第503話 1000年後の世界21

今回の事件の実行犯はジュリアス伯爵とロバート男爵、そしてウルフだとわかった。


あとは、どう動けば、この件を解決することができるか、だな。


まずは王に相談かな?


俺たちは全員で空間から出てきて、王に借りた部屋から、王が仕事中で他には誰もいないことを確認して直接、王のいる部屋に転移する。


王は、俺たちが現れたことで、一瞬驚きましたが、すぐに話を聞いてくれた。


「もう少し、穏やかに現れて欲しいものだが」と王


「王よ、緊急事態ですのでご容赦ください」となんとなく言ってみた。


「それで、どうしたのかね?、もしかして一連の犯人がわかったか?」


「はい、わかりました」


「それは誰かね?」


「トップはジュリアス伯爵、そしてロバート男爵ですね。この2人が王を毒殺しようとした主犯ですね」


「やはり、そうか」


「でも、今は証拠がありません。証拠がなければ、捕まえることもできません」


「うむ、わかっておる」


「それと、もう一つですが、この2人とつながっている人がいるみたいです」


「それは、誰なのか?」


「まだ確定ではありませんが、ダイアナというのは、2番目でしたよね」


「うむ、そうじゃが、あの優しそうな子が、わしを暗殺しようとしたのか?」


「いや、まだです。まだ王を殺そうとしたのがダイアナとは限っていないんです」


「どういう意味なのか?」


「2人を殺してダイアナを王に据えようとしているみたいなんです」


「それにどこまでダイアナが関係しているのかということがわかっていません」


「そんなことダイアナに聞いてみればよかろう」


「いえ、ダメです。知らないと言えるし、実際に、その可能性があります」


「つまり、どういうことだ?」


「それは、エイプリルを暗殺して、王であるあなたを殺せば問題なく王座はダイアナのものです」


「ダイアナを援護して即位させてしまえば、後ろから操るのは簡単です」


「まぁ、そうなるだろうな、即位するときに後ろ盾になれば、かなりの力を得る事になる」


たぶん、ダイアナを即位させたあと、とって変わろうと言うことだと思う。だから、この件に関してはウルフは手を出さないのか。


ウルフが手を出せば、何もダイアナを即位させることもなく、王でいいわけだし。その理由は憑依という形で変われるから。


「現在でわかっている事は以上です。でも、まだ証拠が足りません」


「そうだな、証拠がなければ、伯爵位を持っている貴族を捕らえることはできん」


「このまま、偵察を続けますか?」


「そうだな、それしかなさそうだ、よろしく頼む」と言って王は俺とヒルダをみる。


「じゃ、また報告に来ます」と言って転移して部屋に戻ってきた。



俺たちは王に報告を済ませて空間に戻ってきたけど、さぁ、どうしたものか?


ヒルダの暗殺には証拠はない、ヒルダの村で捕らえた奴も証拠にはならない。


1つの国の貴族を犯罪者として捕らえる事は大変難しいことだ。



その日の夕方にジュリアス伯爵は、また自分の屋敷の地下二階で実験をしている。


昨日まではウルフが、ここでブラックボックスを作ったり黒い玉を作ってドス黒い魔力を込めていた。


どこかに作ったばっかりのブラックボックスが置いてないか探したけど忘れているわけはない。


ジュリアス伯爵は、すぐに収納庫から麻薬を出して実験道具を並べていく。


あっ、そうだ、この麻薬を持っていることでも捕縛対象にならないかな?


でも、もっと重罪を犯している証拠の方がいいな、麻薬でも重犯罪に当たるのか、知らないけど。


人を暗殺しようとしたんだから自分も貴族の地位を奪われて、領地も奪われてと言う感じが理想だよな。


しかし、ウルフの奴が、この世界にきて何を企んでいるのか?


単純にブラックボックスとブラックボールを作るためにきたんじゃないと思う。


ジュリアス伯爵は実験を開始した。


水をフラスコに入れて沸騰させたり、何かの液を入れたり、しているけど、俺には意味がわからない。


ジュリアス伯爵が「もうすぐだ」と呟いた。その間にジュリアス伯爵はノートを確認している。


あのノートを奪うことができれば、証拠になり得るかな?


ノートを見ながら「成功の証拠として初めは赤い色から、しばらくすると無色透明に変化するか‥‥‥」


伯爵の目の前にある瓶は赤い色をしている。5分くらい経つと無色透明になってしまった。


「やった、完成だ」と喜ぶ伯爵。


これで明日にでもダイアナのところに行って、飲ませればいいだろう」と言いながら片付けもせず部屋から出て行った伯爵。


俺は、空間から索敵魔法で監視していたが、実験室に行くのはウルフと鉢合わせする可能性を考えて、やめておいた。


伯爵が去った実験室には、ノートが置きっぱなしになっている。


俺は、そのノートを手元に引き寄せた。


テーブルに座っている俺の周りには、みんな、揃っている。


「このノートを見ながら伯爵は人を意のままに動かす薬を作っていた。主な成分は麻薬だけど‥‥‥」


アリシアが「人を意のままに動かすなんて、本当にできるの?」


「まぁ、喋らせなければ問題ないし、あとは横にいて指示するだけじゃないかな? 麻薬患者を見てきただろう? 無気力になって座っているだけだよ」


「あっ、そうだったわね」


ジャネット「無気力で立っているだけで考えることもできなくなるんて」


「そうだね、そうなる前に、解決していかないと。

今まで麻薬事件があったけど、全て、この薬を作るための準備だとしたら納得だね。

誘拐して実験に使うために人をさらったと考えると、誘拐をいいことにブラッドフォード大公国の王は悪いことをしていたわけだし」


「クリスは、今まで私たちが直面して解決した事件を全てウルフが関係したと思っているの?」


「うん、たぶんね、だって、ウルフが今、やっていることを考えると、全て繋がるんだよ」


「まずは誘拐事件だろ? そして次に麻薬事件、そしてブラックボックスの魔物大量発生事件だね。

でも俺はそれがウルフの目標だとは考えていないよ

やつはもっと背後で何かをしていると思っている。

もっと恐ろしいことを」


「恐ろしいこと?」


「そうだね、何かはわからないけど恐ろしいこと」


「さあて、ジュリアス伯爵がダイアナに薬を飲ませたところを捕まえようか」


「クリス、薬を飲ませたあとじゃなくて薬を飲ませる前だよ」


「あっ、そうか、訂正。でも、いつくるか、わからないから、見張りが必要だね」


「そうですね、交代でしましょうか?」


「うん、そうだね」


「あっ、少し私も練習のため、誰かとペアで混ぜてもらえない?」とアリシア


「じゃ、アリシアはジャネットとペアを組む?」


「そうですね、それがいいですね」とジャネット


「ジャネット、よろしくお願いします」とアリシア


「はい、わかりました」


「じゃ、俺は単独で見張りをするよ」


アリシア「ごめんね、いつも負担になって」


「えっ、違うよ、俺がしていることだから、大丈夫だよ」


ジャネットが「私も、あの時に寝坊して申し訳ありません、ご主人さま」


「ううん、いいよ、たまには、ゆっくりすることも必要だよ」


「そう言っていただけるとありがたいです」


俺たちが作戦行動する時には、みんなにかなりの負担をしてもらっている。


そして、ここは俺たちが本来ならいるべき場所じゃないから、どこにでも負担が起きることもあり得る。


この時代に俺たちが来るべきことは必然的だったのかもしれないが、俺たちが時代の異物になっていなければいいが。


たぶん、この時代に俺たち4人が来ることは、決まっていたのかもしれないけど、それはわからないわけだから‥‥‥


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