同じ冒頭からどう発展するか、検証してみた。
「すっ……捨て勇者、だと!?」
薄暗い森の中で、魔王はおののいた。
金髪の子供が籠に入れられて、捨てられている。
そのステータスには、『勇者』と明記されていた。
魔王は震えた。
この子供を捨てたのは、あの女だ! あの女が、子供を森に捨てたのだ!!
だが……なぜ? いや、そんな事はどうでもよかった。
問題は自分がその女を逃がしてしまった事だった。
「クソがああああ!!」
魔王は叫びながら、剣を振り下ろす。
地面から生えた木が、子供に向かって襲いかかる。
しかし、その木は子供の身体に触れる前に弾け飛んだ。
「なにぃ?」
魔法を使った様子はない。
ありえない事態に動揺する魔王の前に、一人の男が姿を現した。
真っ黒な肌をした大柄の男が二本足で立ち、右手に大きな戦斧を持っている。
そして額からは一本の長い角が伸びていた。
鬼人族と呼ばれる種族である。
「なんだぁ、お前ぇ!」
「私は魔導王に仕える者なり」
「魔導王?」
「貴様のような下衆の命など取るにも足りぬが、邪魔をするなら殺す」
「ほざけ!」
魔王は再び木を生み出し、それを男に向けて放つ。
男は巨大な戦斧を振るう。ただそれだけで、木は粉々になった。
「我が名は『鉄塊兵団団長・マサムネ』!
我が同胞を手にかけた罪、死を持って償ってもらおうか!!」
そう言うと、マサムネと名乗った男の体が膨れ上がった。
筋肉が膨れあがり、衣服を破り捨てる。
現れたのは、鋼鉄のように鍛えあげられた肉体であった。
「……まさか、オーガ種か!?」
魔族は人型に近いほど魔力が高いと言われている。
もちろん例外もいるが、目の前にいる男は明らかに桁違いの力を持っていた。
しかも、オーガ種は知性が低く好戦的で知られる魔物である。その戦闘能力は非常に高いと言われていて、冒険者で言えばAランクに相当する強さを持つと言われていた。
魔王はその事実に愕然とした。確かに自分の力は強い方だろう。
S級の強さはあるかもしれない。
しかし、相手が悪い。自分は戦闘向きではない。
魔王は自分の不甲斐なさを呪いながらも、赤ん坊を抱えて逃げることを選択した。
「こんなところで、死んでたまるかぁっ!」
何が何でも逃げなければならない。
魔王の後ろから声がかかる。
「誰が逃すか!」
振り向くと同時に、巨木を召喚した。
どれだけ太い木でもマサムネの腕に触れた瞬間、木端微塵にされる。
絶望的な状況だ。他のオーガも次々と現れ、いつの間にか回り込まれていた。
まるで瞬間移動でも使ったかのような速さだった。
「どけっ!!」
魔王は闇魔法を放つ。上級魔法に分類される強力な攻撃であるが、マサムネは顔色一つ変えずに受け止めた。
「無駄だぁ!」
そのまま投げ返され、闇の光線が魔王を貫く。
血反吐を撒き散らしながら、魔王は倒れた。
「さあ、その子を渡してもらおう。
そうすれば、これ以上は何もしない」
マサムネの言葉を聞きながら、魔王は思った。
なぜ、この俺が負けるのだろうか。
どうしてこうなってしまったのか。
生まれてすぐに捨てられ、拾われてからも奴隷同然の扱いを受けた。
勇者として担ぎ上げられそうになった時もあったが、結局は捨てられた。
「俺はなんのために生まれてきたんだよ……」
この言葉を最後に、魔王はこの世から姿を消した。
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