4話 ツクモガミ
ツクモガミとやらの画面が切り替わった先では
【衣】【食】【住】
この三つのボタンだけが表記されていた。このワケのわからん画面がフリマサイトだとすれば、これらが売り物のカテゴリになるのだろうか? ずいぶんと大雑把な仕分けだな。
とりあえず【食】ボタンを押してみる。
【食】ボタンを押すとまたしても画面が切り替わり、いろんな食品がずらーっと並んだ。フリマだけあって多種多様だ。そのどれにも商品の画像と出品者、そして値段が書かれている。
それにしてもすげー見にくい。ジュースや酒、菓子類なんかがごちゃごちゃでソートなんかもされていない。せめてもう少しカテゴリ別に分けられているといいんだけどな。
と思った途端、画面が再び切り替わり、新しくカテゴリ欄が作られた。なんだよこれ、俺の思い通りの動くのか?
まあ、もうワケがわからんことにも慣れた。今はあれこれ考えるよりも、このフリマサイトを実際触ってみるのが先だ。まずはなにかを購入してみよう。
今いちばん欲しいのはとにかく食べ物だ。腹は水で満たされているが、水だけでは人は生きていられない。
その辺に草ならいくらでも生えてるけれど、さすがに草を食いたいとは思えないしな。……そこまで追い詰められたら食いそうだけど。
ということで、分類されたカテゴリを調べる。【食品】【飲料】と分かれていたので【食品】をぽちっと。
次はさらに細かく【米】【パン】【肉】【野菜】とずらーっと並んでいる。そのまま食べられそうなのはパンだな。【パン】をぽちっ。
すると、ギフト用と思われる立派な茶色の箱に入ったパンの詰め合わせ、パン屋が通販用に用意しているドーナツや高級そうな食パン、他には某社のパン祭りらしきシールが貼られたシートまで売られていた。こんな物まで売られているのかよ。さすがフリマ。
俺は最初に目についたギフト用のパンの詰め合わせを選択。するとさらに商品の詳細ページが開かれる。
このパン詰め合わせはクロワッサンやベーグルなんかが詰め込まれたもので十個入りで一箱2000Gだ。
Gってなんだ? RPGなんかではギルとかゴールドとか、よく見かける単位だけど。
ギフト用パン詰め合わせか……。普段買ってるようなパンと比べれば高いと思うが、贈答用のお高い品をさらにフリマで売っぱらうのだとすれば、2000円くらいの値段のように思える。だからとりあえず、1G=1円だと思っておこう。
出品者欄にはパンダマンと書かれていた。パンとパンダをかけてるのか? 感謝の気持ちとして贈呈されたギフトを転売しちゃう、ちょいワルなヤツはセンスもイマイチらしい。
商品詳細ページの下の方には購入ボタンがあった。送料なんかは書かれていないが、まあとりあえず物は試しだ。
俺はごくりと唾を飲み込み、その購入ボタンを押し――
ブーと響いたビープ音とともに、画面にメッセージが表示された。
【購入金額が足りません】
「んだよもおおおおおおおおおおおおおおお!!」
あまりのガッカリ具合に思わず大声を上げる。金なんて持ってるわけねーだろ! こちとら素っ裸だぞ!
俺は腹が立つやら悲しいやらで地面をごろごろを転げ回った。あーもう、結局なんなんだよコレ!
そうして感情の赴くままにごろごろと地面を転がり回り、少し息切れを起こして始めた頃――なにやらいい匂いが鼻に届いているのに気がついた。
転がるの止め、寝そべったまま顔だけ横に向けてみる。目の前には緑が濃い三十センチほどの高さの草がにょきっと伸びていた。
首を伸ばして鼻を近づけると、たしかにこの草から匂いがしているように思える。花もないってのに、こんないい匂いがする草もあるんだな。
俺はその草を根本からブチッとちぎり、自分の鼻の近くに持っていく。ああ……いい匂いだ。
イライラしても仕方ない。この草の匂いをかぎながら少し落ち着こう。俺は大きく深呼吸をしながら再び空を見上げると――そこには例のモニターが映し出されたままだった。
結構ごろごろと転がっていたのに、ずっと俺についてきていたのか、お前……。
俺はなんとなしに忠犬モニターに向かって、持っていた草を突きつける。
「フリマなんだろ? 物が買えないなら、せめて出品くらいはさせてくれよ。ほら、パン祭りのシートですら売ってたんだし、俺が草を売ったっていいだろ? へへっ、なーんてな――」
シュッと俺の手元から草が消えた。そしてモニターには
【パピルナ草 5グラム 取引完了→3000G】
え? 草が消えた? っていうか売れた?
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