第47話 間中の報告

 書道部からの帰り道、理科室4、間中のいる化学班を訪ねた。一年生2人と間中が実験机上にバットを並べてガラス片を分け終えた所であった。


進捗しんちょくはどうかの?」


と声を掛けると、


「あのですね、ズバリ、これ理科室のゴミでした。」


と意外な答えが返ってきた。


「ん?間違えて理科室のゴミを解析してしまったのかの?」


「いや、これがばら撒かれていたのを回収した奴なのは間違いないんです。ばら撒かれたのは理科室の割れたガラスゴミだったって事なんです。」


バットの中を覗くと白い目盛りが書かれていたり、覚えのある丸みや注ぎ口、透明具合。


「これは、メスシリンダー。」


「そうです。これなんかロウトの先だし、これはホールピペット。」


「なんてことだ!玉入り冷却管まで!」


 理科室4のガラス用ゴミ箱を覗くと空になっていた。いつもはある程度溜まるまで放置されている。時々化学の新川先生は中から拾って直せないかチャレンジするくらいだからすぐには捨てないのだ。


「新川先生に確認取らないとですがね、最近、こいつが玉入り冷却菅割ってますし、見覚えあるガラスゴミのラインアップですから」


こいつと指刺された一年生はペコリと頭を下げて、


「新川先生呼んで来ます。」


と出て行った。


「一体なんの目的で」


呟きながら間中は腰に手を当ててガラス片を睨んでいた。


「犯人が文化祭をめちゃくちゃにしたいのであれば、誰かにガラス片でケガして欲しかったのであろうな。」


ガラス片を見るとわざと細かくしたようなものもあった。ばら撒いて踏んだんだろうなぁ。撒かれてた場所は体育館わきの自販機の側。人目につかないけど、誰もいかないわけではない絶妙な場所だ。


「整美係はなんと?」


間中に聞くと


「びっくりして箒で集めて、この不燃物の袋に入れて、たまたま近くにいた多賀先生に報告したそうです。で、普通に不燃物ゴミ倉庫に置くように指導されたって。あの生徒指導、いい加減だからな。深く考えもしない。あ、ボイレコはこれです。」


 白衣のポッケからボイレコを出してきたので、受け取った。


「所で、整美係って何人くらいいるのかの?」


「あ、聞いたのはガラスを集めた人なんで、2人ですけど、文化祭整美係は6人ですね。」


「意外と少ないな。ゴミ集めたり、監視したり、結構大変だろうに。」


「教室棟に2人、体育館と武道館に1人、広場第二ステージに2人、特別棟に1人と責任者として置いてますね。あとは友人に手伝ってもらったりしてるみたいです。」










 




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