第11話 過去
茂木莉奈はボクの腕に体を当てて安心しながら泣いている。
彼女とは昔会ったことがあったか?
実は俺は昔の記憶があまりない。
昔はやんちゃでバスケ大好き少年だったと母さんから聞いたことがあるが、全く覚えていない。
それは中学生の頃の事故が原因だった。
♢♢♢♢♢
13歳、ボクが中1だった頃…
「おいミオ〜!頑張れ〜!」
「よ〜っし!みんな上げていこう!」
その時は区大会の試合真っ只中だった。
決勝を逃し、3位決定戦をしていた。
残りは1分と30秒、その時に事故は起こった。
9対5で、4点分こちら側が優勢だった。
ボクがゴールを決めようとした瞬間、ボクは記憶が途絶えた。
♢♢♢♢♢
何が起こったか…
ボクはその時、何もかもを忘れていた。
わかることはここが病院だということ、それくらい。
「看護婦さん、ボクはなんでこんなところにいるんですか?」
「……それはね………」
話は少し濁されながらも、少しわかった。
バスケ少年なボクはバスケの区大会の途中で、ゴールを決めようとした瞬間バスケットゴールが頭の上に落ちてきたらしい。
試合は中断、頭から血を流し倒れているボクはすぐに病院に運ばれたらしい。
幸いボク以外に怪我人はなかったものの、ボクはバスケができないと言われた。
家は貧乏で、母親は入院費用を貯金から切り崩して払ってくれた。
ボクは変わろうとした。
ボクのためにバスケに専念できるように色々なことをしてくれていた母親、
覚えていることは何もないが看病しにきてくれた時の母親を見ていると察しがつく。
少し不安げな顔に作り笑い。
事故が起こる前は一人称は俺で、バスケ少年で活発な子だった。
今では、一人称がボクで、少し陰気な子に…
♢♢♢♢♢
父親は一度も看病にこなかった。
ボクが事故で入院してから数日のことだった。
父親は貧乏に耐えられなくなり、いつのまにかいなくなっていた。
父親がいないと母親は離婚ができない。
3年間待つしかなかった。
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