第464話 壁画

結局は俺たちがイーノック王国に来た目的のニセ勇者は、姿もなく、どこに行ったのかわからなかった。


たぶん魔族が城に入るために使った方法だと思う。


魔族の奴が俺の顔の変装することはできるかもしれない。そして勇者だと言って城に入ることも可能だったのかも。


誰が変装していたのかまではわからないから、たぶん、そんな所だと思う。


イアンは出かけていたから知らなかったし、キャサリンは、ニセ勇者にはあっていないそうだ。


たぶん、王に取り入って城に潜入してから魔族の攻撃を受けたと思われる。


その時に、ニセ勇者として入った奴が手引きして魔族を増やしていけば簡単に入ることができる。



俺たちはイーノック王国の王城が魔族に乗っ取られたのを奪還したけど、人にも魔族にも多くの死者が出てしまった。


たぶん、死者は数百人に及ぶと算出された。


でも、まだ、街には魔族がいるかもしれない。


検索魔法で魔族と探知すると、反応がある。


ここにいる王様とイアン王子とキャサリン姫に「王様、魔族が街にいるみたいですが、どうしましょうか?」と聞いてみた。


「街には、かくれる所も多いですからね、厄介です。

その前に、壁画を見せていただけるとありがたいです」


「壁画の方にはすぐに案内しよう、娘が案内します」と言われて、キャサリンが「じゃ、今から行きましょうか?」


「ええ、お願いします」と連れ立って王様と王子以外の全員が歩き始める


2人は、これから忙しくなる、まずは生きている人を探すことだけど、いないと思うな。


誰が死んでいるのか、まだわかっていない。


でも俺は帰ることも考える必要がある盟主としては、いつまでも他国にいることはできない。


俺に加盟する国は負担もしているので、屋敷の提供だとか、資金面で俺をバックアップしてくれている。


豪勢な暮らしもできるほどの資金をもらっているけど、俺たちは、そんなことには興味ない。


だって大きな屋敷に住めば、歩く距離も長くなる。俺の住んでいた家では玄関を開けたら一番、奥まで20歩だよ。


大きな屋敷に住むと掃除する人を雇う必要も出てくるし結構、大変だよ、人からみるとうらやむ人もいるけど、他人が持っているものが欲しがる原理だね。


魔族だって、そうかもしれない

人間が持っているものを欲しがっている?


でも、俺は誰とだって戦いたくはないけど、人を殺したりする奴は別。



俺たちはキャサリンを先頭に廊下を歩いていく。どこまでも続く城の中を歩いていく階段を降りたり廊下を歩いたり角を曲がったりしながら、やっと地下に辿り着いた。


しかし王族は大変だな、自分の部屋から、外に出るまでに時間がかかる、と考えてシャーロットを見たら、「なんですか?」と言われた。


「いや、ちょっと、考えごとを」と誤魔化した。


シャーロットというとお姫様って感じがするんだけど、セラフィーナはそうじゃなく、やっぱり王を継ぐからと思うけど、それなりを感じる。


「到着しました」というキャサリンの声がした。


到着したといっても、まだ階段が下へ続いている。


城が立て直されたみたいで、この先からは全体的に古さを感じる。


古い階段を降りていき、行き着いたのは横に続く通路だ。


その通路を歩いていくと下が石ではなくなって、土になってる。


横の壁も土で天井まで土でできているから、洞穴みたいだ。


お城に下に古い洞窟があるなんて、すごいな、でも、それを残している祖先の人の方が、いい考えを持っている。


洞窟をどんどん、先に進みながら下の方へ緩やかに降っている。


それぞれがランプを持ちながら足元を照らす。


ところどころ下が濡れているところもあるけど、結構、歩いてきたけど、まだ目的地まで到着しない。


滑らないように歩きながら、やっと大きな扉の前にきた。


キャサリンが持ってきた鍵で扉を開けると、一気にカビ臭い匂いが漂ってきた。


カビ臭い扉の中に入っていくと、奥には一面に広がる空間があり、意味がわからないけど、明るい。


ランプがなくても明るいのは、どうしてだ?


