第28話 まずは
「まずは犯人は吹奏楽部2年生全員だ。」
「あいつら、全員?グルだったのか?」
細田と安積さんは知らないわけだから、きちんと話さなければなるまい。
「1年生と2年生で事件前、テスト前最終部活日の鍵当番の入れ替えがあった。本当は1年のリーダーが任されていたのだが、間際になって2年のチューバの子が楽器を清掃していてピストンのネジが開かなくなったと騒いだ。そのため、2年生が残るからと1年生は帰されたんだ。3年生はもとよりさっさと帰っていたから知らない。その騒動について2年生は誰も語らず、さも2年生のリーダーが1人で1年に代わって閉めたように装った。」
「ああ、覚えている。1年の子が自分が当番だったのだが、閉めずに帰った理由を語っていた!」
「鍵当番の他残っていたチューバの1年も手伝おうとしたが開けるのに便利なビニール手袋が見つからず、まあ、予め隠したらしいが、大丈夫だから帰れといわれたと。2年生全員その時残っていたから悪いような気もしたが居づらくもあり帰ったと言っていた。そして残った2年生は目立たない下準備だけをして帰った。ティンパニのネジを外す、楽器ケースの持ち手を外す、マミュマミュを持ち帰る。楽譜もばら撒く分をまとめておいたはずだ。あとはリードを集める。」
「下準備だけなのか?その時全部してしまったのではなく?」
「部活停止期間の間に誰も音楽室に入らないとは限らない。目立った状態にするわけにはいかない。第一発見者はあくまで部長にしたかった。」
「とするといつ決行した?」
「5月27日木曜日あの事件発覚当日の朝だ。学校が開くのが7時。部長が来るのが7時半。その30分の間に音楽室に忍びこみ、楽器ケースの持ち手を目立つ所につるし、楽譜をばら撒き、紙粘土細工を置いた。それはパーカスとコントラバスの2人でやったらしい。」
「待って。フルートが何の被害も受けてないのはなんで?」
「フルートには2年生がいないんだ。辞めさせられてるからな。しかもフルートは皆、楽器が自前で持ち帰っている。楽譜もフルートパートがどこに保管しているのか2年生は知らなかったんだ。しかもこれで、部長と副部長が仲違いすればそれでよかったんだ。」
「鍵問題は?盗んだとかなの?」
「あーそれは戸村先輩が蟹江先輩を連れてきてくれて判明した。」
「戸村先輩!来てたの?呼んでくれれば良かったのに。」
細田が度々口を挟んでくる。間中はのんびりと折り紙を始めていた。ここ理科室2には間中が部費で買った折り紙があり彼はただ今ユニットを組んで作る造形物に夢中だ。いや、間中何故帰らない?
「かき氷は美味であった。」
思わず漏らすと、
「くそっ、安積に監視されてなければ。てかおい、幸太朗、お前は戸村先輩が来るかどうか事前予告で知ってんだろ、何で知らせない!俺に。」
細田が幸太朗にいちゃもんをつけた。幸太朗は鹿の剥製をブラッシングしていた。幸太朗、お前も何故帰らない?
「細田、話が逸れてる。俺は、鍵の続きが聴きたい。」
安積さんが監視云々をスルーして先を促してきた。
「あ、鍵ですね。実行犯がパーカスだと言いましたよね。実はパーカスだけが知ってる外れるドアガラスがあったんですよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます