第481話 イーノック王国をかけた戦い3

俺は後ろに隠蔽魔法で隠れている魔族を倒すことにした。


隠れている魔族は5人だ。その5人の中でも強い奴が3人もいる。


俺を倒すために、結構な精鋭をそろえてきたんだろう。


でも、姿を消して隠蔽して隠れているから、建物にも隠れないで、ただ立っているだけ。隠蔽魔法によっぽど自信があるみたいだけど、俺から見れば隠れていることにならない。


俺はウルフが集中力を無くしたすきに一瞬で魔族の前に転移してきた。


魔族は俺が転移したにも関わらず、一瞬はたじろいだが、構えることもせずに立っている。


よっぽど隠蔽魔法に自信があるのか、強いからなのか、馬鹿なのか?


俺は右手に持つ青く光る聖剣を構えて強い魔族から倒していく。


強い魔族の1人は、なすすべもなく俺の聖剣に倒された。


1人が倒されていくときに他の魔族は剣を構えるが、もう、遅い、俺の聖剣はもう1人の魔族をターゲットにしているから、その魔族は、真っ二つに倒された。


あとは3人。


2人が倒された時に、ウルフの奴が魔族の前に転移してきた。


俺は、これも予想済み、なぜなら簡単、未来予知の魔法を展開しているから。


戦闘において初めて未来予知の魔法を使っている。


俺の未来予知能力は正確に次の行動がわかる。だからウルフが転移してくることも正確にわかっている。


でも、最近はあまり使うことがなかったから、まだ数秒先までわかるけど、やはり未来は変化している。


先の未来は変化しながら、数秒先なら見ることができる。


やはり未来というよりも、少し先なら変化している。


ウルフが目の前に転移してきて俺に剣で切り掛かる。剣を右斜め上段に構えて、一気に俺に向けて振り下ろしてくる。


ウルフの上段からの切りに対して俺は瞬間転移して奴の後ろに転移したのでウルフのおろした剣は空をきる。


ウルフは俺が転移するとは思っていなかったみたいでバランスを崩してツンのめった。


ウルフは振り返って「キサマ‥‥‥」と頭にきたらしい。


魔族の3人は魔法を展開している。1人はファイヤーボールと、もう1人はアイススピアを、もう1人の魔族は剣を構えている。


俺は3人に対して、威圧を発動する。これも実戦投入は初めて。


勇者としての威圧を発動すると、自分でも驚くくらい圧力というか魔力の圧が3人に飛んでいき2人が失神する。


へーすごいな、初めて実戦で投入したがメンバーで試さなくて正解だな。


試したら大変なことになっていた、もちろん一番はイザベラからの突き上げだろうな。


失神した2人の魔族は置いといて、強い2人が残っている。


あとはウルフと魔族の強い奴の2人だ。


さぁ、ここからが勝負だな。



俺とウルフと魔族は、地面に降りて戦おうとしている。


ウルフと魔族は剣を持っているけど、両方とも魔法も使えるので、俺は右手には青く光る聖剣と左手には赤く光る次元超越剣を持っている。


二刀流なんか練習もしたことはないけど、2人に対するなら必要だと考えている。


奴らは2人とも瞬間転移能力を持っているので、逃げられないように結界魔法を50メーター範囲で施した。


もうこれでウルフと魔族は瞬間転移で逃げることはできない。


「もう、これで転移して逃げることはできないぞ」と俺


「‥‥‥」

「へっ、無駄なことを、てめえを倒して解除すればいい話だろ」と魔族


「そううまくいくかな?」


急にウルフが突進してきて、俺の剣と剣が交差する。


「キンッ」と大きな音がして火花が飛び散る。


ウルフが接近戦を嫌って、剣を押し返す。


ウルフと離れたら、今度は魔族の奴が襲いかかってくる。


剣を横殴りで振り翳して俺を狙ってくる。


俺は後方へステップを踏んで、剣が届かない位置に移動する。


魔族の奴の剣は空を斬るかた思えば、すぐに反転して俺を襲ってくる。


俺は魔族の剣を赤く光を発する次元超越剣で合わせる。


「ガキンッ」と剣と剣が合わさり魔族が目から赤い色の光線を放つ。


俺は寸前で赤い光線を交わしたけど、そんなこともできるのか?


