ですね」


セラフィーナが「うん、私も、そう思う」


俺は肉球が音を立てないでいいという意味で言ったんだけど、他のメンバーは触った感触を言っている。


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