第59話 護衛

「しかしお前達は強いな」


「いや、王女様も大したものだったよ」


聖王女にため口で返すと、アッシュの目つきが少し険しくなる。

敬語を使えと言う事なのだろうが、俺は別にこの国の国民でもなければ配下でもない。

なので気づかないふりしてその非難気な視線を無視した。


「これでも聖王国一を自負していたのだが。世の中上には上がいる物だ」


これは俺だけではなく、ポーチにも向けられた言葉だ。

俺の後に、彼女も聖王女と一勝負していた。

当然勝敗はポーチに軍配が上がっている。


だが勝敗は兎も角、実際問題聖王女の実力は大したものだった。

幻術系のスキル無しとはいえ、ポーチ相手に彼女は善戦して見せたのだ。

弱めの最上級モンスター相手なら、1対1でも余裕で戦えるぐらいの実力はある。


その強さは、誇張抜きで聖王国一と言って差しさわり無いと言えるだろう。

ひょっとしたら、人類一まであり得るかも。

正に女傑と呼べる人物だ。


おっぱいも大きいし。


「さて、お前達は哭死鳥に狙われている訳だが。出来れば囮を務めて貰いたい」


「ああ、構わないぜ」


こっちとしては、哭死鳥を黙らせられればそれでいいのだ。

国が動いてくれた方がその辺りはスムーズに進むだろうし、断る理由はない。


「それに当たって、私の配下2名を君達の護衛に付けよう。まあお前達に護衛が必要かは疑問だが、念の為だ」


王女がチラリとアッシュを見る。

二人ってのはたぶんグレイスモヒカン兄妹の事だろう。


「お前達には二人と組んで、冒険者として危険なクエストを受け続けて貰う」


「分かった」


ホームとはいえ。

いやホームだからこそ、哭死鳥は街中では堂々とは動けない。

強盗するのに家の近所を狙わないのと同じ理屈だ。


相手が動き辛いというのなら、あえて人目のない危険な場所に向かう事で動きやすくしてやる。

そう言う作戦だ。

勿論そんな事をすれば囮のリスクはかなり高くなってしまうが、俺とポーチ。

後オマケのモヒカン兄妹ならどうにでもできるという、聖王女の判断だろう。


実際俺一人いれば相手が何人いようと敵ではないので、基準は兎も角、その判断自体は正しいと言える。


「本来なら外部の人間を危険に巻き込む事など避けたいのだが、この国は腐っているのでな。お前達の力添え、感謝する」


そう言うと彼女は頭を下げた。

良い角度だ。

胸元のラインがそれ程深くはないのでぽっちこそ見えないが、運動後の桜色に染まった胸元は素晴らしい。


しかし、腐っている……か。


まあ賄賂であっさり入国できた辺り、そういう事なのだろう。

ダリアとの不仲もその辺りが関係していそうだ。


「では、私は所用があるのでこれで失礼させて貰う。後の事はアッシュに聞いてくれ」


そう言うと聖王女は俺達が入って来た方向とは真逆へと去って行く。

彼女の気配が遠ざかり、姿なき護衛達の殺気も消える。


「おいおい勘弁してくれよ。冷や汗ものだぜ、全く」


戦闘後、あからさまに護衛達の殺気は俺に向けられていた。

どうやら溜口が気に入らなかった様だ。

まあ俺はそんな物、気にも止めはしないが。


「陰でこそこそ隠れてる様な奴らの事なんざ、一々気にするかよ」


「いくら何でも肝が据わりすぎだろ?」


残念。

肝が据わっているのではなく、俺の場合は肝が腐っているが正解だ。

半分ゾンビだしな。


「お前さんの実力は認める。けど流石に聖王女の親衛隊相手じゃ、分が悪いぜ。長生きしたいんなら、もう少し謙虚に生きた方が良いぞ」


護衛の気配は全部で12だった。

仮にもし全員王女並みの実力があったとしても、俺の敵では無いだろう。

どうやら人間であるアッシュにはそれが分からない様だ。


そもそも謙虚に生きるも何も、俺は半分死んでいるのだ。

今更謙虚も糞もあった物ではない。

好きに生きさせて貰う。


おっぱい最高!

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