チュートリアル
第1話 ゾンビ
ゾンビの夜は早い。
日が沈むと同時に獲物を求めて彷徨い出す。
「ヴォエヴォエ(ふぁ~あ。良く寝た)」
欠伸と共に起き上がり、俺は瞼を擦る。
まあ無いんですけどね、瞼。
なので眼球ごしごし状態である。
ああ、別に遊びでやっている訳じゃないぞ。
生前の習慣というのは中々抜けない物で、やる必要も無いのに思わずやってしまうのだ。
因みにアンデッドは基本眠る必要が無かったりする。
寝た所で、整える体調など無いからだ。
もう死んでるわけだし。
そう、常に絶不調!
それがアンデッド!
ではなぜ俺が寝っていたのか?
それには2つの理由があった。
一つは、日の出ている時間帯だとアンデッド系はステータスが下がってしまうからだ。
それでなくてもゾンビは弱い。
そこから更に弱ってる状態でうろついて等いたら、冒険者に美味しく狩られてしまうのが目に見えている。
だから暇潰しがてら寝ているのだ。
起きててもやる事ないし。
まあ別にやられても直ぐリポップできるから、デメリット自体はほぼ無かったりするのだが、俺を倒す事で他の誰かが楽して経験値を取得するのが気に入らないので、昼間は隠れてお眠している。
自分が必死こいてレベル上げしてる横で、楽して経験値を稼いでる奴いたら腹立つよね?
つまりはそういう事だ。
そしてもう一つの理由なんだが……それはおっぱい。
じゃなかった、女神様と会うためだった。
女神様は時々俺の様子を見に、夢の中に現れてくれる。
そのふくよかな胸は、南国の果実を思わせるかの様に艶やかであり。
その豊かな膨らみには世の豊穣が詰め込まれ。
その母性の象徴たる双丘は、未来への希望を思わせた。
つまり――とにもかくにも胸がでかいのだ!
正に問答無用の破壊力!!
え?顔?さあ?
胸しか見てないから良くわかんないや。
まあとにかく、デカ乳女神がいつ現れてもいい様に、俺は夢の中でスタンバっているという訳だ。
「あーうーーー(はぁ~、やる気でねぇなぁ)」
これから狩りに出かけるのだが、余りテンションが上がらない。
理由は至って単純。
ここ数日、夢の中に乳神様が姿を現してくれていないからだ。
あれを拝まない事には、やる気が出なかった。
だがまあ仕方ない。
今のままでは永遠にゾンビを続ける事になってしまう。
それは嫌なので、俺はだるい体を引きずりながら日課の狩りへと出かける。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ヴァラアアァ!!」
小汚い雄叫びと共に、俺のラリアットがスケルトンの頸椎をへし折った。
間髪入れず、俺は転がった奴のしゃれこうべに連続スタンプをかます。
ここまでくれば俺の勝ち確だ。
しばらく続けると、ベキョリと鈍い音を立てて頭蓋骨が陥没し討伐が完了する。
「ヴォエヴォヴァァ!(俺の勝ちだ!)」
長くつらい戦い。
6時間という激闘を制し、俺が興奮してガッツポーズをとっているとレベルアップの音が脳内に響いた。
あれ!?
予想外のレベルアップで、俺は思わず首を捻る。
最低でも、スケルトンなら後2体は狩らないとレベルアップ出来ない残り経験値だったはずなのだが……どうやら今回のスケルトンはユニークスキル持ちだった様だ。
どうりで手こずる筈だ。
「おーおーおー!(お、レベルが3つも上がってる!やったぜ!)」
ステータス欄を確認すると、俺のレベルが5から8に一気に上がっていた。
正にユニークスキル様様である。
狩るのは初めてだが、これは出鱈目に美味い。
――ユニークスキル。
それは生まれ持った能力であり、レベルアップ等で習得できない強力で特殊なスキルの事を指す。
ユニークスキル持ちは、通常の個体よりもスキルの分経験値が大幅割増しになる事が多く、どんなスキルを所持しているのかにもよるが、倒せさえするのなら間違いなく
なので乳神様にも、レベルを手早く上げたいならユニークスキル持ちを狩るのが良いよと薦められていた。
まあそんな事言われても、そうポンポン転がってないんですけどね。
ユニークスキル持ち。
なので狩ろうにも狩りようがないのだ。
因みに、俺もユニークスキル持ちである。
所持しているスキルはリポップとスキルポイントだ。
リポップは死んでも任意の場所(事前に登録しておく必要あり)で即復活できるスキルであり、俺はこのスキルを駆使して狩りをしている。
何せゾンビは最弱のアンデッド。
普通に戦ったのでは弱すぎて、まあ勝てない事勝てない事。
その為、俺はやられては直ぐに復活するゾンビアタックで敵を狩っている。
ゾンビだけに!
後、リポップは俺にとって回復も兼ねていた。
何故なら、ゾンビには回復能力が備わっていないからだ。
その為、攻撃を喰らうと回復する事なくそのまま体にダメージが残り続けてしまう。
……冷静に考えて、回復無しとか無体にも程があるぞ。
ゾンビスタートどんだけ厳しいんだよ。
正直リポップが無かったらムリゲー過ぎて、俺は今頃もうとっくに死んでいただろう。
まあスタート時点から既に死んではいるんだどね……ゾンビだから。
そんな事はどうでもいいか。
レベルアップしたので、取り敢えず俺はもう一つのユニークスキルを確認する。
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