第477話 アレク視点

ソフィアと瞬間転移してダイラス連邦に来たけど、私の同族の匂いはしている。


トラの匂いだ、それも正常じゃない状態の匂いがしている。


黄色いトラと白いトラと黒い大きなトラが一頭いる。こいつかなり強いな。


「でも、私の方が数倍、強い」と声に出した。


私たち神獣も人と比べたら、比較にならないほど強い魔法を持っている。


だから人型にもなれるわけだけど。


でも、ご主人さまに召喚された時から変わり始めた。


今まで何千年もわからないくらい生きてきたけど、こんな人は初めてだった。


第一に私たち神獣よりも魔力が上だなんて、信じられないよ、私たちは文字のことく神が作った獣だよ。


神が作ったんだよ、それを上回るなんて本当に人間じゃないと始めは思ったよ。


この星を管理する名目で私たちは神に作られた。


召喚魔術で私たちはご主人さまの前に現れたけど、その時には、勇者の称号しかなかったんじゃないかな?


いつの間にか救世主の称号がついてしまったけど、普通は、1人の人に複数の称号なんてつかないよ。


私ちが以前、数百年前に出会った勇者は、男性で、立派な志を持っていた人だった。


その後にも数人の勇者は現れたけど、全然、ダメだった。魔法力は弱い勇者だったり、女たらし勇者だったり、お金に汚い人もいたし、酒浸りな勇者だったり。


数百年ぶりに召喚されたから、どんな奴か確認したのが、それが今のご主人さま。


ちょっと気が弱いところがあるけど、私は、今のご主人さま、大好き。


ご主人さまが戦闘モードに入ったら、私たち全員が束になっても勝てない。


ご主人さまには理想がある、戦争がない世の中にすること、それに努力しているから、女性にはちょっと奥手になっている。


幼なじみのアリシアにも手を出さないのは、今はそういう時じゃないと思っているのかも。


何よりもウルフと魔族を、どうにかしなければ幸せは訪れないと考えているみたい。


でもウルフの奴も、どうしてご主人さまの邪魔ばかりするんだろう。


昔、ウルフじゃなくて、猪だった時に、話したことがあるんだけど優しい人だった。


それが担当するのが殺戮ということだから、狂ってしまったのかな。


神レイチェル様から指令があった時は、その国に赴いて国を滅ぼすことをしている。


これはご主人さまも知らないことだけど、以前、ウルフじゃなくて猪の神獣だった時に、戦争ばかりしている国を滅ぼしている。その国はガルシア帝国っていう名前だった。


軍事国家だったガルシア帝国は隣の国のスタンリー王国を攻め落として、なおも国を広げようとしてルーファス王国を攻め滅ぼした。


そのことに神レイチェル様の逆鱗に触れてしまった。


3国を戦争で攻め落としたガルシア帝国は、さらに戦果を広げようとした。


戦争でスタンリー王国とルーファス王国を併合したガルシア帝国は、調子に乗って神レイチェルに歯向かった。


でも神レイチェル様から私たち神獣に命令が降った。


でも私たちは交渉役だから、ガルシア帝国王にあったり交渉をしたんだけど、聞く耳持つことはなかった。


神レイチェル様の指示もあり、全てを滅ぼすことに決定してしまった。


その時に殺戮のかぎりを尽くしたのが、その時は猪だった。


猪は、破壊の限かぎりを尽くして、もう無茶苦茶に暴れ回った。


私たちが見ていても、体が震え上がった程の恐怖を覚えた。


その時から猪と連絡はしなくなった。


噂で聞いたけどガルシア帝国を滅ぼした猪は、知り合った女性と家庭を持ったと聞いている。


私たちは、それを聞いて安堵したけど、事件が起きた。


誰かが猪の家庭に侵入して奥さんと子供を殺した、と。


詳しいことは知らないけど、よっぽど愛していたんだと思うんだけど悲観してしまって活火山に身を投じた。


私たち神獣が、唯一死ぬことができるのは自分から自殺した時。それもマグマに焼かれること。


普通なら蘇生に時間がかかるんだけど、猪はウルフに変化して生き返ってしまった。


そのウルフがご主人さまに立ち向かうなんて‥‥‥


ご主人さまに前世の記憶があって、前世の記憶はアルベルトって言うらしいけど、アルベルトさんが住んでいた国に戦争を仕掛けたのがガルシア帝国だ。


確か、ガルシア帝国が猪によって滅亡したのが300年前か500年前だと思う、あんまり人の時代は覚えていない。


私たちは人と同じように歳をとることはないから。人は1年で一歳の年齢を重ねるけど、私たちは違う。


でも、ご主人さまの前世の人が、あの時代を生きているとは思わなかった。


ご主人さまの口からガルシア帝国って言葉が出た時には、ドキッとした‥‥‥


これは私だけが知っていることだから、他の神獣たちも知らない‥‥‥ご主人さまの前世のアルベルトさんのツラい記憶だから言えない。



私は飛行魔法を使いながら上空に待機している。


ソフィアが、人を後方に下げるのを待っている、こちらに黒いトラの意識だけを向けて、他には被害が及ばないようにしている。


黒いトラは上空にいる私に襲い掛かろうとジャンプするけど、私が届く範囲にいないから。


私はご主人さまに言われたようにダメもとで話してみる。


「ねぇ、君たちは帰るべきところがあるだろう、そこに帰ろうよ」


「‥‥‥」問いかけを何回しても目が赤いから、届かない。


この目の赤さは、どうしてだろう?


