第9話 門田亜佑美
まず初めに吹奏楽部部長にして第一発見者の門田亜佑美から話を聞くことになった。170近いのではないか?背が高く、痩せ型で髪を後ろに一つ結びした真面目で地味な感じの女子がひそりと約束の時間通りに現れた。
隠しカメラを忍ばせた物理室こと理科室1の机に彼女を間中が物腰柔らかく案内して、細田が丁寧にお辞儀しながらイケボで、
「ご協力ありがとうございます。」
と微笑んだ。先輩といえど、細田の破壊力に顔を赤らめながら
「いえ、科学部が解決に動き出したって聞いて部員全員喜んでいますから。なんでも聞いて下さい。」
《はい♡細田さんと話せるって聞いて部員全員喜んでいますから。スリーサイズだって答えます。》
勝手に隣で翻訳し始めた幸太朗はほっといてマジックミラー越しに様子をうかがった。
「門田亜佑美さんですね。亜佑美先輩ってお呼びしても?」
「あ、なんか年上感が増しちゃうので亜佑美さんでお願いしても?」
「わかりました。亜佑美さん。部長なんですね。第一発見者だと伺いました。三年でも1番に来られるんですか?」
滑らかなすべりだしだ。さすがだ細田。
主な質問はアリバイと自身が受けた被害と犯人の心当たりだ。門田亜佑美は生徒会や先生に事情を説明したせいか淀みなく答えていった。
朝一番に特別棟の鍵を守衛が開けてくれるが、音楽室、楽器庫は顧問が来なければ開けられない。あと鍵があるのは職員室だけだ。それでは不便だということで土日やコンクール前など必要がある時は部長が顧問から鍵を預かる事が慣例になっていた。この土日は本来は定期テスト前のため、部活休止期間であったのだが、
「私、うっかりして借りちゃったんです。文化祭も近いし、気合い入ってしまってたみたいで。」
部長は鍵を顧問から借りたままでいたらしい。テスト最終日は職員会議があったため、部活再開となった5月27日(木)の朝、鍵を使って開けた所、悲惨な状況を発見したとの事だった。
被害にあったのはリード四本。それも全て良い音が出るリードだったので、また一から探さなくてはならないと悔しそうに答えた。マミュマミュ様の被害は恐ろしくて泣いてしまったらしい。マミュマミュ様は普段は楽器庫のティンパニの近くの棚の上に祀られており、もともと何代か前のパーカスの部員のお土産で、県大会突破の悲願を成し遂げてからは大事にしてきたとか。
吹奏楽部内の揉め事は自分の責任なので、いつも公平に対処しているはずだと言い、強豪校のため他校の吹奏楽部からなら恨まれていてもおかしくないと他校の嫌がらせではないかと部長は自身の考えを述べていた。
「完璧だ。応答はうまいし。」
うーむと私が唸っていると、幸太朗は
「俺、嫌い。ああいう人。臭い。」
とただ好き嫌いとか匂いとか。幸太朗は食べ物の匂い以外は全部臭いんだろうな〜と思ってちょっとげんなりした。
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