第603話 勇者のレゾンデートル(存在意義)11

他人が作った空間を、誰かが使うなんてできることは、普通だったらできない。俺も屋敷で発見した空間を利用したことはあったけど、あくまでも、そこでしか使えない。


違う場所に持ってくることはできない。


屋敷のカーペットに織り込まれた魔法陣を転移装置にして、あの空間にいく、そして、そこから帰る、それだけが、あの空間では可能だった。


それができたのは、魔法陣があったからだ。


今回は魔法陣はないので使うことはできない。


俺は魔法陣を使うことなく、他人が作った魔法陣を他人の魔力に、自分の魔力を融合させ実現してみせた。


他人が作った魔法に自分の魔法を混ぜるなんて、自分でもよく思い付いたと思う。


他人が作ったものは、普通なら他の奴が、どうこうできるものではない。


これで、空間を操作できるようになった。


俺は、早速、誰かが作った空間の口を閉じて空気の流れを遮断した。


このまま放置しておいていいのか、不安になった‥‥‥


「う〜ん、どうしよう」


今は空間の口を閉じているからいいけど、不安なところがある。


もし、口は開かないと思うが、ひび割れが大きくなってしまったら、また、どこかに口が開いてしまうんじゃないか?


俺の空間になったから、俺は消滅させることを選択した。


ちょっと異質な部分があるだけだから、簡単に空間を俺は消滅させた。


「これで、よし」と口に出していうと、みんなが寄ってきた。


「クリス、もう、安全?」とイザベラ


ジャネットが「空間にあんな使い方があるなんて‥‥‥」


「いや、俺も以前、研究したことがあったんだけど、それも考えていたからね。でも、あの時は魔法の能力がない時だったから、ここまで考えられなかったよ」


「一応、こんな使い方があるって、わかっていたの?」とアリシア


「うん、一応ね」


「でも、それなら、もっと早く、やってよ」とソフィア


「いや、考えたことは、考えたけど、能力が足りなければできないことだよ」


「あっ、そうだよね、以前のクリスと、今のクリスじゃ、雲泥の差だからね」とソフィア


「失礼だけど、その通りだから何も言えないよ」


「そうそう、それだけ成長したっていうことね」とアリシア


「でも、どういう方法で破滅させるのか、わからないけど、このやり方で、するのかもしれないよ、みんな、それまでに、空間操作を覚えておくこと」


「えっ、そんなの無理よ」とイザベラ


「無理でも、練習しておくこと、いい、わかった?」


「はぁ〜い」と変な返事



俺たちは、魔族の死体は、空間に吸い込まれたものと、焼けてなくなったものを確認して、残っていなかったので、城に帰ることにした。


「じゃ、みんな城に帰ろうか?」


「うん、そうだね」

「あ〜お腹、減った〜」


「お城で食事をしようか?」


「うん、賛成」と言って俺が最後に転移したけど、なんか違和感を感じている。


なんだかわからないけど、スッキリしない。


今、この現場では、生命反応はない。


ないと言っても虫はいるから、虫よりも大きな生命反応はないということだ

‥‥‥


なので俺は、これも初めての魔法だけど、以前、蜂に憑依した時のやり方と同じように、小さな虫に憑依することで意識を残した。


今度、憑依したものはバッタ‥‥‥


俺は虫は好きじゃないけど、昔、村でアリシアから、虫を背中に入れられて虐められたから、それ以来、虫は大っ嫌いになった。


でも、触るのも嫌だけど、自分が虫になってしまえば、自分ではわからないから‥‥‥と誤魔化しておこう。


今は、パーティーメンバーはいなくなった。


俺も草の間に隠れている。


虫の音、意外に音はない‥‥‥。


オオカミが数匹やってきて、何かを探している。


魔族の死体の匂いを嗅ぎつけたのか?


俺はオオカミに襲われることもあるので、草の影に隠れてやり過ごそうとした。


気配だけを作動した状態で影に隠れているが、突然、オオカミの一頭が切り殺された。


「えっ」


今は、このエリアには、虫とオオカミが5頭いるだけなのに、誰かが切ったような傷ができているがオオカミには生命反応はない。


どういうことだ?


