第309話 神獣と勇者4
俺の戦闘能力が上がれば、上がるほど、ウルフの動きはスローモーションに見えてしまう。
たぶんウルフは高速で動いているんだろうけど、すごくゆっくり動いているように見えてしまって、逆にタイミングが難しくなる。
剣が俺の間合いに入るまで、待たなければいけないから。
動きの変化は、奴の動きだけじゃなく、魔法も同じ現象が出ている。
魔法が飛んでくるスピードが異常に遅い。
奴の放ったファイヤースピアのスピードが、俺にゆっくり近づいてくるから、俺はファイヤーボールで吸収することができた。
しかも、2発のスゴイ、スピードで飛んでくるファイヤースピアを。
徐々に、俺の動きの感覚に慣れながら、ウルフと戦っている。
徐々にウルフの動きが遅いことに慣れてきた。
奴は、今は、俺の5メートル前にいるけど、右手にバチバチいっているから雷の魔法を準備しているみたいだ。
奴の動きが揺らいだ瞬間に、俺の目の前に現れた。
俺の前に瞬間転移したみたいだ。
でも、俺は余裕で、奴の動きを察知してかわすことに成功した。
ウルフの奴は肩透かし食らったみたいに驚いて俺を見えている。
そして中腰から立ち上がって、俺を
「このやろう‥‥‥」
「なに石に
「うるさい」
「年で足腰、弱ってんじゃないの」
「うるさい、うるさい」
ウルフを煽って平常心を失くすことをしてみるが、何か隠しているのか?
こんなに弱い奴が、神獣たちに一目、置かれることはない。
あまりにも、弱すぎる。
それを出させるためには、煽るのが一番。
平常心を無くせば、本当の力を出す可能性が高くなる。
狡猾なウルフが、何かを隠して俺と対峙している可能性があるからだけど。
ウルフは、今、俺の方を恐いほど睨んでいる。
次に奴は何をするつもりだ?
俺が、しばらく、ウルフの動きを監視しているとウルフの周りの空気が動き出した。
ん、何をするつもりだ‥‥‥
徐々に空気が奴を取り巻いていくが、だんだんと色が変化している。
透明な色から、灰色が多くなり、さらに色を変えてきている。
本当に黒一色と言っていいほど、黒くなり、さらに黒さが濃くなっていく。
単純な黒ではなく、嫌な色の黒になっていく。
これが奴の、ほんとうのウルフとしての特性だろう。
黒く、黒く、もっと濃密な黒になっていっている。
俺は奴が何をするか、わからなかったので、待つことにした。
ウルフは黒でも、ドス黒い、嫌な色になってきた。
ウルフが薄気味悪い顔をしている。
「これでキサマも終わりだ」
「俺が本気を出せば、勇者なんか、
「ふ〜ん、それは、やばいな」
「さすがのキサマも、俺の一撃で、お
ということは、なんか一撃を俺に向けて攻撃するということだろう。
俺は身構える。
奴が何をするのか、わからない。
しかし、俺も、攻撃を加える用意をする。
俺が考えている間にも、奴は、手を俺に向けて伸ばした。
その掌には、どす黒い塊が出ている。
それを向けて、俺に放つみたいだ。
放った黒い物体は、すごい勢いで俺に飛んできている。
俺も準備していた魔法を作ることにした。
それを奴が作った黒い魔法に当てると相殺されたみたいだ。
そして、奴が黒い物体を放った時に、もう一つ、別に用意した魔法を、奴に向けて放った。
相殺した魔法と違い、俺が放った魔法がウルフに当たる。
ウルフは、俺が放った魔法に気づくのが遅れた。
「グァッ」
奴の体から小さい放電が起きている。
そう俺が使ったのは、雷魔法だ。
奴は雷に耐えながら「キサマ、許さん」
奴はさらに大きな、黒い球を作っている。
初めは5センチくらいだったものが、徐々に大きくなり、20センチ、40センチとなり、さらに大きくなる。
3メートル以上に大きくなっていく、奴の身長より、明らかに大きくなっていくと、空間の空気を吸い込み出した。
俺も少しずつ、体が引っ張られていく。
先ほどとは違い、奴が作り出したのは、 ブラックホールだろう。
奴の上に作り出したブラックホールが、5メータくらいの大きさになったところで奴は、 ブラックホールを俺のほうに向けて放った。
俺が横に移動すると、そのブラックホールも俺が動く方向についてくる。
なんだか厄介なものを作りだしたな。
俺は考えた。これは、どう逃げ回ってもついてくる。
右に動けばブラックホールは右に動いてくるし、左に動けば左に動いてきて俺に近づいてくる。
空中に浮かんでいても、ブラックホールは、そのまま俺のほうに近づいてくる。
「ふぁ、はっ、はっ、逃げられまい」
「どうするよ、勇者さま」
どう動いても逃げられないので、俺はあることを思いついた。
俺に近づいてくるブラックホールに対して、ブラックホールを大空間を作ってみた。
「なっ」ウルフ
ブラックホールを覆っている空間を作ってみるが、しばらくは何も変化なかったが徐々に空間が小さくなっていく。
空間の中の空気を吸い尽くして、空間が小さくなっていき、どんどん、小さくなって、空間を巻き込みながら消滅した。
「‥‥‥」
試しにやってみたことだけど、うまくいった。
「キサマ‥‥‥」
「あーらら、消滅しちゃったね」 と軽い口調で言ったが、あれはやばかった。
やつは街を滅ぼすときには、今のブラックホールを使ったんじゃないかなと思った。
ブラックホールに、すべてを吸い付くしていくようにすると、後には何も残らないから。
それが奴の神獣としての力か?
