第609話 勇者のレゾンデートル(存在意義)16

サイラス帝国で食事中に、俺たち七人は、デズモンド帝国で勇者の足取りを追っているメンバーに合流する。


しかし、俺は、いまだにアンデットのところいた奴に検索魔法でマーカーをつけ追っている。


デズモンド帝国に緊急に転移してきたのは、メンバーが探る勇者の関係者なのか、わからないが、付け狙われているせいだ。


同時発動する魔法を使うのは、結構、集中力が必要になるが、初めは苦労したが、徐々になれてきた。


デズモンド帝国の首都にいる勇者を見つけ出して確認するため、メンバーが現地で情報を集めているが、普通だったら、神レイチェルなら本物の勇者なのか、すぐに確認できるはずなんだけど、それができないということで依頼された。


まぁ勇者が俺1人っていう決まりも規則もないから、邪魔さえしなければ、問題はないし、本物の実力がある勇者なら、是非とも手伝ってほしいところだ。


しかし、勇者の情報を集めようとして、付け狙われるということは問題だ。


そいつが、本当に勇者なら、俺たちを狙う必要はない。


しかし、その勇者のパーティーの奴らが狙っているのか、違うパーティーが狙っているのか、また、第三者が介入しようとしているのか、それを確認しなければならない。


今でもアリシアとジャネットとロゼッタの三人の背後に、巧妙に隠れながら、後をつけている。


もちろんジャネットとロゼッタにはわかっているから、アリシアに教えている。


しかし俺たちが転移してきた理由は、その隠れて追っている奴が尋常じゃないくらい強い奴だからだ。


その正体はウルフ‥‥‥


魔族の皇帝のウルフが出てきた‥‥‥


一見、見ると建物の壁に寄りかかりただずんでいるようにしか見えないが、気配自体が、全然、違う。


すごい凶悪犯に目をつけられたみたいな気配を漂わせながら、立っている。


もしかして、俺を誘き出すための罠か?


今、俺たちは首都の上空に待機しているが、かなり上空になる。


ジャネットに念話で『今、上空にいる』


『はい、ご主人さま、私たちは、気がついていないふりをしています』


『付け狙っているのは、ウルフだ』


『やはり、奴ですか?』


『うん、蜂になって魔族の国へ行った時のウルフの顔だから間違いない』


『でも、襲ってこないのは、どうしてでしょう?』


『それはわからないけど、まさかウルフが街が壊されるからとは思っていないだろうけど』


『ええ、そうですね』


『あまり1箇所に止まると怪しまれますから移動します』


『了解、上空から何かあったら介入するから』


『はい、わかりました』


三人は、普通に歩いたり、買い物をしたり、話したりしている。


しかし、歩く方向は人通りが少なくなる方向へ。


しかし、ウルフの奴が一向に動き出すことをしない。


ただ、適度な距離を置いて三人の後ろを歩いている。


おかしい、どうして奴は、仕掛けてこない?


ただならぬオーラを漂わせながら、シトーカーみたいに後ろを付け回すだけなんて、どう考えてもおかしい。


今は、三人は人通りがないところを歩いているが、仕掛けてくる気配がない。


どう考えても、チャンスのはずだが‥‥‥


もう、待っていられないから、俺は先に仕掛けることにした。


ここにいメンバーに「ここで滞空していてくれる」


「了解」とアレクから返事が返ってきたので、あとのメンバーは頷いている。


全員が了解するのを待って俺は、早速、転移魔法を使ってウルフの正面に現れる。


「うおっ、びっくりした」とウルフは叫んだ。


「お前は、誰だ?」


「‥‥‥俺はウルフだ」


「嘘だな、本物のウルフは、どこにいる?」


「だから俺がウルフだって言っているだろう? お前、勇者か?」と聞いてきた。


本物のウルフであれば、俺を知らないはずはない‥‥‥


ということは、偽物?


