第601話 勇者のレゾンデートル(存在意義)9

俺がオーリス王国に現れた魔物をあらかた片付けて、ライオネル公国に転移でやってきた。


しかし、このまま、同じようなことがあちらこちらで起きれば、手に追えなくなる。


俺たちは十四人しかいない。1人ずつ現場に派遣するようなことはしたくない。


2人体制でも、俺たちは七か所しかいくことができない。


最近は俺の分身体を作っていないが、今は何体くらい作ることができるのか?


そんなことをやっていていいのか?


もっと上手く立ち回ることができないのか?


陰でコソコソ、もっと重大なことを実行しようとする奴はいないのか?


ウルフの奴が、どうして動かないのか? それも問題の一つだ。


世界のあちらこちらで魔物が出現しないことを祈るばかりだ。



今まで魔物が出た数は50万以上だが、そんな魔物が、どれだけいるのか検討もつかない。


しかし、実態があるものなら、死んでも残るはずだが、消滅していると言うことは、どうしてなんだろう?


俺の魔法が特殊だからか?


あとでジャネットに確認する必要がある。


もし消滅するとしても、異世界から来ていると考えても、霧散するのは、どう考えてもおかしい。


もしかして人工的に作った魔物なのか?


以前からウルフの奴が研究者に扮していたりすることがあったのは、目的が巨大なカメを作ったり、魔物を作ることが目的だったのか?



ライオネル公国に到着して、俺は、セラフィーナの後方に転移してきた。


アレクの方をみたが、後方で食事をしているみたいだ。


俺が転移してくると俺の方に手に持っているパンを振っている。


アレクから話しを聞いたセラフィーナが、今は王と数人の閣僚で地図をみながら話をしている。


俺がセラフィーナの横にたつ、そこで初めてセラフィーナは俺に気が付いた。


「あっ、クリス様…」


「王様、久しぶりです」と最初に王にあいさつした。


「うむ、貴殿も変わりなく…」と言って俺とセラフィーナを交互にみた。


「クリス様、対策はどのようにしましょうか?」


「そうだね」と言ってアレクの方をみると、食べ終わったみたいで、手を拭いている。顔にはクリームが付いている。


侍女の方がアレクの顔を拭いてくれた。「さぁ、いいですよ」


「うん、ありがとう」と言ってアレクは俺の横にやってきた。


アレクが来るのを確認して「確認しようか?」と言いながら、「アレクは王を頼める?」と俺が言うと、おいしかったみたいで口の周りをなめていた。


「うん、わかった、ご主人様」


「じゃ、セラフィーナは俺と行こうか?」


「はい、よろしくおねがいします」


久しぶりにセラフィーナと行動を共にする。


「セラフィーナ、よかったね」とアレク


それを聞いてセラフィーナは顔が赤くなる。


「なかなか、うまくいっているようで安心した」と王


「お父様……」と余計に顔を赤くするセラフィーナ


俺は、それよりも気になっていることがあったので、聞いていなかった。


気になっていることは、どこに転移しようかと考えている。


今回の出現したのは魔物ではなく魔族だった。


人数こそ魔物と違って少ないが、俺たちと同じ姿をした魔族……が今回の相手になる。


その魔族を、今回は相手にすることになる。


女性たちに相手を頼むのは酷なこともあり得る。


魔族の数、2万を超えている。


しかも非常に厄介なことに、統率が取れていることだ。ということは軍隊かな?