力で破壊することと、殺戮をしながら、 ブラックホールで消滅させる。
だから建物も、死んだ人も、生きた人も、木や草花も吸い込まれていく、
あとに残るのは地面だけ。
国があったと言う証拠も時間の経過とともに人々の記憶からも失われて行けばなくなってしまう。
それが世界の監視者たる神獣のパワー
ウルフが怒りに体をふるわせて、何かをしようとしているみたいだ。
「ウオーッ」奴が叫んだ
「なんだ?」
奴の顔を見たら、変化し出した、今までは人間の男性だったのが、鼻が前へ突き出して顔に毛が生えてきた。
そして着ていた洋服がビリビリに破れて裂けていく。
そのには体毛が生えている体があらわになった。
奴は人型から、オオカミに変わってしまった。
「ゴフッ」
「俺の本当の姿に変わったのは、久しぶりだ」
「俺の全能力を持って、キサマを倒す」
奴の本質が見えてきた。
オオカミの体に戻った奴は、どう出る?
奴が俺に近づいてきた、奴の掌を見ると、バチバチ、音がしているから雷の魔法だろう。
俺が先ほど、奴に放った雷の魔法で腹が立ったのか、同じ雷の魔法を使うみたいだけど、今度の奴の雷魔法は、レベルが違う。
あれは、ヤバいかもしれない
俺は顔から汗が出てきたけど、動けない、たぶん、動いた方に雷撃が放たれるだろう。
俺は集中力を高めていくと、奴の手の動きがスローモーションのように、ゆっくりになった。
でも、奴の掌の上で、バチバチしている雷の魔法が気になる。
雷撃魔法は範囲が広い、少しでも当たると、痺れたり、燃え上がることもある。
ウルフは俺に向けて手で作った雷の魔法を放ってきた。
俺は、雷撃を避けるため、右にステップを踏んで、離れることにした。
でも目線は、雷撃と奴に意識は向けている。
ウルフは、また、新しく雷を発動させている。
これの俺に向けて放ってきた。
2つの雷が俺に近づいてくる。
1つ目の雷も俺がステップで回避しようとした回避した方向に曲がって飛んできている。
追尾する魔法か?
ということは、2つとも、俺に追尾してくるということか。
まずいな、どうする?
俺は右に、左に俊足で飛びながら回避しようとするが、奴が放った魔法は追尾してくる。
奴の高笑いが聞こえてくる。
俺は奴の方に俊足で近づいてウルフに当てることを考えた。
ウルフは、それもわかっているようで、自分に当たるような愚かなことはしないぞ、という顔で自分が作った雷の魔法を避けた。
避けた雷撃は、さらに俺に近づいてきた。
雷の魔法も、俺にとってはゆっくりでしかない。だから全力で避けていない。
そして、俺は、瞬間転移で奴の前に急に現れて、俺も雷の魔法で奴に放つ。
雷魔法は、奴に当たったけど、対して効果はなかった。
奴が作り出した雷の魔法は、俺が瞬間転移したことで目標を失って、壁に当たって炎症した。
「あたらなかったよ〜」と、おどけて見せたけど、奴に通じるか?
「キサマ」
奴は口を上へ向けて「ワオーーーンッ」と吠えた。
ウルフって、吠える時は、犬みたいだなと思った。
あっ、ウルフって犬科か
ウルフの奴の影が揺らぎ出した。
????
奴の体が揺らぎ出したと思ったら、奴が消えた。
俺は周りを見渡してみた。
ウルフの気配がない
俺も透明化に慣れるか、考えたけど、ウルフと同じことをしても、しょうがない。
目を閉じて集中していく、奴の気配を探す。そうすると、見つけた。
奴は俺に用心しながら、近づいてきているところだ。
剣を構えながら、魔法も展開しているが、魔法は氷の魔法で、氷を鋭い刃物のようにしている。
俺はたったまま、目を閉じて、奴の動きを感じている。
奴が、俺の1メートルまで近づいて、剣を振り上げた。
剣が、俺に振り下ろされようとする。
もう少しで切られる寸前、金縛りを展開した。
ウルフは、動くことができずに、振り上げた腕を、そのままで固まっている。
そして、実態を表した。
「ウググッ」 しゃべることも、できないウルフはうめき声をあげている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます