第12話 ワイルドベアー
ワイルドベアー。
それはベアー系列の、上級モンスター。
キティベア。
アタックベア。
ワイルドベアーの順に進化し、最上級クラスはゴールデンベアーと呼ばれている。
戦闘方法は主にパワーを生かした打撃や突進、更には鋭い爪による引き裂きや強靭な顎によるかみ砕き等々。
正に脳筋の鏡の様なモンスターだ。
ワイルドベアーは全身灰色の硬そうな毛に覆われていおり、その体高は優に2メートルを超え、立ち上がれば4メートル近くに達する巨体を誇っていた。
見た目に関しては大型の熊とそこまで大きく変わらないが、モンスターである限りその強さは一線を画す。
「ポチ!下がってろ!」
ポチも相当強いが、流石に相手が悪すぎる。
なので俺は後ろに下がるよう指示をだした。
ちゃんと聞いてくれればいいのだが……
「わぉ!」
ポチの返事が遥か後方から聞こえて来る。
どうやら俺が指示するよりも早く、危険から遠ざかるべく後方に下がっていた様だ。
野生の本能から彼女もワルドベアーの強さを察し、俺に丸投げする事に決めたのだろう。
頼むから人に散々削らせて、
流石に泣いちゃうぞ?
ワイルドベアーは巨体とは思えない機敏さで木々の間をすり抜け、グングンと此方へと迫ってくる。
巨体からくる圧倒的パワーとこの機敏さ、真面にやったのでは当然勝ち目はない。
だが幸い動物系は炎魔法に弱い傾向にある。
そして俺は不滅。
つまり――
リポップ祭り開催じゃい!
不滅の火炎砲台の恐ろしさをその身に叩き込んでやるぜ!
「炎の精霊よ!我が願いに答え、敵を焼き払え!ファイヤー!」
俺の手から炎が噴出する。
火炎放射器の様な物をイメージして貰えれば分かり易いだろう。
ちょっとした小動物なら、一瞬で火達磨になるレベルの火勢だ。
因みに、森の木は俺のファイヤーを直撃させても全く燃えなかったりする。
乳神様曰く、木は進化の過程で炎魔法に対する超強耐性を獲得しているそうだ。
その為、俺のへなちょこ魔法程度では表面を焦がすのが精々だった。
異世界恐るべし。
因みに……
何か因みにが多いな。
まあいいや。
因みに木材は普通に燃える。
これは耐性が構造上の結果ではなく、スキルである為である。
そのため、死んだり切り離されるとその効果が失せてしまうのだ。
以上。
乳ペディア参照。
「ぐぉぉぉぉぉぉ!!」
俺のファイヤーが
が、奴はそんなものお構いなしに俺に体当たりをかましてきた。
――ほげぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
叫んだつもりだったが、声が出ない。
それもその筈、体当たりの衝撃で全身バラバラ粉砕のミンチ状態になってしまったからだ。
なにこれ!
幾らなんでも強すぎない!?
喰らえば
攻撃も炎が奴の毛を少し焦がしただけ。
一体何百発撃ち込めばいいんだよ!?
勝てる気がまるでしねぇ。
完全に舐めてた。
唯一の救いはレベル差が大きく離れている為、俺がやられても奴に経験値が殆ど入らない事位だ。
ここから戦いながら成長とかされたら、マジでシャレにならない所だった。
いや、現状でもマジでシャレにならないぐらい倒すのに時間がかかりそうではあるが……
とりあえずリポップする。
だが次の瞬間、奴の剛腕により俺の体が粉砕されてしまう。
正に瞬殺。
魔法を唱える隙がまるで無い。
何度かリポップするが、その度に即ロストさせられる。
こりゃ駄目だ。
やってらんね。
放置だ放置。
とりあえずポチの逃げる時間だけでも稼ぐとするか……
そう思い見ると、ポチの姿は最早影も形も見当たらなかった。
どうやら、もうとっくに逃げ出してしまっていた様だ。
その証拠に。熊はその場から全く動かない。
しかしあっさり見捨てていきやがったな、ポチの奴。
いや、別に逃げてくれてもいいんだよ。
実際逃がすつもりだったし。
でもこれまで一緒にやって来たんだから、もうちょい粘ってくれてもいいと思うんだがなぁ……
まあポチも、俺が死なないと分かっての行動だろうとは思う。
だから本気で俺を切り捨てた訳でないのは分かる。
分かるが、早々に置いて行かれるのはやはり少々物悲しく感じてしまう。
そんなどうでもいい事を、俺はうじうじうじうじと考える。
やる事ないから。
きっとこんな性格だから俺はモテないのだろう。
…
……
………
…………所でいつまでいんだよ、こいつ?
どうでもいいネガティブな事を考え続ける事、はや数時間。
何故か
気のせいだろうか。
その目は常に俺を見据えている様に見えた。
……え?マジ?
もしかして見えてらっしゃる?
嘘だよね?
見えていたらシャレにならないぞ!?
リポップあれだし!
リポップポイントは、病院に提示する保健証宜しく、1カ月単位で勝手に更新されてしまう。
その為使っていないポイントへのセーブは、1カ月で勝手にロストされてしまうという恐ろしい仕様があった。
そして通常の狩りならその場でリポップすればいいだけだと高を括っていた俺は、このひと月以上セーブの更新等行っていない。
つまり――リポップは此処でするしかないという事だ……
ざっけんな。
マジで勘弁してください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます