ぶらり、成田空港

URABE

いつだって、現場は大変


米国便に搭乗する外国人への新ルールがスタートして2日が経つ。現場の混乱を野次馬レポートしてやろうと、遠路はるばる成田空港までやってきた。



成田空港はゴーストタウンと化している。オープンしているのはコンビニとスタバだけ。ショッピングモールはことごとく閉鎖しており、辛うじてTHE NORTH FACEと、さすがは天下の無印良品くらいしか営業していない。


つまり、土産物を買うならコンビニで買っておかなければ、手ぶらで出国することになる。さらにレンタカーやWi-Fiレンタルの店舗も閉鎖しているため、空港に来てから何かを調達しようと思ったらひどい目にあう。




余談だが、アジア系外国人(言語からして中国人と思われる)の若い男子らは、こぞってフェイスシールドを装着している。そしてなぜか空港内のコンビニも、棚を丸ごと使ってフェイスシールドを販売しているのだが、今アレが人気なのだろうか?


都内でアレを見る機会といえば、デパートや病院など不特定多数の顧客と対面する仕事の人が着けているくらいだろう。ところが成田空港にいる中国系男子は、そのほとんどがフェイスシールドをかぶり、ゴーストタウンを得意げに闊歩している。


逆に年配の中国系男児は、防塵マスクのような尖がったくちばしのマスクを着けているが、これもファッションセンスの違いなのだろうか――。




本題に戻ろう。某アメリカ系航空会社のチェックインの様子を観察したところ、興味深い事実を発見した。


他人のチェックイン方法は知らないが、わたしは自動チェックイン機を使う。実際は航空会社のアプリを使い、空港に到着する前にチェックインを済ませることが多い。


しかし紙の搭乗券を発券しておく方が安全なため、初上陸の国へ行くときは空港内の自動チェックイン機またはチェックインカウンターを使うことにしている。


さらに新ルールの施行により、事前にアプリを使ってチェックインしても、再度、チェックインカウンターで書類のチェックと口頭確認が行われるため、どのみちスルーすることはできない。



そしてこの「書類チェックと口頭確認」が、どう考えても非効率的だった。



航空会社の従業員たちはとても頑張っている。だが、従業員の体は一人一つしかないわけで、複数の顧客から一斉に呼ばれれば立往生するのは当たり前。


人の手を借りずにチェックインしようと、マシンを使って手続きを進めていくと、最後の画面で、


「係員にお声掛けください」


というメッセージが表示される。係員が搭乗に必要な書類(ワクチン接種完了証や陰性証明)の確認をしたうえでチェックインが完了するため、ここから先は自力では進めないのだ。


そして係員を呼ぶも、他の顧客の対応をしていれば当然待たされる。カウンターを覗くも、どこのカウンターも顧客対応で余裕はない。さらに書類チェック担当の係員でなければ対応できないので、顧客誘導係に助けを求めてもどうしようもない。


「ゴメナサイネェ、モスコシ、マッテネ」


ガタイのいい男性スタッフが、味のある日本語で慰めてくれる。



これまでの考え方でいくと、この無駄な待ち時間をなくすためには「人員を増やすしかない」となる。だがそれこそが完全なる無駄。つまり既存のシステムを使ってこの事態を乗り切ろうということが、そもそも無理なのだ。


それこそAIを使って証明書の有効性を確認すべきだし、そうでなくても証明書をスキャンして、現場以外の場所で内容確認ができる仕組みを作るべき。そもそも証明書のフォーマットはほぼ定型文化されているのだから、それを読み取る作業などAIの能力で可能なはず。



「えっと、2度目のワクチン接種は〇月×日ですから、2週間経ってますね?はい、ありがとうございます」


こうやって証明書に記載された内容を、一つずつ口頭確認していくのだ。これだって、YesかNoの二択と考えれば人間じゃなくても対応できる。


「検査方法は・・・はい、大丈夫ですね。ありがとうございます」


こうして、ワクチン接種完了証と陰性証明の内容をマニュアルに沿って確認し、内容に問題がなければ係員が承認ボタンを押しチェックインが完了する。


「おつかれさまでした!」


顧客も係員も、両方ともお疲れさまだ。スムーズにいけば一人にかかる時間はおよそ5分程度だが、仮に2回目のワクチン接種から2週間経過していない場合などは、間違いなくひと悶着おきるだろう。



「搭乗便の調整をしますので、2週間経過するまではお乗りいただくことはできません」



こればかりはどうあがいても突破はできない。接種日という動かぬ証拠が記されている以上、係員も見過ごすわけにはいかないし、顧客もそれに従わざるをえない。


結局のところ、米国へ上陸したいならば米国製のワクチンを打つのが早い。無論、例外はある。だが例外を認めてもらうための苦労や手間を考えると、あまり現実的ではないようにも感じる。むしろそこまでして渡米しなければならないのか?という疑問すらわく。



とはいえ、必要書類を有効なフォーマットで用意できれば何の問題もない。税関を通過してしまえば、いつものフライトと同じ。





しばらくの間、この混乱は続くだろう。新型コロナに対する有力な治療薬が承認され、ワクチン接種完了が渡航の条件とならない時代が来ることを、切に願う。

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