第475話 シャーロットとロゼッタ

目の前には目が赤いドラゴンがいる。


ロゼッタさんが話しかけても、聞く耳持たずって感じだな。


私は地上に降りて人を遠ざけることにした。


私が地上に降りていくと知っている人がいた。


それは兄だった。


兄のアルバートが現場の責任者としてきていた。


「お兄さま」


「おお、シャーロットが来たのか?」


「はい、クリス様よりおおせつかりました」


「クリス殿から?」


「はい」


「ドラゴンだぞ、大丈夫なのか?」


「はい、私も勇者のメンバーですからね」


「では、ここは私が先頭に立つ‥‥‥」


「いいえ、お兄様、下がってもらえますか?」


「なんだって?」


「聞こえませんでしたか? お兄様、ここは戦場なんです。私とロゼッタさんに任せてください」


「わ、わかった‥‥‥」シャーロットのあまりの剣幕に押されてしまう。


「ぜ、全員、後方に下がれ」と大声でいう兄だけど、悔しさが滲んでいる。


後方に下がったことを確認してロゼッタさんに合図を出す。


ロゼッタさんは私の合図を待っていたかのように、ドラゴンにアイススピアの数を絞ったものをお見舞いする。


私もうかうかしちゃいられない、クリス様が見ているから。


私もドラゴンに向けて私が作りえる最大級のファイヤーボムを作り出す。


私だって、ただクリスさまの元にいたわけじゃない、毎日、毎日、練習を欠かさなかった。


それを一体のドラゴンにめがけて飛ばす。


見事ファイヤーボムがドラゴンに当たり爆発する。ドラゴンは大声で泣きながら地面に倒れていく。


そしてさらに継続爆発が起きた。


地面に倒れたドラゴンは動くことはなかった。


後ろに下がったお兄様を見てみると、驚いた目をしている。


ああ、これで私も普通ではなくなったように感じた。


でも、いいわ、クリスさまの元に嫁ぐから‥‥‥


私は飛行魔法で飛び立ちながらファイヤーボムでドラゴンをやっつけていく。


今、ロゼッタさんはボスみたいな巨大な赤い色したドラゴンと対峙している。


私がロゼッタさんの邪魔にならないように他のドラゴンを倒していくことにした。


なんだかファイヤーボムでドラゴンを倒していくと、私が強くなったような気がする。


ロゼッタさんはクリス様に言われたように元のサイズに戻っていないから、まだ本気じゃないみたい。


以前、クリス様が作った大きな空間でロゼッタさんが巨大化した時には驚いた。


でも巨大化したロゼッタさんは、みんなを乗せて走ったりして遊んでくれた。



もう少しでボス以外は討伐できる。


ロゼッタさんはなんとか対峙しているボスみたいなドラゴンを生きて帰そうとしているけど、無理みたい。


私もファイヤーボムだけじゃなく、試してみたいことがある、それはドラゴンの皮膚をも貫くことができるアイススピアなの。


まだ、試したことがないから、本当にドラゴンの硬い皮膚を貫けるか、わからないけど。


今、私が特に練習している魔法はファイヤーボムとアイススピアの2つなの。


飛行魔法も練習中だけど、できるようになってきているから攻撃系の魔法ではということ。


だから効果を確認するためにも、ここしかないと思うのね。


私はファイヤーボムから切り替えて、氷系の魔法でアイススピアを作ったの。


しかもできるだけ硬くしてダイヤモンドをイメージして、クリス様が魔法を発動させる時にはイメージが大事だと言っていたから、練習では硬い岩石を貫いたわ。


私は硬いダイヤモンドをイメージして氷魔法を発動させて私の上空に1つのアイススピアを作ったわ。


クリス様みたいにいっぱい作りたかったけど、まだ、無理ね。


しかもコントロールがあるから、クリス様のようには行かないわ。


以前、クリス様が多くの魔物を討伐するのに、数えきれないアイススピアを作ったってエイミーちゃんが言っていたわ。


それを一斉に発射させて命中させるなんて、とても繊細のコントロールが必要になるわ。


今はできないけど、もっと練習してできるようになってみせるわ。私だってクリス様のメンバーなんだから。


でも、本当にクリス様のいう通りイメージ力が強くなればなるほど、面白いほど上達していく自分に驚いている。


私は硬くしたアイススピアを一つ、ドラゴンめがけて放ったわ。そうしたらドラゴンは羽を広げて飛び立とうとしてジャンプしたけど、私の攻撃の方が早かったわ。


ドラゴンが私のアイススピアを受けて体に穴が開いて血が噴き出して倒れたわね。


やったわ、クリス様、みていますか?


こんな時にトイレでも行っているんじゃないでしょうね?


