第513話 1000年前の世界31

俺とウルフが草原で戦いをしようとしている。


別にウルフと話したわけじゃないけどウルフの奴が、ここで待っている気配がしたからジャネットも感じとったんだ。


もちろん俺もわかっていたから、あまり話さずにジャネットに頼んで瞬間転移してきた。


「お前の馬鹿げた聖剣を見て、あの時は逃げたが、あんなことがしょっちゅうできるわけがねぇ」


「いや、できるさ、俺って勇者だし。

お前のドス黒い魔力と俺の聖なる光のどちらが勝つか?」


「俺に決まっているさ」


「ところでお前、今から700年後の時代に干渉しただろう?」


「へっ、知らないぜ」


「嘘を言うなよ、次元の扉がこじ開けたままになっていたぞ」


「あっ、あそこか。あの時は楽しかっただろう?

ザカリア帝国が戦争を起こしてお前が住んでいた国を侵略したよな、お前の前世のアルベルトだったか、死にかけても女のところに転移しやがって」


「やはり、あの時代も干渉したのか?」


「ああ、してやったぜ。お前の死ぬところを見るのが楽しみでな」


「じゃ、ザカリア帝国が攻め込んできたのも、お前の仕業か?」


「それが、どうしたんだよ。全ては、お前の系列をなくすためさ」


「俺の系列?」


「そうさ、お前につながるものを消滅させれば、お前は生まれない」


「それだけのために、これほどのことをしたのか?」


「ああ、そうさ、お前ほど脅威がある奴はいないからな。お前さえ、いなくなれば、どれほど俺のやりたい放題にできるか」


「しかし俺が、お前の前に立ちふさがっていると言う事は全て失敗していると言うことだな」


「‥‥‥」


「時間の流れに干渉しても無駄なことだ」


「いや、まだ方法はある」


「今のお前をここで倒せばどうなると思う?」


変なことを言うな、どうにもならないんじゃないのか?


「それがあるのさ、少なくとも、ある人物にとってはお前はなくてはならない駒だからな」


「ある人物とは?」


「おっと、それは言えないね。さぁ、お喋りの時間は終わったぜ」


「そうか、じゃ遠慮なく」


と言うと俺は異空間から聖剣を出した。


ウルフの奴も異空間から、形が変な剣を出した。


「ウルフよ、それは魔剣か?」


「ああ、そうだ、これでお前を倒すことができる。俺の魔剣の威力を味わってみろよ。痺れるぜ」


俺はウルフが持っている魔剣を鑑定魔法で鑑定してみた。


作ったのはネルソンと書いてあって、魔剣の名前がアスリープ(痺れて眠ってしまう)というらしい、ということはウルフが先ほど、痺れるぜって言ったことが本当だということになる。


たぶん、あの剣と剣を合わせると痺れる可能性がある。


これは、やばい剣を持ち出した。


ウルフの剣と合わせることができない。


俺の聖剣でも防ぎようがない。ビリビリ痺れる剣なんて、そんなの反則だろう?


あっ、でも雷撃と同じか?


雷撃の方がはるかに強いんじゃないか?


じゃ、俺は聖剣に電撃の魔法を纏わせて使って見ることにした。


電撃も当たれば、痺れるところじゃなく燃えてしまうのだから、あとは威力の調節をしようかな。


もちろん威力は聖剣が耐えられるだけの強さ。


せっかくダンジョンでもらった聖剣だから消滅させたくないし。


聖剣の性能がイマイチ、わかっていないから、試すしかない今でも鑑定魔法を使うとわかるのかな?


自分のことでも鑑定したことないし、そういえば以前、指輪をもらってステータスを確認することができたけど、鑑定魔法でステータスを出さなくてもできるんじゃないか?


それは後でやってみよう。


今は目の前のウルフとの戦いだ。


奴の魔剣が体を痺れさせる魔剣なら、俺のも聖剣に電撃を纏わせて戦うことにした。


そういえば、奴の魔剣は剣を合わせようとすると、すり抜けていくようなことも可能だったな。


ウルフの奴が魔剣を構えて突進態勢をとる。


俺もウルフが、いつきてもいいように迎え撃つつもり。


ゴルフは突進体制をとったけどなかなかこない。


様子を伺っている、


じゃ、俺から切り込もう‥‥‥


俺は聖剣に電撃魔法を纏わせて、ウルフに向かってまっすぐ突進していく。


俺の突進を見たウルフは、右にステップを踏むという動作ではなく、スライドするような動作をとり、横移動していく、なんだか変な動きだな。


影を残しながら横にスライドしていくような動きをしている。


普通だったらステップで良いようなところを影を残しながら横移動すると言うのは、どうもおかしい。


なんだろう? 新しい技なのか?


