泡沫
相田田相
第1話 プロローグ
もうじき朝露が消えゆく時間、〇〇〇は鏡のような池で泡沫を作った。
令和史最大の凶悪事件と謳われた村民殺害事件の犯人逮捕!!
通称 Xの虐殺と呼ばれている令和史最大の凶悪事件は1人の優秀な警部によって、幕を閉じた。容疑者は〇〇〇〇という男で……
この家のルールとして朝食時は新聞を読まなければならない。
だからそんな記事を半ば受動的に読む羽目になっている。
新聞を片手間に父の作る味噌汁と目玉焼きとウィンナー2つをペロリとたいらげ、すぐさま学校へ行く身支度を整える。
このとき、父との会話は学校についての業務連絡以外なにもない。
そればかりか1日の会話はそれで始まりそれで終わる。
父とはそれくらいの距離感なのである。
私が反抗期だからという訳でもなく、特別仲が悪いわけでもない。
ただ父は母の事故死をきっかけに、心に大変大きな風穴が開きその穴で感情が乱反射している人間へと変貌してしまった。
だから下手に喋りかけようものなら、父は父ではなくなる。
それは何も家庭だけの話ではなく、会社でもこんな調子でやってるそうだ。
これに対し天国へといち早く向かった母は相当に憤慨しているのだろう。
と想像を膨らませながら家を後にする。
もうじき冬が猛威を奮う、そんな予兆を感じさせる少し肌寒い外界。
リア充たちは朝っぱらから本能全開でイチャイチャしている。
あれは他人に自分が如何に価値のある人間なのかを伝え、ハブられないようにしているようにしか思えない。
私は卑屈で下劣な人間だと自負しているが、これだけは正論だと自信を持っている。
こうやって惨めさを隠し自我を保ちながら、学校に到着する。
学校について1番最初にやることは狸寝入り。
こうしていれば、ぼっちではなく眠たい奴という認識が定着する。
だろうという私に都合のいい考えで、このようなことをしている。
ただ大抵は、狸寝入りを初めて10分くらい経つと……
「おい!中村、ちょっとこい!」
クラスのカースト上位の女子グループを統括している石田とかいう奴から毎日こうお呼ばれを喰らう。
そして無視すると私はその1日、クラスの女子全員から無視される羽目になる。
あいにくさま私を助けてくれるような超絶善人もいないため、否が応でもついていかなければいけないという仕組みになっている。
日本じゃなくて生まれが自由の国アメリカであれば、こんなに周りの目を気にせずにすんだのかなと日本に生まれたことを後悔することもよくある。
「は、はい」
そう言って石田について行く。
そしていつも通り、彼女のストレス発散の糸口にされる。
大量の罵倒とパンチと蹴りを受ける。
これが生まれた代償なのだと自分を慰めながら、毎日これを受ける。
ひたすら受ける。
しかしそれが終わると、あとは平穏な学校生活を送れる。
だから私は反抗しない。
もちろん友達や話せる人はいないから、悲しい日々であるのは事実だけど。
そして家に帰れば死んだような父がいる。
なんで私をこの世に存在させているのか神様と議論してみたいものだよ。
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