第68話 雨の中の下校
この1週間の間、バス停まで森田さんが1人になりそうな時は細田や幸太朗が付き添う事があった。
今日は徒歩通学の私が森田さんと先に一緒に歩いていき、後から自転車通学の細田や幸太朗も追いついてそっちを回って帰るという話になった。
私はA1高校から徒歩10分圏内に住んでいる。何せ、この高校を志望した理由はうちから近いからであった。幸太朗も同じ小学校、中学校出身だからわりと近くて徒歩20分圏内くらいだが、自転車通学している。間中は駅まで歩いてそこからの電車通学、細田は自転車で30分くらいかかると言っていた。
細田達は昇降口で雨を眺めて騒いでいた。
「間中〜俺達、チャリだからレインコートなの!チャリんとこまで傘に入れてー」
「巨大な細田さんと幸太朗と3人でこの傘に入れるわけないでしょ!濡れて行くか、理科室の傘借りてきて下さい!」
雨がしとしとと降っていてどうしても傘が無ければというほどでは無かった。だからか
「「やだー」」
と細田と幸太朗は言って間中の傘に無理矢理身体を寄せて入って強引に自転車置き場へ誘導していた。
「あっ、俺は自転車置き場、関係ないんですーー!」
間中が悲鳴をあげていたが2人には敵わないようだった。
私達女子は2人でまったりと傘を差し、校門から少し離れた森田さんの家方面へ向かうバス停へと歩いた。
「仲良いね。科学部。本当にいろいろ有り難う。それでね、あと2日で夏休みでしょ。夏休みがあけたら、さすがに自転車通学に戻れるかなって思うんだけど、どうかな?」
「バス通学は不便ですか?」
「んー自転車で20分くらいなのにバス代がもったいないかなって。自転車漕ぐのも結構好きだったりするんだよね。あ、自転車はしばらくお母さんのを借りようかなって。見た目変えれば私のって分からないかなぁって。」
「確か、高校に自転車通学って申請して、ステッカー貼りますよね、高校名の。」
「うん、担任の先生に話して新しいの貰うよ。」
校門を出て歩道を並んで話しながら歩いてると、前から黒いレインコートの人が走ってきた。傘をさして並んでいる私達は幅をとっていた。雨の日にランニングだろうか、と私が森田さんの後ろに回って一列になって避けようとした時だ。
キラッと光るものが目に入った。
刃物?
森田さんが危ない!
そう思った。咄嗟に傘を黒レインコートの人に向かって投げ捨て森田さんの下半身に覆いかぶさった。
刃先が見えた。
危ない!
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