第457話 他国に勇者あらわる4

俺と護衛を思しき奴と戦っているのを上から皆んなが見ている。


俺が剣を挟むとしたら通り抜けて、俺が展開していた基礎魔法に当たり、剣が真っ二つに折れて女性の方に飛んだ。


剣が折れて女性の方に飛ぶ瞬間、俺は女性を結界魔法で覆って安全を確保して、飛んだ剣を素早く手で取った。


もちろん手には強化魔法を施してあるので、剣を触っても無傷だ。


それを見ていたうちのメンバーの女性たちから冗談で「きゃ〜かっこいい」とか、「ご主人さま、素敵」とか煽ることを言っている。


周りの人たちからも、「うわっ、すげ〜」とか、「なんだ、あの人」とか、「でも、格好悪い、もう少しで大怪我」とか、「でも、どうして当たらなかったの?」とか、言われている。


「お前たち、やめなさい、こちらの方は守ってくれたのですよ」と女性の怒ったような声。


女性の声で護衛の二人は、ひざまずく。


「はっ、キャサリン様、申し訳ありません」


キャサリンっていうのか。


さぁ、そろそろ、この場を離れようかな?


「じゃ、俺は、この辺で失礼します」と言って立ち去ろうとする。


「ちょっと待ってください」


俺は立ち去るのやめて止まる。


「あの、そのお顔と魔法の能力の強さ‥‥‥、もしかして勇者様ですか?」


な、なんと、こんな国まで本が出ているのか?


「ち、違いますよ」と俺は歩を進める。


「いいえ、間違いありません。そのお顔は、勇者物語の本の勇者様に似すぎています」


上から「クリス、もう諦めたら」とアリシア


声がする方を見たキャサリンが「あっ、アリシアお姉様!」って呼んだ。


アリシアに、姉妹はいない‥‥‥。


「あっ、申し訳ありません、私、勇者物語の大、大ファンなんです。その中でも勇者様とアリシアお姉様の大ファンなんです」


アリシアが顔を赤くして困惑気味


ソフィアから「ちょっとぉ、お姉さまだって‥‥‥」と言われている。


「じゃ、俺は行くね」


「待ってください、勇者様だとわかった以上、話を聞いてもらいます」


「えっ、それは、いいよ」


「いえ、私を助けてください‥‥‥、お願いします」と言って涙ぐんだ。


「‥‥‥」俺は、どうしようか、迷っている。


「クリス、仕方ないよ」と上からアリシア


「うん、そうだね、なんだってお姉様だもん」とアレク


「こらっ」とアリシア


「じゃ、どこかで話をしますか?」


「本当ですか、ありがとうございます。あの勇者様は、ここに泊まっておいでですか?」


「はい」


「私たちも、ここに泊まるので予約しているんです」とキャサリン


へー、予約できるんだと初めて知った。


「じゃ、いきましょうか?」と宿に向かって歩き出す。


女性は宿帳にサインを済ませて鍵を受け取る、2つ部屋を借りる。


女性の部屋は俺の隣だった。その横が護衛の人の部屋だ。


俺が自分の部屋に入ると全員がいた。


「クリス、女性は横の部屋?」とアリシア


「うん、そうみたい」


「なんだか、私を助けてって言っていたよね」とアリシア


「うん、そうなんだ」


「意味ありげ?」とイザベラ


「みたいだね」


そこにドアをノックする音がした。


「は〜い」と言ってアリシアが出てくれた。


まぁ出る前から、誰かはわかっているんだけど。


「し、失礼します」と現れたのはキャサリン。


中に入ってきたキャサリンは部屋の中を見渡す。


「やはり、勇者メンバーの人たちですね‥‥‥」と感慨深げ


「アリシアお姉様とソフィア様、イザベラ様、コリン様、ジャネット様、ロゼッタ様、パトリシア様‥‥‥」と全員の名前を言っている。


なんだか感動しているみたい。


感動が収まるのを待っていると、いつになるのか、わからないので、話をする。


「それでキャサリン、俺たちに助けてほしいとは?」


「あっ、そうでした。実は、私は隠していることがあるんです‥‥‥」と話し始めるけど、あまり聞きたくない。


「実は、私は、ここで人を待ち合わせをしているんです」と切り出した、なぁんだ、俺が思っていたのと違った。


「待ち合わせている人は、今日、帰って来るはずなんですが‥‥‥」


「うんうん、それで‥‥‥」と促す。


「そ、それが、ある人を探すために、船で出港していたんですが‥‥‥」


「へー、船で‥‥‥うん、船で?」


「はい、船でアドラス帝国まで言って、ある人に助力をしてもらうためでした」


「へ〜、そうなんだ」おっと、思わね方向に行きそうだ。


「船に乗っていたのは、誰?」


「はい、兄です、兄の名前は、イアンです」


「俺たちも用事があって船に乗ってきたけど、イアンなんて知らないな」


「お兄さんは今日到着するって言っていたよね」


「はい、そうです」


「じゃ、もう少し待つしかないね」


「でも、先に私の頼みをいいですか?」


「キャサリンの頼みはなんだい、俺たちも用事で、ここにきているからね、受けられるか、わからないよ」


「実は、困っているのは、勇者なんです」


「えっ、勇者?」


「はい、うちに勇者だと名乗る男とメンバーが訪れて、居座っているんです」


「そ、そうなんだ?」


「家って、どこ?」


「あっ、申し遅れましたけど、私は、この国の第一王女です」


「あっ、やっぱり」だって、あれだけの手練れを連れているから当然、身分が高い人だよね。


「そして、待っているのが、この国の王太子のイアンです。イアン兄さんは、勇者のことを調べに行ったんです。本当にいるのかも、わからない本の物語の人のようなお方ですから」


「うん、よく言われる‥‥‥」


「だって、私はいるって信じていましたけど、あのような魔法力を持っているなんて、おとぎの世界の話です。

いくら誇張されているかもしれませんが‥‥‥」と言うところでコリンを見た。


コリンは話には入ってこないで、書いている。


今の話していることを‥‥‥


「え〜と、キャサリン、あの本は、本当の物語なんだ、誇張もない実話なんだよ」


「え〜〜〜〜〜〜〜〜っ、信じられない。じゃ、あの、空を飛ぶのも?」


「あっ、うん、今はみんな飛べるけど」


「じゃ、透明になれるのも?」


「うん、透明になって、ここまで来たから‥‥‥」


「7つの国の盟主だってことも?」


「うん」


「そ、それじゃ、あの本の誇張はないんですか?」


「だって実話だし、嘘があったら実話じゃないでしょう」


「あっ、そうですね。私、勇者様はいるかもしれないと思っていましたけど、あまりにも話が大きいし、作り話しがいっぱいあるのかと思っていました。じゃ、もしかして、この中にコリン様が‥‥‥コリン様だけは話には出てくるんですが、イラストがないんですよ」


そうなのか?コリンは自分で書いていると言うことは作者名でわかるけど、自分で自分をイラストするって難しいから、書いてないのか?


「あそこで書いているのが、コリン先生だよ」


というと顔を上げずに、鉛筆を持った手だけ上に挙げた。


「えっ、あの方がコリン先生ですか?」


「うん、そう、あの人が俺たちのことを書いているんだけど、多分、創作はしていないはずだよ」


というとコリンが「ウン」と頷いている。


「じゃ、本当なんですね、異能があるって?」


「えっ、異能?」


「はい、普通、人では持ち得ない能力をお持ちになって、魔法や人々を助けてくれる人のことを私の国では言うんです」


「そうなんだ」


「私の国には昔から、異能な能力を持った人が東から我が国を訪れて救済してくれるとあるんです」


俺は、ちょっとそれに興味がある。


「私の国のお城に代々受け継ぐものです。これを子供の頃から私たち王族は教えられます。この人に従えと‥‥‥」


「伝承では‥‥『東の空から13人の仲間と共に特殊な能力を使って現れ、この国に訪れようとしている厄災を、その者が振るう異能と思える大きなる力で、その者は世界中の民を助け救世主となるであろう。その者を疑うな身も心も任せてしまえ、さすれば世界は救われる。その者、救世主なり』とあるんです」


「え〜〜〜〜なにそれ?」


キャサリンは「まだ、あとがあるんですよ、『国を訪れた救世主は、いつも不安な心で満たされておる。それを13人の仲間が協力しているからこそ、救世主は善の力を振るうことができる。誰一人かけてもならぬ、一人でもかけると救世主が悪の大魔王として世界を滅ぼしてしまうじゃろう」と言う伝承です。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

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