第241話 ブラッドフォード大公国 8

喧嘩の仲裁に入ったアリシアを騎士は、剣で切り付けようとしたが、アリシアの基礎魔法に邪魔をされた。


今までメンバー全員に、基礎魔法を練習するように言っておいた成果が初めて確認された。


これが自分の自信になっていくわけだけど、さらに高めなければ、上の奴は、いくらでもいると思う。


「アリシア、ありがとう」と言ってシャーロットに抱きついている。腰を抜かしそうな状態だ。


アリシアは、まだ怒りが収まらないみたい。


騒ぎを見ていた周りの人から、アリシアのことを、すげー女、強え〜、なんだ今の、とかいろいろなことを言われている。


それほどアリシアが見せた基礎魔法は特殊なわけだ。


見たことがない人は多いと思うけど、知っている人でも、これほど基礎魔法ができている人は少ないと思う。


基礎魔法に勝るものはなし、と言うことだ。


多くの人が基礎魔法が少しできても、これで、できたからと言って、それ以上の努力はしなくなる。


アリシアの怒りが少しおさまってきたので、アリシアの肩をポンと叩いた。


そうするとアリシアの全身から力が抜けた。


そして俺の方を見て、にっこり笑った。


「クリスが、いつも言ってくれているから頑張ったんだけど、成果がわからなかったから迷っていたんだぁ、でも、よかった、本当に基礎魔法だけで圧倒しちゃったよ。」


「お疲れ様」


そこに先ほどから青ざめている騎士が近づいてきた。


「申し訳ありません、酔って熱くなりすぎていました。お怪我はなかったでしょうか?」


騎士は、まだ青ざめたままで、アリシアに謝罪をした。


アリシアは「大丈夫ですから、気にしないでください、でも、もう二度とダメですよ。」


騎士は「本当に申し訳ありませんでした、関係のない方を傷つけるなんて騎士道に反します。


「私は、この国の騎士団総長をしております、いくら酒の席とは言え、とんでもないことをしてしまいました、本当になんとお詫びをしたらいいか‥‥‥」


騎士は頭を下げている。


アリシアが「もういいですから」


騎士は、「私は、この国で伯爵位を賜っています。もしよろしければ、お名前をお聞きしたいんですが。」


ちらっとアリシアは俺を見て、俺がうなずいたのを見て、「オーリス王国から旅できているアリシアと申します。


そして隣にいるのが、オーリス王国のクリス公爵様です。今、私たちは、オーリス王国と大公国が友好関係を築けないかと大公国に来ているわけです」とアリシアが正直に話した。


「な、なんと、そのお年で公爵閣下ですか…。あっ、これは失礼いたしました。お歳は関係ありませんね。」


「申し訳ありません、公道上で、これ以上の話は」と話を打ち切ろうとしたんだけど。



騎士総団長は、そうは、思わなかったみたいで、ぜひ、我が屋敷にと言われたのでしょうがなく、ついて行った。



騎士総団長の家に行くと、代々続くような立派な屋敷だった。


部屋に案内されて椅子に座っていると、騎士総団長が自己紹介がまだだったと言うことでアイザックと名乗った。


そして話を聞いた奥さんも挨拶に訪れた。奥さんの名前はライラと言う。


奥さんのライラは「ほんとに大変、申し訳ありませんでした。」と頭を下げていた。


主人が、お酒を飲んで、ここまで荒れたのは初めてだそうだ。


奥さんが、その理由を話してくれた。


信頼していた自分の国の王様と王族が、変な事件を起こしたからだそうだ。


信頼していた人から裏切られたと、つぶやいていたそうだ。


それほど忠誠心が厚い人が、裏切られたわけだから当然、酒に溺れていくのもわかる。


そこで俺はある考えを思いついた。


「アイザックさん、今度なろうとしている第二王子は、どう思われますか?」


「ハワード王子の事ですよね。実は、あまりよく知らないんですよね。ハワード王子は体が弱いと言うことで、人と会うことがなかったんです。」


「そうなんですね、あなたは騎士団総長と言う立場でしたよね。」


「では、騎士をまとめる立場でもあるわけですね」と俺が言う


アイザックは、「あの、何を言いたいのでしょう」


「私は、今度、即位するハワード王子を知っています。そして俺たちは、今、城に部屋を借りています。

そのハワード王子の近くに愛国心のある、あなたのような側近がいることが一番、望ましいと思います。ハワード王子に会ってみませんか?」


アイザックは、「私なんかが、とても会えるものではなく、軍人の私がハワード王子の役には立ちませんよ」



俺はちらっと、ソフィアの方を見た、それに気づいたソフィアも俺の方を見た。


ソフィアが思ったのは、またクリスが何かを考えているのかな?言うくらいだった。



俺はハワード王子の様子を感知魔法で確認してみた。


そうすると、たった今、文官が出ていって1人だ。


「アイザックさん、私と握手しませんか!」と、俺はいきなり切り出した。


アイザックは、わからないまでも手を出したので、男の手を握るのは嫌だったけど、そのままハワード王子の前に転移した。


ハワード王子はびっくりしたみたいだけど、すぐに俺だとわかって、挨拶してきた。


「神は、急においでになるのですね」とハワード王子


「まあね」


「今日、来たのはね、紹介したい人がいたんだ」


そして横のアイザックを見て、「こちらの人なんだけど」


急に連れてこられたアイザックはびっくりしていたが、キョロキョロ周りを見渡して、お城だと、すぐに理解したみたいだ。


理解が早くて助かる。


「こちらはアイザック騎士団総長です」と俺は紹介した。


「こちらはハワード第2王子です」と、わざと呼び捨てにした。


アイザックは、始め驚いていたが、開き直って挨拶した。

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