第372話 久しぶりに二人で

俺たちは、オズワルド王国で行われる新国王戴冠式の準備に入っている。


普通だったら、王様が、国を出て、たくさんの護衛に囲まれて、目的地の国まで旅をすることになるけど、特にダイラス連邦は北にある国だから、離れている。


だから、どれくらいかかるか、わからないところを、神獣達の力で瞬間転移で、1秒もかからないで、目的地に到着する。


以前も経験したことがある国が、ほとんどだったけど、ブラッドフォード大公国も参加の意志を示したので、急ぎ人を派遣することになる。


13人の担当する国を決めて、オズワルド王国以外に派遣することにした。


オズワルドを除いて6カ国だから、二人一組で、一人余るので、、それを俺が、よく知っているアリシアにした。


最近は、アリシアは、魔法の練習をしているときも、魔法力が向上しているから、多分、メンバーの中で一番かもしれない。


俺とアリシアの二人は、オズワルド王国に瞬間転移してきた。


俺たちが、以前、きた時に確認していた王都の路地に瞬間転移で姿をあらわした


もちろん瞬間転移する前に、人がいないことは確認している。


俺とアリシアは手を繋いで王都の路地に姿をあらわし、メイン通りに出てきて、街の様子を伺うことにした。


メイン通りだけあって、多くの人が、行き交っている。


馬車も荷物を乗して通りを危なくない速度で走らせている。


俺たちは、すぐに城に行くよりも、街を見てみようと思う、つまり、ショッピングだけど、まぁ、目的はアリシアと二人なんて、久しぶりだからだ。


いつもはメンバーと行動しているから、中々、アリシアと二人と言うこともない。


俺は、別に、それを狙っていたわけじゃないけど、今、気がついた。


「クリス、二人きりって、久しぶりだね」


「うん、いつもはメンバーがいるからね」


俺たちは並んで歩いていると、アリシアが俺の左腕に体を寄せてきた。


「アリシアさん、胸が当たっていますよ」


「もう、そんなこと言わないの、今日だけ、特別‥‥」と言ってアリシアは、余計に俺に体を寄せてきた。


アリシアの石鹸の良い匂いがする。


俺たち二人が歩いていると目の前に屋台の店があった。


屋台で出しているのは、クレープみたいだけど、クリームが多めに入っているみたいな絵が書いてあるけど、本物は、そこまで入っていないんじゃないかなと思いつつも、クレープを2つ注文してみる。


クレープを注文して焼きあがるのを近くにある椅子に座りながら、待っているけど、今日はアリシアが、異常にベタベタ体を寄せてくるけど、俺たちはもう結婚宣言しているので、構わないと思う。


以前の俺だったら、考えられないかもしれないなと思いながら、、クレープが焼きあがるのを待つ。


でも、街に来て、買い物は良くしているけど、クレープを買い食いするなんて、初めてかな?


オーリス王国や他の国でも、クレープを売っている屋台は見たこともあるし、歩くながら食べている人も見たこともあるけど、俺たちが食べようかと思うと、何かが起きてしまうから、食べたことはないんだよね。


「はい、お待ち」と店主がクレープを差し出したので、椅子から立ち上がって、お金を払って、熱々のクレープを受け取った。


でも中のクリームは冷たくて、美味しそうだ。


俺が注文したのはバナナのクレープだけど、チョコもトッピングしたので、美味しそうだ、アリシアが注文したのはイチゴのクレープだけど、アリシアのもチョコがかかっている。


俺は二つのクレープをアリシアのところまで運んで、座る前にアリシアにクレープを差し出した。


差し出されたクレープをアリシアは、ありがとう、クリス、と言って受け取り、俺が座るのを待っているみたい。


俺が椅子に座ると、「じゃ、食べようか?」と言って食べようとしたけど、こんな時は、することがあるんだっけ。


「食べる前に、アリシア、一口、どう?」と言ってみた。


アリシアは目の前に差し出されたクレープを見て「ありがとう、もらうね」と言って、一口じゃなく、半分以上食べてしまった。


俺は半分もなくなった食べていないクレープを見て、唖然とした。


「もう、クリス、落ち込まないでよ、冗談だから。クリスが突然、恥ずかしいことを言うから、ちょっとやってみたかったの」


「はい、私のあげるから、でも半分までだよ」


俺は差し出されたアリシアのイチゴクレープを大口開けて、食べたけど、半分も食べれなかった。


アリシアって口が大きい?


そんなこと言えないから、黙っていたけど‥‥‥


アリシアが半分以上、食べたクレープを急いで食べて、アリシアが食べ終えるのを待っていて、しばらくは椅子に座って、周りを見ている。


次の客が来たので、俺たちは椅子を開けて、歩き出した。


メイン通りを歩いていると、男性服専門の店があった。


「あっ、クリスの洋服でも見ようか?」と言ってみつけた洋服屋に腕を引っ張理ながら入って行った。


洋服屋に入ると、「あっ、いらっしゃいませ、どうぞ、ごゆっくりご覧ください」と女性に言われたので、中を見せてもらうことにした。


働いている人は、店主と言うよりも、雇ってもらっているような感じで、洋服を並べたり畳んだりしていた。


俺たちに構うこともなく、ゆっくり服を見ることができる。


俺も自分の服を見ているけど、アリシアが選んでくれる。


俺が選ぶのは普段着とパジャマと下着とシャツくらい。


下着は、派手なものじゃない方がいいし、下着のシャツは丸首がいいな、と思いながら選んでいく。


あとは靴下くらいかな。


ここで買うのは、靴下、下着のパンツとシャツだけど、アリシアは、違うものを見ている。


冒険者が着るような服装じゃなく、貴族の人が着るような服を数着、見ている。


貴族が着るような服というのは、シンプルなものじゃない、ゴテゴテ、色々なものがついていたり、ヒラヒラがついているような服だけど、俺が一番、嫌な服だ。


「アリシア、ごめん、そんな服、無理!」


「えっ、クリスは、もう貴族なんだから、こんな服も必要だよ」


「いや、絶対、無理」


「そ、そう、残念ね」


ということで、俺は下着類と靴下だけ、数枚購入して店を出たけど、ピエロにされるところだった。


危な〜


戴冠式で着る予定の服は、冒険者の服で出席しようと思うけど、アリシアが許してくれれば、だけど。


俺の服装は、ほとんど、無頓着だから、女性達の言われるままになることが多い、特にセラフィーナとシャーロットが詳しいから。


店の外に出て通りを歩いていると、喧嘩が起きているみたいで騒いだり物が壊れる音がしているみたいだけど、俺たちには関係ないので、音が聞こえない方向にアリシアと腕を組みながら歩いている。


先ほどの店で買ったものは、人が見ていない時に、異空間収納に入れたから、今は手ぶら。


でも、ここにきて、アリシアと二人で歩けるなんて、よかった。


俺たちは歩きながら、貴族が入るようなレストランを見つけた。


「アリシア、あそこ、入ってみない?」


「えっ、高そうだよ」


「大丈夫だよ」


「あっ、でも、この服装じゃ入店拒否されるかも」


「ほら、みなさい、クリス、だからさっきの洋服があれば、入れるじゃない」


「でも、アリシアも今日は普段着だよね、俺だけじゃないよ」


「あっ、そうか、私も、普段着だった」


「じゃ、二人とも入れないね」


「うん、他に行こう」


「そうだね」と言って俺達二人は、歩き始めた。


しばらく歩くと、外にテーブルを置いてある店が目に入った。


「ここにしない?」


「うん、そうだね、ここにしようか」と言いながら、空いている椅子に座って、テーブルの上に置いてあるメニューをみる。


「俺は、ハンバーグにしようかな」メニューにはイラストが書いてあって、美味しそうな絵になっている。


「じゃ、私も、クリスと同じものにしよう」と決めた時に、働いている人が注文に来たので、「ハンバーグとパンとコーヒーを二つずつ」と言った。


「はい、かしこまりました」と言ってメモしながら店の中に入って行った。


俺たちはテーブルに手を置いて人の流れを見ている。


多くの冒険者や女性達、男性達、兵士、騎士、子供が歩いている。


なんだか、こんな光景、久しぶりだ。


多くの人が行き交うのを見ながら、その中に見たことがある顔の奴が一瞬、見える。


「!」椅子が倒れるのも気にしないで立ち上がって、見たことがある奴を探した。


「ガチャ」と椅子が倒れる。それも気にすることもなく奴を探した。


でも、どんなに探しても、見つけることができなかった。


「ちょっと、クリス、どうしたのよ」


「‥‥‥」俺はアリシアに説明することもできないくらい緊張した。


「奴がいる」


「えっ、誰?」


「奴だ、ウルフの奴が、ここにいる」

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