なんか変だ。


何かを隠しているのか?


一撃目は逃げられたが、振り返りざま、すぐに反転してウルフの背後から、一撃加えようとする。


ウルフも振り返りざま、さらにスライドするような動きで横に逃げる。


今回も同じように影を残しながらスライドしている。


もしかして分身体か?


俺に悟られないように動いているのか?


ということは陽動作戦の可能性ありだ。


戦ってる最中にもかかわらずジャネットに念話で連絡をとる。


『ジャネット、異常ない?』


「? はい、こちらは大丈夫ですが、私もウルフとの戦いを見ていましたけどなんか変ですね」


「うん、そうなんだ、ジャネットも、変だと思うんだ」


「はい、なんだか現実世界にはいないような動きをしています」


「じゃ、そちらは異常ないんだね?」


「はい、大丈夫です」


ということは、事件が起きているのは元の世界なのか?


俺は、まだワームホールからしか念話ができないけど、出力を上げてイメージすれば、できるような気がする。


ウルフの奴が、いまだに一度も突っ込んでこないので、俺からウルフの横に転移して刀を横殴りに切り込むとウルフの体は千切れて霧散した。


たぶん、初めは本物がいたと思うが、いつの間にかすり替わっていたみたいだ。


俺の前で、そんな芸当ができるなんて思ってもみなかった。


俺は焦りを感じて、ジャネットの元に2体の分身体を残した。


そしてワームホールを魔法で開いてみると、目の前にできたので、その穴を通って1000年後の、元いた世界に戻ってきた。


元いた世界に戻るとイーノック王国で仲間たちが待っていた。


「あっ、ご主人さま」とアデル

「お帰りなさい」とアレクなどと言われたが、それどころじゃないよ。


目の前には魔族とウルフがいてメンバーと戦いを繰り広げている。


魔族は、たいしたことがないがウルフの奴は違う。


念話で『みんなウルフの奴は俺に任せて』というと『了解』とパトリシアとロゼッタから返事が返ってきた。


どうも、俺の能力は、普段、使って試してもないのに、使おうとすると使えるみたいだ。


ワームホールが使えたように。


今度は、一瞬で現世へ戻ることができた。


「おい、ウルフ、卑怯な手を使ったな?」


「騙される方がバカなんだよ」


ウルフの奴は魔剣を手にしている。今、俺たちのいるのは、お城の広い庭だ。


横では、全員が魔族と戦っている。


魔族の数は50人以上だ。


それに対して俺たちは、ジャネットとアリシアとコリンが欠けている。


パトリシア、ロゼッタ、アレク、アデル、アイリス、エイミー、ソフィア、イザベラ、セラフィーナ、シャーロットと俺しかいない。


1人で5人を相手にしなければいけない。


今でも魔族が、結構な数が地面に倒れて動いていないから、全部を合わせると100を超えている可能性もある。


俺は全員に体力回復魔法をかけた。


『あっ、ご主人さま、ありがとうございます』とパトリシアから念話がきた。


「1人が魔族5人を相手だよ、普段から基礎魔法で訓練しているから、問題ないはずだけど、油断は大敵だよ」と鼓舞した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

お読みくださりありがとうございます。


ブックマーク、ハートマーク、星マーク、評価も、感想も、ほんとうにありがとうございます。


本当に多くの方の支援には心より感謝しております。

そして、何よりも小説を書くための励みになっています。


誤字脱字がありましたらお知らせください、すぐに訂正を行っています。


また意味不明な文章があることもありますが、なにぶん素人が書いている文章です。お知らせくだされば、訂正しています。


この物語は異世界の物語です、現実世界とは違いますので、その点はご容赦ください。

あくまでもファンタジー小説です。

前世の悪い記憶を持つ小心者の主人公が成長していく物語です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る