第87話 ラン
剣道着姿の幸太朗と白衣を羽織った間中は目が真っ赤な細田に連れられて理科室2数学班に現れた。2人ともすぐに脅迫状に目を通した。
「雛ちゃん!!ちょっと拉致現場見てきますっ!現場維持されてますよね?」
鑑識の様な間中には
「坂本先生は出張中なんだ。鍵閉めてきたから多分大丈夫かと。」
と準備室の鍵を渡した。
「如月1人で行く、危なすぎる。剣道部の練習メニュー、素振りランをしながら辺りを回る。」
幸太朗が難しい顔をしながら言った。
脳内を竹刀を振りおろしながら、校庭を走る剣道部員が浮かんだ。見たことがない。
「なんだ?素振りラン?そんな練習メニューあるのか?」
「今、作った。新メニュー。」
だろうな。しかしただでさえ目立つ幸太朗がそんな事したら。
「いや、でも犯人が見たら、なんか警戒されないか?」
「俺1人じゃなく、他の部員も連れて近くで素振りラン。全然自然。」
一歩も引かない顔をする幸太朗にそれは不自然とも言いにくい。
「俺、俺はどうしたら良い?」
オロオロしながら細田が聞いてきた。
「んー。今日のバスケ部は?」
「ハッ!多分、体育館だ。」
今のいままでバスケ部を忘れていたらしい。
「その頃、ガタイの良い部員数名を剣道部の近くでランさせるとか、可能か?」
「分かった!なんとかする。」
バスケ部がランしていれば、剣道部の素振りランも紛れるかもしれない。
「約束の17時の剣道部のランは20分前くらいから、バスケ部は10分前くらいから、時間差で、出来るだけ自然にな。私は犯人の指示通りに動いてみようと思う。」
そう私が言うと、細田は頷き、鼻をかんでティッシュで涙を拭くと
「如月、雛ちゃんを頼んだ!」
と言って理科室2を出て行った。幸太朗はぐずぐずとそのまま残りたがったが、素振りランの手配があるだろうと諭すとしぶしぶと振り返り振り返り武道館へ向かったようだ。
さてと。
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