あん・なろ
@ienikaeru
第0話 青春の始まり
早朝。日が登ってくる。朝が来たのだ。
太陽が半ばまで地平線から登った頃、燃え上がる星とは反対側に黒いモヤが発生する。
夜の残り香が顕在化するように濃い黒。そこが越境者の発生場所だ。予測に狂いはなかった。
あとは。
―――ほどなくして彼が現れた。
私が事前に渡しておいた剣を携え、缶ジュースとかいうものを飲んでいる。
昨日彼は言った。
「任せろ」
と一言。
私はそれを信頼し彼に託した。私が選んだ勇者の資質を持つ彼に。
太陽の光が彼の顔を照らしていく。徐々に明るく照らされていく彼の顔は――――。
……とても脂ぎっていてテカつき、目は充血していた。
「えっ。えええええええええ。も、もしかしてあなた」
「ああ。バッチリ一夜漬けしてきたぜ」
――昨日彼は言った。
「任せろ」
と一言。
私はそれを信頼し彼に託した。だが、その彼は。
一夜漬けという私の知らないスキルを使用し、すでに満身創痍の状態で越境者の前に立ち塞がったのだった。
「あ、あなた。大丈夫なの?」
「ああ。ポーション飲んでるからな」
カランっと、投げ捨てた青い缶にはデッドブルと書いてある。
死の牛?そんな商品名のポーションがあるのだろうか。
「あ、あなた、目が血走っているけどバーサークの魔法でも使ったの!?」
「ああ。寝てないからな」
目の前にモンスターがいるというのに彼は目を擦りながら答える。
目脂のようなものが取れる。汚い……。割とかっこいい見た目をしているのに台無しである。
初めての戦いだというのに彼からは恐怖心というものが感じられない。
これも勇者の資質……いや、徹夜明けで麻痺しているだけか……。
「さっさと倒してこの街を守るぜ。やばい時はサポートよろしくな」
いっぱしの激を飛ばす彼に不安しか感じなかったが。
こうして私たちの戦いは始まったのだった。
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