第596話 勇者のレゾンデートル(存在意義)5

俺は街の建物の一番、上に数人の人がいるのを見つけた。


じっと俺たちの方を見ている。


まだ魔物?との距離があるため、みんなに戦いは待ってもらって、俺は上空から、人がいる場所に近づいていく。


「えっと、怪しい者じゃありません、俺はオーリス王国の貴族でクリスという者です。どなたか代表の方はいますか?」


俺は上空に滞空しながら話をするけど、時々、魔物?の方を確認している。


代表らしき人が一歩前に出てきて「私が、この場を預かる将軍です。もしかしてあなたが勇者物語に出てくる勇者ですか?」


「え〜と、はい、そうです」いきなり言われたので、躊躇してしまった。


そこで歓声が上がった。


「おい、勇者だってよ」

「助けに来てくれた」

「これで生きながらえることができる」


いや、まだ、助けるとは言っていないんだが。


まぁ、たぶん、そうなるだろうけど‥‥‥


俺は将軍の前に降り立った。


将軍は一歩前に出て、俺に手を差し出した。


「ようこそクリス公爵、いえ、勇者クリスと言った方がいいですか?」


「あっ、はい、どちらでも、両方とも俺の名前なので」


「では勇者クリスで」と言って俺の手を自分でとって握手させた、すごく嬉しそうに。


握手したまま離さない‥‥‥


「あの、そろそろ‥‥‥」


「おお、これは失礼した」とやっと手を離してくれた。


後ろにいた人が前に出てきて「私は、この街で冒険者ギルドの支部長をしています」と言って、この人も握手を求めてきたので、俺は渋々握手した。


「それで勇者どの、もしかして助太刀してくれるんですか?」


「はい、一応、そのつもりで飛んできたんですけど‥‥‥」


「……ぜひ、ぜひ、お願いしたい」と両手を擦り合わせながら懇願してきた。


「???」どうして、そこまでするのか、わからない‥‥‥何が、そうさせるのか?


「それと、俺たち用に食べ物と飲みのもを用意してくれますか? 長期戦になる可能性もありますから。それと休憩できる部屋を用意していただけると助かります」


俺が食事などを要求すると、将軍は近くの兵士に命令して、言われた兵士は走っていった。


将軍は「すぐに用意させます」


冒険者ギルドの支部長が「あの、それで勇者様は、どうやって、これだけ大量の魔物を倒すつもりですか?」


「う~ん、大変、難しい話です、たぶん、上空から見ると後方までびっしり魔物がいますので、どれくらいいるか見当もつきません。

まぁ、20万以上はいるとみた方がいいですね」


「20万……」


「20万以上です」


「あっ、そうですね、失礼しました」と将軍


「こちらの兵の方の人数はどれくらいですか?」


「そうですね、いまも集めている所ですが、たぶん、1000人にも満たないかと…」


「1000人ですか、では、その1000人で、ここの守りを固めてください」


「えっ、攻撃は?」


「攻撃は私たちで請け負いますので、皆さんはうち漏らした魔物をお願いします」


「そ、それでいいんですか?」


「はい」


「しかし20万以上ですよ」


「まぁ、うちのメンバーの女性陣は強いですよ」


「しかしですね、女性の方に頼り切るというのも…」


「ここを守るのも大切なことですよ。俺たちが攻撃しても逃げる奴はいますので、その魔物を街に入れてしまうと大変なことになります、メンツでは済みませんよ」


「!っ、はい、わかりました。勇者様の指示に従います」


う~んここまで勇者の偉大性を感じたことはなかった。


違う国なのに、いくら伯爵の領地の将軍といえど、すなおに俺に従ってくれるのか、それは勇者という称号が俺にあるからだろう。


勇者って、すごい……


将軍が「あの、こちらにどうぞ」と言って俺にイスをすすめてきた。


「あっ、すいませんが、現場を見ておく必要があるので立ったままで、ありがとうございます」


「いえ、気が付きませんでした。さすがですね」


「えっ、何がです」


「いえ、実は私もあなたのファンで、本当に、こんな人物がいるのかと思っておりました。」


「もしかして本を持っているんですか?」


「もちろんです、こちらに…」と言って本を懐から取り出す将軍。


「今、持っているのは最新刊ですが、全巻、揃えておりますよ」


「そ、そうですか」


「しかし、あなたの生い立ちを追っていくと、あなたは現実味がないほど、強い魔法使いですね。しかも剣の使い手でもある」


「それは必要に迫られて可能になったことです」


「ウルフですか?」


「はい」


「本当に、あんな敵がいるんですね」


「間違いなく」


「そ、そうですか? 本の勇者はウルフとの戦いに迫られて徐々に強すぎるほどの魔法力を使っていますが、その通りなのですね」


「はい、でも、今は、俺だけじゃなくメンバーの女性たちも、ああして、飛行魔法を行使していますよ」


「あっ、あれは、あなたがしていることではないんですか?」


「ええ、違います、本に書いてあったように初めのうちは私が魔法を行使してメンバーを飛ばしてしましたが、今ではメンバーは自力で全員が飛行魔法を使うことができますよ」


「そ、そうなのですか?」


「はい」


「それはすごいことです、並大抵の努力ではありませんね」


「はい、その通りです」


「なにかコツがあるのですか?」


「いいえ、本に書いてあることを飽きずにすることです」


「なんと、それだけで…」


「それだけと言いましたが、基本中の基本ですけど、みんなは面白くもないからやらないだけで続かないだけで彼女たちが、どれほど努力してきたか…」


「それだけでもすごいことです」


「俺は今は18歳になったばかりですから、彼女たちと出会って、たった3年です。しかも1年は私は能力を隠していましたから、実際には1年半から2年ですね」


「その能力を隠す必要があったことは本で読んでいます、あなたには前世があり、その前世の方のときに裏切りにあっていると」


「そうです、そしてあまりに強い魔法力を持っていると国に取り込まれますから」


「そうですな、うちでも魔法師の方は所属していますが、あなたの100分の一? いや、一万分の一しか魔法力はもっていません。メンバーの彼女方のように飛行魔法を使えませんから」


「まぁ、普通の魔法使いなら、それくらいが限界でしょうね」


「彼女たちも普通ではないと?」


「ええ、もちろんです。それだけの努力をしてきましたし、たぶん、全員が俺の横に立つことを目標としてしています」


「それは、それはなんとも頼もしい」


「俺たちはオーリス王国と言う、ここの反対側にある国に住んで、俺は盟主として加盟国に所属しています。これもあらかじめ本当は了承を得るべきなんですが、今回は急なことで、加盟国の了承をえずに飛んできました」


「これは大きな借りですね」


「そうなりますが、これほどの大軍を相手にするのは私自身初めてのことですから、どうなるのか?」


「まぁ、肩の力を抜いてください、あなたが来なければ、ここも、国も滅んでいることでしょうから、それが一筋の光が見えた訳ですから、その光が大きく太くなることを願っております」


「将軍、ありがとうございます」






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