第54話 細田は総体に励んでいた7/1(金)放課後

 例の事件は側からみれば有耶無耶うやむやに解決した。鈴木一真先輩はスクールカウンセラーに通い、教頭先生の指導のもと三年生であるが、写真部に入ったという。指導というか監視されているようなものかもしれないが、「自棄を起こさないようにしたい。ちゃんと卒業させてやりたい」と教頭先生は言っていた。


 今日は幸太朗は剣道部だ。静かな理科室2は大変居心地が良く、お茶も美味しく、溜まっていた数学班の実験テーマの方を整理、


「如月ー」


勢いよくドアがガタンと開けられ、水筒をひっくり返しそうになった。


「俺さ、バスケ忙しくて手伝えてなかった!まだ解決してないんだろ、明日、土曜日はさ、部活無いから手伝うよ!なんかない?」


例によってバスケ部の練習の途中で抜けてきたらしい細田が汗だく半袖短パンで立っていた。


「明日な、やることね、ないこともないが。また部活の途中で抜けてきたのかの?SNSで連絡してくれても良かったのだぞ」


というと、


「いやさ、ランしてて、急に明日部活休みだー、科学部手伝えるって思いついちゃったんだよ。何時に来れば良い?」


また、ランに戻るのであろう。その場で足踏みランニングに入り始めた。なんとも忙しないせわしない奴だ。


「9時かの。」


「オッケー。じゃな。」


ドアも閉めずに走っていってしまった。開けたものは閉めようね。しかし、細田が来てくれるのであれば、私は立たなくても人数的に足りそうであるな。よし。



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