切り殺されているオオカミ以外は、オオカミが4匹だけの生命反応しかない‥‥‥。


俺の検索魔法でも引っかからない奴がいるのか?


一頭が切り殺されたので、残りの4匹のオオカミが警戒する。


しかし周りを見ても誰もいないので、残ったオオカミたちは、死んだ仲間のオオカミを食べ始める。


俺の検索魔法を展開中でも、反応がないけど、、なんだかわからない不自然な奴がいることはわかっている。


これがウルフの側近の四天王なのか?


これほどの実力がある奴がいるのか?


しかし、困った、俺が検索しても実態が反応しないなんて‥‥‥


どうするか?


俺は、まだバッタになって草むらに隠れている。


オオカミたちは貪っている。


俺は、初めての試みだらけだけど、どうにかやって見えない、反応もしない奴を探る必要がある。


それで何をしたらいいのか?


「う〜ん、困ったぞ」とバッタだからつぶやくこともできない。


試しに、今まで通り検索魔法を展開してやってみた。


変化なし、


そこにステイタスを見てみることにした。


なのか、いい魔法が乗っていないのか?


俺のステイタスは最近は、しっかり見ていない。


ステイタス表を、ゆっくり見ながら使える項目を探す。


そうすると検索魔法の項目が見つかった。


その項目を見てみて、自分でも驚いた‥‥‥


なんと、普段、何気なく使っている検索魔法の項目が1だった。


そして、どこまで使えるか?という項目は普通なら10というところが、これも、また無限大?


俺は使える魔法を意識して使っていなかったみたい。


でも、多分、これも能力の拡大のせいだろう。


普通なら、ここでステイタス表の数値を1から上に上げるんだろうけど、俺はステイタス表をしまった。


そう、今までよりも高レベルの検索魔法を使うことにした。


そう思っただけで、バッタの体が変化した。


緑のバッタが、黄色に変化した。


自分の手を見てみると、嫌なギザギザがある手が、今までは緑色だったのに黄色になっている。


なんだかいつも自分が使っている魔法が、どのランクにあるのか、気になり出したが、たぶん、まだ成長中の可能性もある。


なので俺の使える範囲を自分で決めることにした。


魔法力が低レベルの魔法を使う場合は全容量の1を使う。


つまり容量が大きくなっても、1は1に設定して、6の威力の魔法を使いたければ、全容量の6割を使う。


これだったら、いくら能力が拡大しても大丈夫だ。メモリが伸びても使うことができる。


俺は検索魔法の先ほどは1しか使っていなかったので、今回はレベルを上げて3のレベルの検索魔法を使ってみる。


そうすると、引っかかってきた。


かなり巧妙に隠されいるみたいだ。


しかし隠れて何をしたいのか?


単純に集まってきたオオカミを殺すためじゃないだろう?


隠れている奴の姿がわかった。


これほど巧妙な魔法を使うわけだから、能力的には四天王だと思える。


俺の普段、使っている検索魔法を掻い潜り隠れて何をしようとしているのか?


じゃ、先ほどの魔族の軍は囮なのか?


そして空間も‥‥‥


軍を壊滅させることは、初めからわかっていたこと?


魔族の軍は消耗品なのか?


そんな奴が、四天王なのか?


許せない‥‥‥


俺は、久々に燃えている。


俺は、城から実体になって1人で、この現場に転移してきた。


俺は現場に転移してきても、奴が尻尾を出すまで、何かを探しているふりをした。


何かを探している振りというのも、大変なことだけど、地面を見て、探している‥‥‥。


時々、何かを拾い上げて、それを確認することをしている。


高精度の検索魔法を展開しておきながら、動き出すまで待っている。


もちろん、逃げられることはないようにして‥‥‥


ちょうど、俺が何かを見つけたふりをした時だった、後ろ向きになって座り込んだ。


それを好機としてみた奴は動き出した。

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