何かの麻薬なのか、悪いものを食べたせいなのか?


でも、集団っていうのが変だよね。


口からは涎を垂らしているくらいだから、もう正常じゃないのかな?


でも遥か昔に見た記憶がある。この国じゃなくて遥か遠い国だったような気がする、あまりに昔すぎて記憶が定かじゃないけど、その時も同胞のトラだった。


その時は、確か、一頭のトラが暴走していたと思う。確か、調べて辿って言ったので少し記憶にあるんだけど、どこかの研究施設で実験が行われていたんだった。


私は同胞を実験にされて頭にきて研究施設を壊した。もちろん研究員も殺した‥‥‥。


終わったときには建物は跡形もなく崩れ去り残骸だけが残っていた。


私は、その時どうして何も害をなさない同胞に対してそういう実験ができるのかと涙を流した。


その時、私は人間を憎んだりました。


そんな残虐的な行為ができる人間を一生許さないと思った。


でもご主人様と出会ってからはその心はなくなり穏やかになった。


私は召喚されて、ご主人様に救われた。


私は目の前にいる黒いトラを苦しまないように1発でしとめる準備をした。


私もご主人さまの支持した通り、基礎魔法をいつも練習している。


本来なら神獣は、それだけの能力があるから神獣なんだけど、だから能力が上がるはずもないけど、理由はわからないけど実際にやってみたら、少しずつ能力が上がっていった、これには、本当に驚いた。


努力することで能力は更なる高みになれる。先をゆくご主人さまに追いつける。


さぁ、そろそろ、君は眠る番だよ‥‥‥、私は黒いトラの眉間に意識を集中させジャネットの専売特許のレーザービームを放った。


黒いトラは眉間を撃ち抜かれて横倒しに倒れていく。


私は両手を合わせた。


同胞だから、ツラい面もあるけど、同胞だから他の人には任せたくない。


それをご主人さまは知っていると思うから、任せてくれた。


上空から見てもトラはいなくなった。


私がソフィアの元に降りていく。


「ソフィア、怪我はない?」


「うん、大丈夫だよ、アレクも怪我はない?」


「うん、私も大丈夫だよ」


「アレク、目が赤いよ」


「う、うん、トラは私の同胞だからね」と言うと、また一筋の涙が流れた。


「アレク‥‥‥」と言ってソフィアが抱きついてきた。


「‥‥‥ありがとう、ソフィア」


そうしたら後ろから声がかけられた。


「あの‥‥‥」私たちが離れて、声の方をみると、さっきソフィアと話していた人だ。


体の大きな人は「本当に、助かりました」


「いいえ」


「それで、その先ほどもお聞きしましたが、本当に勇者様の仲間の方なんですね」


「そうです、ソフィアといいます。こちらはアレクです」


「あの、もしよろしければ握手をしてくれませんか?」


「えっ、握手ですか?」


「は、はい、ぜひ、お願いします」と将軍は頭を下げた。


まぁ、しょうがないか? と思っていたら後ろにもずらりと人が並んでいる。


「‥‥‥」


目の前には将軍が頭を下げて手を出している。


に、逃げられない。


そう思ってしたら、突然、私の横にご主人さまが転移してきた。


「皆さん、今日はありがとうございます」とご主人さま


「2人は戦闘で疲れていますので、今日は、この辺で‥‥‥」と言って、早々に瞬間転移していった。


あとには将軍の差し出された手だけが残った。


将軍も顔をポリポリかきながら手を引っ込めた。


俺たちが瞬間転移で消えたあとには、余計に騒ぎが起きていた。

「すげ〜、あれが勇者か?」

「俺も初めて見た」

「キャ〜、勇者さま〜」

「この目で勇者様を拝見できるなんて」

「目の前で消えたよ、本当なんだな、瞬間転移できるなんて」

「さすが、盟主クリス様」

「あ〜ソフィアさんの手に一度でもいいから、触りたかった〜」

「俺もアレクちゃんの手に触りたかった」

「俺なんて、ソフィアさんの匂い嗅ぎたかった」

「お前、何言ってんだよ、変態が」

「何を〜」と喧嘩が起きていた。


‥‥‥でも消えた3人は知るよしもない。


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