大学生な後輩がルームシェアする先輩と
~大学生な後輩がルームシェアする先輩と~
「―――シマナミさん。あなた、今日はなんだか上の空のようね」
「ぁ、ありがとうございます先輩」
湯気の立つマグカップを受け取って、ユミカはにこりと笑みを向ける。
隣に座った先輩にして同居人のシズルは、タイトなパンツに包まれた長い足を組み、コーヒーを味わいながらユミカの顔を覗き込む。
「どうかしたのかしら。
「あー、えっと」
ユミカは言葉を濁して、熱々のココアでちょっぴり舌先をやけどする。
憧れの先輩との約束を追って大学に進学し、晴れてシェアハウスが始まってから半年以上。
長年の片想いを抱える彼女は、もうそろそろに迫ったクリスマスに向けて関係を進展したい気持ちでいっぱいだった。
けれど、なにせシズルはとても真面目な女性だ。浮ついた話も聞いたことがないし、一緒に暮らしているのにだらしないところのひとつも見たことがない。それにいつも表情の変化が薄くて、とても顔が近い今もいたって無表情だ。
何を提案してもピシャっと断られてしまいそうな気がして、ユミカはなかなか勇気が出せなかった。
「あのぉ、ですね」
「……そうだわ。ちょっと待っていなさい」
「あはい」
もじもじと言葉を言い出せないユミカを置いて、キッチンのほうに行ってしまうシズル。
ユミカは意気地のない自分にため息を吐いて、ミルクたっぷりに甘いココアを口に含んだ。
待っていると、やがて戻ってきたシズルの手には見慣れたお菓子の箱。
ドキリとするユミカの隣に座った先輩は、かさっと音を立てて箱を見せつける。
「最近よくあなたが買ってきてくれるからちょうどよかったわ」
「は、はぁ」
なにがちょうどいいのかは分からなかったが、意図的にたくさん買っていることに気が付かれていたのだと思うとユミカは恥ずかしかった。
それは今日という日のために、行事ごとにかこつけて勇気を出そうと思って用意していたものなのだ。一応季節限定という日和った理由までつけて。
そんないわくつきの一品を開封したシズルは、お菓子もまともに見たことがないみたいな興味深げな視線で棒状のクッキーを見やり、それからつんっと自分の唇に触れさせる。
こてんと首を傾げた彼女はほんのわずかに頬を染め、いつものはきはきとした様子とは裏腹にぎこちなく笑った。
「
―――この後めちゃくちゃポッキーした。
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