第541話 未来への扉4
ネコのリアムと隠された部屋に転移してきて、知らされた事実に落ち込んでばかりはいられない。
「リアム、君は、一体何を知っているの?」
「えっ、私ですか? それはいえません」
「えっ」
「何を知っているか、何が起きるのか全て、ご主人さまが自力で見つけ出していかなければならないんです」
「俺が自力で?」
「そうです、私はお手伝いするだけですから、何から何まで、全てはご主人さま次第なんです」
「俺次第?」
「そうです、ご主人さまの動き方、一つが未来に影響があるんです」
「えっ、ちょっと待って、それじゃ、俺が特異点?」
「そうですよ、ウルフでもないし、他の誰でもありません、ご主人さま自体が特異点ですよ。えっ、知らなかったんですか?」
「いや、なんとなくわかっていたような気がしたけど、まさか俺だけとは‥‥‥」
「ご主人さまほど、歴史に関与できる人がいますか?」
「つまり、全ては俺次第‥だ‥‥と?」
「そうです」
「‥‥‥リアム、君は、魔法を使えるの?」
「はい、もちろんです」
「どんな、魔法を使えるの?」
「私が使える魔法は、クリス様と同じです」
「えっ、俺と同じ?」
「ええ、ご主人さまから魔力をいただいて復活できましたから、ご主人さまと同じ魔法が使えます」
「そうなんだ」
「はい、でもご主人さまの魔法ほど、威力はありませんが‥‥‥」
「じゃ、基礎魔法をして見せて」
「はい、いいですよ」といってリアムは基礎魔法を展開してみせた。
「どうです、ご主人さまの基礎魔法と、ほぼ同じでしょう」
「うん、そうだね」
「私が返信できるのはネコだけですが、ネコの特性もあるし柔軟性もあって、すばしっこいですよ」
「でも、どうしてネコなの?」
「えっ‥‥‥、私にもわかりません」
「そ、そうなんだ」
「ご主人さま、ここにいるのもいいですが、私と外で練習しませんか?」
「えっリアムと練習?」なんだかネコと戯れているようにしか見えないんじゃ?
「よし、外で練習しようか?」
「はい、行きましょう」といって俺が転移しようと手を伸ばしたら、リアムは自分の魔法で転移した。
ネコが転移の魔法まで使えるのか? なんだか、すごいな。
俺はネコに置いていかれた感じになったが、すぐにリアムを追って外へ出てきた。
海岸の高台に立ち海風が吹く場所になるし、広いというよりも広大な土地はさすが王族が使う別邸という感じがする。
俺はリアムと同じ場所に転移してきた。
「いいですか? ご主人さま、私に向かって『来い、リアム』と叫んでください」
俺がリアムに向かって「来い、リアム」というとリアムが、一瞬、動いたかと思えば俺の肩に乗っている感覚がしたと思ったら、ばさっ、と音がしたように聞こえて俺はマントを羽織っていた。
「おおっ、すごい」
「驚いてばかりいないで、次、行きますよ」
「あっ、はい」
「いいですか? 自分に向けてファイヤーボールを放ってください」
「えっ、俺に向けて?」
「そうです」
俺は、言われた通りに自分に向けてファイヤーボールを放つ。
自分に向ける時はファイヤーボールを前に打って、コントロールすれば問題はない。
前に飛んでいくファイヤーボールを曲げてコントロールする。
えっ、それで、どうするんだろう?
「ご自分に、ファイヤーボールを当ててください」
「う、うん、わかった」
自分に当たるようにコントロールして、待つ。
俺は何もしないのに、マントが勝手に動いて体の全面を覆ってくれる。
そこに俺が放ったファイヤーボールが当たる。
「ボンッ」と音がしてファイヤーボールは霧散したが衝撃だけは感じた。
俺はマントを持って焼け焦げなどがないか確認した。
しかし衝撃はあったが、何もない。
「ご主人さまを不測の事態から守るのは、私の役目です」
「それは、今から不測の事態が起きる可能性があるということ?」
「そうです、そんな場合があっても、ご主人さまは私が守ります」
マントから、またネコの姿に戻った。
「私に備えられているのは自己防衛機能です。どんなことでもご主人さまを守るご主人さま防衛機能です」
「俺を守る?」
「もう、これ以上、ご主人さまの行動を遅らせるわけにはいきません」
「えっ、俺の行動を‥‥‥」
「そうです、この星は破滅に向かって進み始めました」
「えっ、なんだって?」
「いいですか、ご主人さま、この星は、破滅に向かって進み出しているんです」
「それは、どうやって破滅するのか、教えてくれないんだよね」
「はい、私が言えることではありません」
「それも、俺の行動にかかっているということだね」
「そうです」
「そのためには、ここにいるのではなく、未来にいく必要がある?」
「いえ、未来に行くよりも、今から変化していくのを、早いうちに止めてください」
「ご主人さま、知っておられますか?」
「うん、なにを?」
「ウルフが復活していることを」
「やっぱり、そうなんだ、なんとなくわかっていたけど、認めたくないけど
「しかも、復活のたびに奴は変わってきています。復活するたびに強くなってきています。今、復活しているウルフは、強力です」
「ウルフが復活して強くなっていると‥‥‥」
「そうです」
「俺に脅威を与えるほどに‥‥‥?」
「そうです」
今まではウルフは、俺よりも弱く、相手になるほどではなかった。
それが脅威になり得る存在になったと‥‥‥
「ウルフを魂ごと消滅させる方法はあるの?」
「ええ、ありますが、それもご主人さまが到達しなければ使えません」
「俺が到達?」
「はい、禁忌の魔法があります。しかし、これ以上はご主人さまの成長に関係がありますので、いえないんです」
「リアムは秘密が多いね」
「申し訳ございませんが‥‥‥」とネコのリアムが頭を下げた。
「まぁ、しょうがないね」
「はい、申し訳ありません。もし、ご主人さまがウルフに敗れることがあれば、この星は、もう終わりです。
その終焉に現れるのが、救世主です。
それが、ご主人さまです」
「やっぱり、そうなるんだね」
なんとなくだけど、救世主という称号が現れた時に、わかっていた。
だから、俺を余計に臆病にしていたこと。
心の底で、どうして俺が?‥‥‥と思っていたことだ。
もう、あとがないんだね‥‥‥俺たちの未来が‥‥
それも俺次第なんて‥‥
俺がまだまだ成長の余地があり、もっと努力することでウルフの魂ごと消滅させることができる、とわかっただけでもいいか。
こんなに努力しているのに、まだ、更なる努力を俺に強いるのか?
リアムが、俺を見透かしたようにじっと見ている。
「ご主人さま、アリシア様に、お話になってはいかがですか?」
「えっ、アリシアに、でも‥‥‥」
「いいえ、アリシ様は、ご主人さまを支えてくれる女性です。1人で抱え込むよりも世界に関係することですから、アリシア様に話すべきです。そして頼るべきです」
「あれっ、お姉ちゃんじゃないんだね」
「それは、ご主人さまのことを知る前です。今のご主人さまは見ていられません。1人で世界を救おうとしないで、アリシア様の世界を救うとお考えください」
「うん、そうだったね、なんだか、元気が出たよ、ありがとう、リアム」
「いいえ、私こそ、でしゃばりました。でも、ご主人さまがいないとアリシア様との未来もないんですよ」
「うん、その通りだった」
「では‥‥‥」
「うん、俺がやる」
「ご主人さま‥‥‥はい、がんばりましょう」
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