第491話 1000年前の世界9
ヒルダを襲った奴の記憶を遡りながら誰が後ろで糸を引いているか確認してみる。
まぁ、予想では残っている王族あたりか、それに付随する貴族だと思われる。
ヒルダは王族のの兄弟姉妹の中でも一番、末っ子になるので、上に残っている兄弟が濃厚かな?
兄弟姉妹のうち残っているのはヒルダを入れて5人だけ。10人の子供のうち5人が死んでいると聞いている。
聞いていないけどヒルダは、たぶん側室の子供だろう。
だから継承とは無縁で、こんな国に追いやられたけど、いざ、王子や姫が死亡すると注目を浴びたと言うことだな。
それにしても何人の妃がいるのか、王族は、もしものために子供を多く作るということを聞いているけど、知っている王族は、そんなことはない。
王妃様は1人の人ばかりだ。
暗殺者の過去を振りかっていくと、ここに来る前に酒場に寄ったり野宿をしたり街で宿をとったりして、ここまで来ている。
もっと過去を見る必要がある。俺は暗殺者の過去の記憶をさらに辿ってみる。
さらに記憶をたどると、ある居酒屋が出てきた。
こいつらは誰かを待っているような感じで酒を飲んじゃいるが飲み方が少ししか飲んでいない。
しばらくすると暗殺者の記憶の断片は、ある人物に行き当たる。
ちょうど飲んでいるときに、奴が入ってきた。
こいつは立って迎えようとしたが、ボスが手で制した。
俺は、2人が待っていた男の顔の特徴を掴むことにした。
特徴は顎髭があるけど、髭の形の特徴を覚える。
両端の髭は変な風に上がっている。
目がギョロ目が特徴だな。
でも、まだ、こいつが依頼者だとは決まっていない。
入ってきた髭の男は、2人が待つテーブルには座らなかった。
髭の男は、カウンターに座り酒を注文して飲んでいる。
どれくらい立っただろうか? ボスが席を移動してカウンターに座る。
髭の男の横ではない。一つ席が空いている。
しかし髭の男は袋を誰にも気づかれずに、相手にカウンターで滑らせて渡した
滑りが良かったので、たぶん重たいものが入っているみたい。
金か?
ボスは何食わぬ顔で滑らせた袋を受け取り、懐に入れる。
そして、すぐにカウンターを離れてテーブルに戻った。
また、2人は酒を飲み始める。
カウンターに座った男は注文した酒を飲み干して出ていった。
残った2人は袋を見ない。
袋を見たのは、アジトらしき部屋の中だった。
まずボスが袋を見て紙が入っている、その紙には、「姫を殺せか?」と呟いて、紙の内容が見たい自分に渡した。
「対象者の姫は、随分、遠くにいるんですね」と自白している奴。
「ああ、訳あって遠くで育てられたそうだ」
「へー」
「おい、仲間を集めろ」
「どれくらいの人数が必要ですか?」
「そうだな、10人前後だな」
「わかりました、そして出発は?」
「準備が整い次第だ」
「わかりました」と言って自白している奴は、酒場を出て行って、次の記憶になっている。
肝心なところは見たので、俺は魔法を解いた。
「はっ、おい何をした」
「別に何もしてないぞ、夢でも見たんじゃないのか?」
「嘘だ、俺は何もしゃべらないぞ」
俺は村長の仲間に、こいつを任せた。
男は連れて行かれた。
残ったのは村長と、ジャネットと俺、ヒルダは気絶したまま。
今は起こさないほうが良いと思う。
どうするか? 村長に尋問で記憶を遡った奴のことを聞いてみる。
「村長、ちょっと聞きたいけど、髭に特徴があって、髭の両端が、変な風に上がっている人って知っている?」
「申し訳ない、ワシ達は、ヒルダ姫の護衛について、もう長くなる。そして、ここでの暮らしも長く、王都には戻っていないし、姫様の安全のため連絡も取り合っていない」
「そうですか」
これは、王都までいく必要があるな。
暗殺者は、ここまで馬で3日かかってきている。
だから、まだ暗殺者が捕まったと言うことは知られていない。
明日でも良いかと思うけど、今、すぐに動いた方がいいと思えたので、アリシアとコリン、ヒルダを起こして立つことにした。
「ジャネット、3人を起こしてきて」と頼むと「はい」と行って立ち去った。
村長「こんな夜更けに立つのか?」
