第55話 細田は気になる 7/2(土)
「こっち2台まで入れます。どうぞ」
「今から2台、黒ボックスカーと赤の軽行きます。どうぞ」
「前、満車になります。裏あと何台行けますか?」
「おーい、幸太朗?応答願います。幸太朗?おーい?」
「裏は幸太朗だけか?誰かいないのか?」
「あ、あー代わりました。幸太朗は蝶々追いかけてそのまま姿消しました。」
「何?幸太朗!君、1人で大丈夫か?」
「あ、写真部三谷です。頑張ります。あと10台くらいはいけますね。まあ、もうピークは過ぎましたよね?」
写真部から3人と科学部から3人、今日A1高校で10時から行われる「大学受験保護者説明会〜現役合格を目指して 有名予備校塾長 駿河先生をおよびして」のために駐車場の誘導係として働いている。ご苦労様だ。
私、如月明は一応、部長として部員監督のために休日であるにも関わらず、登校して理科室2に待機している。誰も褒めてくれないが、部長の鑑だと思う。10時半頃、そこに幸太朗、間中、細田が戻ってきた。
「ご苦労であった。11時半閉会予定であるから、11時20分にはまた持ち場に戻ってくれたまえ。これは、教頭先生から差し入れのスポーツドリンクだ。保護者の車が出払って仕事が済めば、お弁当も出るらしいぞ。」
暑かったのであろう。スポーツドリンクをわれ先にと取ると飲み出した。
「はー生きかえる!てか、幸太朗、お前蝶々って何だよ!」
と細田が怒り出した。
「蝶々?」
聴くと、
「幸太朗が任務途中で蝶々捕まえに消えたって三谷くんから聞いたんだよ!」
「オオムラサキを見かけたんだ。いくだろ」
や、それは無理があるだろう。せいぜいアゲハじゃないか?と突っ込みそうになったが意外に細田は
「あっいくな。じゃねえし。いや、如月!」
すっと納得し急に矛先を私に向けてきた。
「今日は事件の手伝いかと思ったら、誘導係じゃねーか!しかも間中が犯人はもう分かってるとか言うし、俺、何で知らないの?」
なんででしょう。
「トランシーバーを使わずに事件解決しましたって教頭先生に言ったら、使わさせてあげるよって。」
まず、それが誘導係をやる事になった理由で、
「細田が知らないのは何でだ?」
と間中に問えば、
「細田さん、総体頑張ってましたから。バスケ部県大会出場おめでとうございます!!」
「おめでとう細田!」
間中と幸太朗と3人で手を叩いてお祝いすると、
「あ、ありがとう」
半ば照れながら答えてからはっと我に帰った細田は
「騙されないからな!全部教えろ!」
わめいた。
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