23 目覚め。
死って、こんな風だったのか。
なんだか、清らか。
真っ白のようで、黄金のよう。
とにかく、明るくて、心地いい。
キラキラなラメのような雨が降り注ぐ。
オーロラの輝きに似ている。
それでいて、星が降るよう光景は、眩しい。
シルクみたいな肌触りがしたそれをくぐれば。
「じゃあ、またな。天才魔導師様!」
光太郎くんが屈託ない笑みで言った。
「またね! 凜々花ちゃん!」
神奈ちゃんは涙を浮かべながら、微笑みを向けた。
またね。
なんて、言えないよ。
「リリカ師匠」
エグジの声がする。
「前に言ってましたよね」
「聖女なら、聖女様なら、きっと蘇生の魔法を成功させると」
「だから聖女を呼ぼうと思います。許してください。あなたを生き返らせるために、呼び戻します」
それは無理だよ。エグジ。
私はここ百年は、呼び戻さないように、鍵をかけたから。
ごめんね。
「リリカ師匠、リリカ師匠」
アルテの声がする。
「眠れません、リリカ師匠。あなたが眠ってしまった日から、ずっと」
「穏やかに眠れないのです、リリカ師匠」
「安らかにはいられないのです」
ああ、アルテ。
ごめんね。
本当にごめん
「おい、師匠」
スクリタの声。
「なんで鍵なんてかけたんだよ。聖女の蘇生の魔法を受けられないのなら、他の手を考える」
「アンタの死の原因を調べる」
「そしたら、時間を巻き戻す。何年かかってもやるぞ。アンタを取り戻すためなら」
私の死の原因か。
それは私も知りたい。
私抜きで、それが出来たなら、一人前だよ。
安心だ。
安心して、私は。
私は――――。
これからも、ずっと。
語りかけてくる弟子達の声を、聞くのだろうか。
死って、こういうものなの?
私の墓に向かって、話しかけてくる弟子達の声を聞くだけ?
ずっとこのままなの?
あれ? 私は、墓の中にいるのか?
棺の中に横たわって、土の中にいる?
でもスクリタが、調べるって言っていたし、もしかしたらまだ埋めてもらってないのかもしれない。
ドックン!
胸の中にある心臓が脈打つ。
どうして?
私は死んだはずなのに。
ドックン!
あ、苦しい。息が。
息が出来ない。
呼吸は、必要ないはずなのに。
ドックン!
「っ!!!」
目を開くと、目の前には透明な壁があった。
思わず、手で叩く。これを退かさないといけないとわかっていた。
だから、力の限り、押し退ける。
やけに重たい透明な壁は、蓋だった。
どうやら、私が横たわっていた棺だったらしい。
透明な棺。私の棺桶。大きすぎる。
「すーう、はぁーあ!」
呼吸をした。
呼吸をしながら、大きすぎる理由を知った。
私が――――縮んでいる。
「は……?」
小さくなっていた。
なんとか、棺から出る。すとん、とズボンが落ちた。
それを踏んでしまった私は、神秘的な青白い床に倒れる。
黄金色の長い髪が落ちた床に映ったのは、幼い私の顔。
小さくなったんじゃない。
私は――――子どもになっている。
「なんだ、これ?」
わけわからなくて、私は目をぱちくりさせた。
私は死んだはず。
なのに。
どうして。
「す、ステータス!!」
もしや転生か!? 転生でもしたのか!?
念のため、確認するためにステータスを表示した。
私の名前がある。
立花凜々花の名がある。
職業の欄には【魔導師】とあり、そして称号には【天才魔導師】と書かれていた。
前魔王を倒した時に追加された【英雄】の文字もある。
ここまでは見慣れていたものだ。
けれど、もう一つ。覚えのない称号がついていた。
【不死の者】という新しい称号がついていた。
「不死の者!?」
私は口にして驚く。
そして、自分が大量に血を吐いて一度死んだ原因を知る。
というか、思い出したのだ。
十年前、私は不老不死の薬を作った。
泥酔していて、全然作り方を覚えていないが、飲んでしまったそれ。
「不死の者っ~!!?」
今更発揮されて、私を不死の者に変えた。
そういうことなのか。
もう一度、私は声を上げるのだった。
天才魔導師凜々花。
英雄であり、天才であり、そして不死の者となった。
一章・完結。
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