「ええ、今の方がいいと思います、まだ暗殺者が捕まったと言う情報が届いていないうちに」
「ヒルダ様を連れて行くのか?」
「ええ、そうしようと思っています」
「お主なら、大丈夫と思うげ、くれぐれも頼むぞ」
「ええ、ヒルダには無茶させませんよ」
そこにコリンが起きてきた。
「クリス、出発するって?」
「うん、早いうちに立つよ」
「うん、わかった、さっき寝たと思ったんだけど、もう朝じゃないよね」
「うん、違うよ、でも、立つ必要があるんだ」
「うん、わかった」
次にヒルダが起きてきた。
「さっきの奴らは、どうしたの?」と言いながらおでこを抑えている。
「さっきの奴らは、ヒルダを狙った暗殺者だ」とはっきり言った。
「えっ、僕を?」
「そう、ヒルダを狙った暗殺者だった」
「どうして僕が狙われる?」
村長が「それはヒルダ様が、この国の王族の第9番目のお子様だからです」
「ヒルダ、薄々気がついていたんじゃないの?」
「‥‥‥うん、まぁ、少しね、でも現実的なことじゃないから」
村長が「ヒルダ様、ヒルダ様は、王族の継承権を持つ方になったのです」
「継承権?それって王になれるってこと?」
「はい、そうです。ヒルダ姫はこの国、ガルシア帝国の王位継承権の4番目にございます。
噂で王位継承権の第一番目のお子様から、5番目のお子様まではお亡くなりにございます。
「待って、そんなに多くが早死にしたの?」
「いえ、確かめたわけではござらんが暗殺されたとの噂で聞いております」
「暗殺?」
「ヒルダ、君が姫だってことには、驚かないんだね」と聞いてみた。
「ええ、それはお母様が亡くなる前に聞いていました」
母親はヒルダに死ぬ前に話したのか。
「クリス殿が、ここに来ているということは、チャンスかもしれません」と村長
「チャンス?」
村長「ええ、そうです。このままでは、どこまで行っても狙われることでしょう。この機会に決着をつけるというのも良いかもしれません」
「‥‥‥」
「クリス殿にお任せして申し訳ありませんが、姫を、どうかお頼みしたいんですが引き受けてくれますか?」
「まぁ乗り掛かった船ですからしょうがないですね」
「おお、そう言っていただけると安心します」
そこに酔っぱらいアリシアが起きてきた。ジャネットが後からついてきている。
「う〜」と気分が悪そう
アリシアは顔色が悪いので、俺が聖属性魔法で状態を良くした。
「あっ、治った」とアリシア
「アリシア、お酒はほどほどにね」
「うん、ごめん、でも一杯しか飲んでいないけど」
「一杯でもお酒は、良くないよ、緊急事態に俺たちは対処しているんだから」
「ごめ〜ん、反省しています」とアリシア
村長「話を聞いているとクリス殿は、何をしておられるのか?」
「えっ、俺ですか? 話のは難しいですね」
「でも姫様を任せるには、できたら‥‥‥」というので。仕方なく話す
「俺はとある国の貴族です」
「えっ、嫡男とかじゃなくて?」とヒルダ
「そうだよ、俺自身が公爵だよ」
「えっ、公爵様だったのですか?」と村長
「ええ、そうです」と俺
村長「これは、これは、大変失礼いたしました、公爵様」
「あっ、じゃ、私も伯爵だったよね」とアリシア
一度も、自分で言ったことがないアリシアが発言した。
「えっ、あなたも貴族で、しかも伯爵様ですか?」とヒルダ
村長「じゃ、あなた達も‥‥‥」とジャネットとコリンに聞いてくる。
ジャネット「ええ、そうです。私たちは1つの国じゃなくて複数の国にまたがる貴族位を持っていますけどすべて伯爵位です」
「うん、私も同じ、この本、あげる」とコリンが自分で書いている本を差し出す。
俺は、それは、良くないんじゃないかと思ったけど、今更取り上げるのもできない。
コリンが「これは空想に物語です」と言ったので見逃した。
そして背表紙を見ると「勇者物語?」
村長は受け取った本をパラパラとみている。
村長の手が止まった。俺と本を交互にみている。
あっ、これはやばいんじゃないのか?
村長「なるほど、クリス殿を主人公に描いた空想物語ですな。あとで読まさせてもらいます」と言って本を閉じた。
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