そして、この空間に入った瞬間に感じていたカビ臭さは消えていっている。


淀んだ空気さえ、きれいになっている。


「キャサリン、ここが作られたのって、いつ頃?」


「正確にはわからないんですよ。禁書庫に残っているのは書物に書いてあるのは以前からあったとしか‥‥‥」


「以前からあった‥‥‥」


「はい、残っている本に書かれているのは、1000年前の本で、もう本自体がボロボロで読めなかったんですけど、読めた文字は今から1000年前だということです」


俺たちは周りを見ながらうろうろしている。


「壁画は?」


「壁画はですね、ここからさらに奥にあります。建物の右側から入っていくと、その壁に書かれています」


俺たちはキャサリンのいう通り、建物の右から入っていく‥‥‥、建物の後ろになっているところに、もっと狭い通路がある。


その壁に絵が書いてある。


右にも左にも天井にも書かれている。


右の絵から見ていくと、人が書かれている、明らかにセラフィーナとシャーロットだとわかる絵だ。


その前には、アレク、アデル、アイリス、エイミーの4人。


そしてさらに歩いていくとジャネット、ロゼッタ、パトリシアだ。


さらに前には、アリシア、ソフィア、イザベラ、コリンが書かれている。


そして一番、奥には俺が振り向いて腕を上げて前を指差している。


ちょっと笑えるのがイザベラの絵の顔が崩れている‥‥‥


なんだ、これは、俺たちが生まれる1000年以上前の壁画、しかし、明らかに俺たちだ。


これは、どう言うことだ?


みんなをみると自分の絵が書いてあるところにいる。


自分の絵が書かれている壁画をじっと見ている。


1000年前に俺たちがいるわけはない。これは誰かの悪戯なのか?


でも時間が違いすぎる。


意味がわからない、1000年前の時代に書かれた俺たちが何を意味するのか?


でも、気になることがある、俺の壁画の指し示す方向。


俺の指は、俺を導くように指を刺している。


それが何を言ってるか、わかる気がする。たぶん、場所と時間‥‥‥


場所は、この先に行けということ、そして関係するのが時間。


俺は、まだ自分の壁画を見ている、俺の顔と指差す壁画を。


「ねぇ、アリシアさん、クリス様、自分の壁画をじっと見ていますよ、ナルシストですか?」とキャサリン


アリシアは「しっ」と指を唇に当てた。


それを聞いた瞬間にみんな沈黙した。


俺への注目が集まっている。


「‥‥‥」誰も何も話さない。


ただ俺は自分の壁画が答えるまで、じっと待っている


「よしっ」と言って俺が指が差し示す方向に歩き出す。


そこは壁だ、行き止まり‥‥‥、しばらく待つと壁が動いていく。


「えっ、あんなところに壁の扉が‥‥‥」とキャサリン


「ゴゴゴゴッ」と壁が動いた。早速、俺が動いた壁の中へ入っていく。


みんなが続いて入ってくる‥‥‥しかし、入れない。


「えっ、ここに見えない壁がある‥‥‥」ソフィア

「え〜、入れないよ」とアレク

「そ、そんな、入れないなんて」とコリンがすごく残念そう

「クリスしか入れないの?」とアリシア


俺は、みんなの言っていることを無視して、中へ入っていく、どうやら、ここは岩の壁だけじゃなく特別な結界魔法で守られているみたい。


俺しか許可されていない結界魔法だ。俺しか入ることができない。


俺しか中に入ることができないので、どんどん進んで入っていく。


そこには数冊の本と箱が置いてある。


本は後で読むから、異空間収納に入れておくとして、箱を開けるには、鍵穴があるけど、その鍵がかかっているか確認しようとしたら、「カチャッ」と音がして鍵が開いた。


俺は蓋に手をかけて持ち上げると中には、小さなアクセサリー見たいな剣が入っている。


俺は、それを手に取り、こんな小さな剣じゃ使えないよなと思った瞬間、剣が大きくなった。


俺は、驚きのあまり剣を落としてしまった、そうしたら剣は、元の小ささに戻っていった。


「へ〜、伸び縮みするんだ」と声に出した。


俺は、伸び縮みする剣を拾い上げて、腰のベルトにつけた。


もう、ここには何もないみたいだ、箱の底をもう一度点検したけど何もない、もしかしてと思ったんだけど、なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る