しっかりみていてくださいね。未来の旦那さま‥‥‥


あと、数回、アイススピアを作ってドラゴンを攻撃した。


でも、最後に残っているのはロゼッタさんが立ち向かっている。



ロゼッタ視点


できたら、このドラゴンは殺さずに生かしておきたいんじゃが、話を聞き入れんな。


わしの話を聞いてくれんから、無理みたいな気がするんじゃが。


下にいるシャーロットは、なかなかうまく攻撃をしておる。


初めはファイヤーボムで爆発させて小さいドラゴンをやっつけていたんじゃが、最後の方はアイススピアでドラゴンを撃ち抜いていた。


見事じゃな。


さぁ、わしの方も、そろそろケリをつけなきゃならん。


普通はドラゴンは目が赤いことはないんじゃが、目の前にいるドラゴンは何か変じゃが、正常じゃない。


変な食べ物でも食べたか?」


苦しまないより1発でしとめでやろう。


わしは以前、使ったことがあるビーム光線でドラゴンを殺すことにした。


わしは右の人差し指を立てて奴に向ける。


狙いは眉間じゃな、同族だから苦しむのはみたくない。


ドラゴンの眉間に狙いを定めて‥‥‥発射


「ズキュン」と音がしてドラゴンは目に力がなく普通の目の色になり、瞼を閉じて、地面に落ちていった。


「ズッズシン」と大きな音と共に地面に落ちて死んだ。


「わっやった〜」と兵士たちが騒ぎ出した。

「勇者様、万歳」

「ロゼッタさま、バンザイ」

「シャーロットさま、すごい、強い」

「姫さま、やった〜」

「シャーロットさま、ドラゴンキラーだ」

「そうだ、ドラゴンキラー姫だ」


と適当なことを言っている。


そこにご主人さまが現れた。


「ご苦労様、ロゼッタを派遣したのは同族だから話ができるかと思ったんだけど‥‥‥」と


「いえ、私も、そのつもりでしたが無理みたいでした」と普通にしゃべった。


「同族を殺さなければならないのは悲しいね」


俺がロゼッタに近づくと、ロゼッタは涙を流した。


そんなロゼッタを抱き寄せた。


「ごめんな、ロゼッタ」


一つの望みでもあったわけだけど‥‥‥


下からシャーロットが「そこで、何やっているんですか?」と大声をかけてきた。


それに気がついてロゼッタを離しながら下へ降りていく。


「もう、上でイチャイチャしないでくださいよ」と言われたが、「別にしていないよ、ロゼッタが同族を倒すことになって悲しそうだったからね」


「あっ、そうですね、ごめんさない」とシャーロットは落ち込んだ。


「ううん、いいのじゃ、ありがとうシャーロット」とロゼッタ


「あっ、いえ、そんな」


そこに王子が走ってきて、「これは、これは盟主殿、今回はありがとうございます」と言ってくれた。


「お兄さま‥‥‥」


「シャーロットも、ご苦労様。そしてロゼッタ殿もありがとうございます」


「いや、いいのじゃ」


「シャーロットは、すごいな、本当にドラゴンを倒してしまった」


「いえ、そんな」


「いや、謙遜しなくていいよ、クリス殿の元でかなり修行したのがわかる」


「恥ずかしいですわ、お兄さま」顔を赤くしている。


「いや、君たちが来てくれなければ、本当に多くの犠牲者が出ていたところだ」


「あっ、そういえば怪我人はいますか?」


「あっ、怪我人は、後方で魔法師が治癒しているんだが、クリス殿もみてもらえると助かる」


「いいですよ」


そして後方に歩き出す。


王子と歩きながら、「どうしてドラゴンが村を襲っていたのか、わかっていますか?」と聞いてみた。


「それが、わからないんだ。突然、現れて火を噴き出して暴れ回って‥‥‥」


「そうですか」


目の前には怪我人が寝ている。数人の魔法師が治癒魔法をかけている。


魔法師の治癒魔法でなんとか生きている人が多くいる。


俺とロゼッタが駆け寄り治癒魔法を手伝っていく。


「魔法師の皆さんの治癒魔法のおかげで生きている方が多くいます、このまま続けてお願いします」と言いながら、俺は怪我人の横を通り過ぎるだけ。


「勇者様、こちらの怪我人をお願いできますか?」と魔法師の1人が言ってきた。


「あっ、私のところの怪我人もお願いします」

「あっ、うちのところもお願いします」と


「はい、わかりました」と言って怪我人の元に行き、治療をしているフリだけする。


それを繰り返す。


実は、見回ってる時に回復させている。


できるだけ魔法師を傷つけないように自信を持たせることをした。


離れたところにいるロゼッタが声を上げる「ご主人さま、こちらへ」と


俺が急いでロゼッタの元に行き王子もついてくる。


「あっ、この者は怪我の状態がひどく、もうダメだということで、離しておりました」と王子


もう、虫の息になっている、死ぬ寸前だろう。


ロゼッタでも難しいから俺を呼んだみたい。


俺が近くまでいったら女性だった。


胸元は大きく服が破れるほど傷が深い‥‥‥


俺はすぐに回復させる聖属性の魔法をかけながら内臓の状態を確認してみた。胸にある傷は肺と心臓まで達している。


傷の状態をイメージしながら同時に聖属性の魔法をかけて、心臓の筋肉、血管、と肺を治癒していく。


心臓が修復できたので呼吸が少し違うけど、まだ肺がある、これから肺を修復させていく。


右肺を修復させていくと呼吸が穏やかになった。


他にはないのか、みてみると足も骨折している状態で、骨折を修復させていく。


そうすると顔色も良くなってきて呼吸が穏やかになった。


しかし血が足りていない、俺は増血を促すようにして回復も促進させた。


そうすると怪我人が目を開けた。


「あれっ、私、ドラゴンにやられたんじゃ?」と言って起き上がりながら手や足をさすっている。


「クリス殿が魔法で治してくれたよ」と王子


「あっ、王子様、え、えっ、クリス殿って?」


「こちらが勇者クリス殿だ」と王子


「勇者さ‥ま‥?」


「ゆっくり休養をとるように、血が大量に失われているので」と言ってロゼッタと共に立ち去ろうとした。


女性が大声で「えーーーーーーーーっ」と言い出した。


予想ができるので、俺たちは帰ることにした。


「じゃ、王子、俺たちは帰るね」と言って返事も聞かずにシャーロットを連れて帰ってきた。


もちろん瞬間転移で。


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