俺は鑑定魔法を発動して確認してみる。以前、魔族の王と融合したウルフを知っているが‥‥‥


なんだ? こいつ


表面上だけウルフの表示が出るが、中身は違うやつだ。


騙された‥‥‥あまりにも巧妙すぎるやり方で‥‥‥


どうやって作ったのか、わからないけど、以前にウルフは人の表皮を纏っていたことがあったが、こいつはウルフの表皮を纏っている。


俺を騙すほど巧妙なやり方に、俺はちょっと落ち込む。


念話で『全員、警戒、こいつはウルフじゃない』


「俺がウルフだ、貴様、俺に戦いを仕掛けてきているのか、それなら、やってやろうじゃないか」と男は凄む。


「お前、相当馬鹿だな」


「なにを‥‥‥」


「自分でウルフだというわけないだろう」


「‥‥‥でも、俺はウルフだ」


こいつが被っているもの自体はウルフなので、作ったのか? それとも魔族の王と融合した時の残り物なのか?


そんなことは、どうだっていい


まずは目の前の奴を倒すことが先決だ。


「おい、偽ウルフ」と俺は煽ってみた。


「誰が、偽だと?」


「お前は偽のウルフだろう」


「そ、それは‥‥‥」


「本物のウルフは、どうした?、昼寝でもしているのか?」


「だから俺がウルフだと言っておるだろう」


「いいや、お前はウルフじゃないな」


「よし、戦いで決めようじゃないか」


「ああ、いいだろう」と言ってすぐに、偽ウルフからウィンドカッターの鋭いのが飛んできた。


「クリス、危ない」とアリシア


俺は避けることもできたが、あえて避けなかった。


片手を出して、奴のウィンドカッターを受け止める。


鋭い歯のようになった風魔法が、俺の掌で唸りを上げながら移転している。


それを消すこともできたが、あえてしないで俺の魔法を上乗せして威力を増した状態で奴に返す。


「ふんっ」と言って俺の手を離れたウィンドカッターは、さらに勢いを増して飛んでいく。


偽ウルフの奴に、ウィンドカッターが接近していく。


そのウィンドカッターを偽ウルフの奴は、ギリギリでかわす。


「キサマ‥‥‥よくも俺の魔法を‥‥‥」


「あんな弱いウィンドカッターなんて、みたことないぞ」


「なにを、お前」


「キサマじゃなかったのか?」


「‥‥‥」


相当、怒り出した。


「お前だけは許さん」


「おっ、じゃ、他は許してくれるのか?」


「‥‥‥俺をおちょくりやがって」


頭から蒸気が出そうだ。


偽ウルフの次の魔法は、ドス黒い魔力で火系の球を作り出した。


これをファイヤーボールと言っていいのか?と思えるほどのドス黒い魔力を込めた炎系の魔法。


威力も、先ほどのウィンドカッターとは、桁が違う。


その魔法を偽ウルフは、俺に向けて放ってきた。


しかし、俺は放たれた魔法をいとも簡単に避けて、俺の横を通り過ぎていく。


しかし、俺の後方に行った攻撃魔法は、霧散することなく、アリシアたちの方に向かって飛んでいく。


俺がいくこともできたが、俺はいかないで、アリシアたちに任せることにした。


三人は基礎魔法を展開し続けているので、もちろん、俺との戦いを注視していたので、三人で声を合わせて「せーの」と言ってファイヤーボールを発動して発射した。


三人が作ったファイヤーボールの方が、偽ウルフが放った魔法の威力を十分すぎるほど凌駕している。


なので当然、偽ウルフが放った魔法は、三人が放ったファイヤーボールに負けてしまい霧散したが、三人の魔法が集まって一つになり、偽ウルフに向かっていく。


偽ウルフは魔法を放って安心していたのと、操作に夢中で、自分の防御を疎かにしていた。


なので、三人の魔法が、奴に当たり、奴は片腕を無くした。


三人は「やったね」と喜んでいる。


しかし偽ウルフは痛そうに腕を抑えながら睨んでいる。


「くそっ、こんな奴らにやられるなんて」と血を滴らせながら、つぶやく。


それでも偽ウルフの奴は逃げなかった。



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