魔族の軍隊が、ライオネル公国に出現してきているときに見たのは空間から出てきている。


俺が以前、やったことを敵が実行していることになる。


俺とセラフィーナ、アレクと王様は透明になって見つかることなく、魔族が展開しようとする上空に転移してきた。


王は初めての転移だったが、慌てることもなかった。


上空に滞空しながら、下を見ると、キレイに整列している所だった。


王様が「すごいもんだな、あんな奴らが我が国に攻め込んできているのか?」


「そうですね。今までは数人のグループの戦いでしたが、軍隊ということはなかったですね」


「どうしたらいいだろうか?」王


「そうですね、まずは軍を前面に動かすよりも、王都の守りを固めることです。」


「では、前線は、どうすれば良いのだ?」


「それは俺たちがいきます」と俺が言ったらメンバーの全員が転移して来た。


「おお、そうしてもらえると助かる」


「セラフィーナもメンバーですから、前線にいきますけど、いいですか?」


「ええ、もちろんだ、セラフィーナは次期国王だが、そんなゆうちょなこと言っておられん」


「セラフィーナ、申し訳ないが国を守ってくれ、わしに言えることは、これしかない」


「はい、おとうさま……」


「ライオネル公国の未来のために……皇太女として、勇者クリス殿とともに」


「はい」


俺は、その言葉を聞いて踏ん切りがついた。


もう、命が惜しいとかいってられない。


この国を守るために…… 


3人は俺が透明魔法をかけているので、他の人には見えていない、セラフィーナは自分で飛んでいるので大丈夫だ。


魔族からの攻撃はないけど、他人の国に軍隊を整列させていること自体、進軍の意味がある訳だから、もう戦闘行為をするととってもいいだろう。


3人を上空に残しながら、俺は少し離れたところで、魔法を使う準備をしていく。


使う魔法の種類は、炎系の魔法と風魔法と聖属性魔法で同じだけど、それを使う前にカメに用いた『重圧』と使うことにした。


つまり地面に押し付けて動けなくする……。


今は空間から出てきている所で飛んでいる奴はいない。


しかし魔族は背中の羽が生えているから、飛んで散らばると厄介だから、目に見えない圧力を加えて、動けなくして倒していくことにした。


俺は魔族に対して重圧を発動する。


前に使った時は、メンバーが危険で使ってしまった。


今回は意識して、重圧を発動する。


重圧の範囲は魔族が整列しているところで範囲を絞ることにした。


2万の軍隊が空間から出てきて、整列するだけで時間がかかる。


整列が終わる前に、俺は魔法を発動する。


もうすぐ、空間から出てくる軍隊はいなくなる頃‥‥‥に


「重圧」と俺が唱えることをしなくても、いいんだけど、なんとなく言ってみた。


俺の伸ばした手の先から出るのではなく、範囲指定した部分だけが、重力が重たくなる。


魔族のやつは、口々になにか言っている。


立って居られる奴はいない。あの亀を押しつぶす圧力をかけているわけだから。


亀の甲羅をも押し潰していく絶対的な圧力。


俺が重圧の魔法を使うと、全員が地面に膝をつき体を伏せる。


「な、なんだ、これ」

「ひっ、体が潰される〜」

「助けてくれ」


「グチャッ」と潰れた魔族の奴もいる。


俺はさらに重圧を強くしていく。


あちらこちらで潰れる音がしている。


あまりみていていい光景ではないので、アレクに念話で『アレク、見せていい光景じゃないから王とセラフィーナを連れて戻ってくれる』


『あっ、はい、わかりました、ご主人さま』


『あ、あのクリス様?』


『うん、なんだいセラフィーナ』


『私は、みていたと思います』


『? どうして、あまりいい光景じゃないよ』


『はい、それはわかっています。でも、クリス様が、私の国にしてくれることを忘れないためにも、お願いします』


『そう、わかった、アレク、王を城へ』


『了解』と言って王を連れてアレクはいなくなった。


『セラフィーナ、よく言ったね。セラフィーナは次期国王になるから、綺麗な部分と汚い部分を知っておく必要がある。

国を統制することは綺麗事だけじゃないんだ。一番、綺麗じゃないのは人だけどね』


『クリス様、それをいうと身もふたもありませんよ』


『まぁ、そうだけど、本当に人は妬み、恨み、、無い物ねだりなんかが強いから』


『はい、私もそうですよ、いつもアリシアをみていて思いますから、クリス様がどうしても私には必要だって』


と俺は魔法を発動しているのに、横にきた。


「えっ、俺? 勇者じゃなくて?」


「はい、あの日のことは忘れていません、いいえ、忘れられません」


「そうだね、酷い目にあったから‥‥‥」


「いいえ、そうじゃなくて、あ、あの日、私の目の前にクリス様が現れたことです」


「俺が君の前に‥‥‥」


「はい、運命だと思いました。私が地下牢に捉えられている時、私は、もうダメだと思いました。ここで私は死ぬんだと。

捉えられてから屈辱の日を経験してきましたが、突然、現れた男性に驚きはしました。私は裸でしたし、でも牢屋の鉄格子を物ともせず、一瞬で私を救出してくれました。

あの時から、私の体と心はクリス様のものです。」


「‥‥‥」


「どうか、こんな私でよければ、け、結婚をしていただけないでしょうか?」顔と耳まで真っ赤になっている。


「うん、君は災難にあっただけで、心も体も綺麗なままだよ、そんな君が望むことなら叶えたいと思う。

でも、それは全てが終わってからにしようよ」


「あっ、そうですね、ごめんなさい」


「いや、セラフィーナが謝ることじゃないよ、俺がいけないんだ、でも、今はこの星を救うことで、精一杯なんだ」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

すいません これからは仕事の都合で、週末更新になります。


週末に数ページ更新していきます。


たまには、、それ以外も更新できたらと思いますが‥‥‥


申し訳ありません

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