驚いた。


あっ、もしかして俺もできるのか?


そんなことを一瞬、考えているとウルフの奴が追撃に入って俺を襲ってくる。


片手で剣を持って切りかかってくるけど、もう片方の手で何かしている。


俺は、それに警戒しながらウルフの剣をやり過ごす。


ウルフが片方の手でしていたことは、何か丸い穴を空中に作った。丸い穴は見えた範囲では中は暗い。


なんだ、あれは‥‥‥?


その穴が広がっていき、ウルフが中に入って魔族の奴もあとを続いた。


俺は結界魔法を張って逃げられないようにしていたけど、それは他の場所に行かないようにだ。


でもウルフが作った穴は、場所を転移するものじゃない。

もっと違う感じに見えるので、鑑定魔法を使って調べてみた。


出た結果は、信じられないものだった。

それは次元の穴だ。


その穴に逃げ込もうとする2人を追って、俺も次元の穴に入り込み、2人を追いかける。


次元の穴は暗く先も暗いため何も見えない、先に穴に入ったウルフたち、2人の姿も見えない。


でも、ところどころに光が見えるが、検定魔法を使ってみると答えが出た。

その答えは次元の歪み。


あちらこちらで次元の歪みがあって光が漏れている。


俺のいた時代ではないみたい。


次元の歪みに近寄ってみて、手を触れないようにして中を覗いてみる。


そうすると、そこには人たちが下の方で戦っている光景が見れた‥‥‥


俺の時代では、大規模な戦争は起きていなかった。


ということは、違う時代? 過去か未来か? それとも全く違う異世界なのか?


しかし普通に考えたら、これほどの多くの歪みがあることが正常なのか疑いたくなるような光景だ。


なるほど、これが空間と次元の違いなのか? それとも全くの別物?


また、近くに違う次元の歪みがあったので、その中も覗いてみると、何かがあった形跡はあるけど、瓦礫も残っていないくらいキレイになっている更地があるだけ‥‥‥なんだここは?


建物があったところを何かが滅ぼして更地にしたような感じになっている。


そして次の次元の歪みを見てみると懐かしく思える光景が広がっていた。それは俺の前世の時にライラと過ごしたお城だった。


俺は懐かしさから、しばらくお城を見ていたが、疑問に思った。どうして、ここに俺の時代だと思われる次元の穴が空いているのか?


この穴は、もしかして強引に誰かが開けた穴なのか‥‥?


次元の歪みがないところに強引に開けてしまうと、閉じないで残っているのか?


ということは、ライラとの時間を奪ったのは誰かが関係しているのか?


俺は身震いがした。両方の腕を体に回しても震えが止まることはない。


もしかしたら、まだ間に合うかもしれない、この穴を通れば戦争が起きる前に、俺が殺される前に戻れるかもしれない。


ライラも元気で生きているかもしれない‥‥‥


もう一度、ライラと同じ時代を生きていけるかもしれない。


「‥‥‥ライラ」


俺は悲しくて涙が頬を伝わって落ちてきた。


「いや、今は俺はクリスだ、アリシアの元に帰らなきゃ‥‥‥」


俺は前世の俺がいた時代の穴から離れながら、もう一度だけ振り返った。


俺の体は漂いながら、後ろ髪を引かれる思いで心が張り裂けそうだった。


「もう、あの時代には戻れないんだ‥‥‥‥‥‥ライラは俺が死んでから、どうしただろう?」


それだけが俺の心残りだ。


俺は次元の狭間を漂いながら、涙が流れていく、俺がここにいたと言う形跡を涙で残しながら‥‥‥

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