基本動作訓練

 基本動作訓練では、介助者に動作の介助を指導することがあります。寝返り動作を介助する時には、対象者の両膝をたてる介助を実施、対象者の顔と視線を寝返る方に向けます。

 次に腰、肩を寝返るほうに向けます。介助者は腰に負担がかからずかつ効率的に重心を移動できるように両足を前後に開き腰を落とします。対象者の下肢をまげ、腰を前方に移動させます。

 この時、対象者に対して、首を曲げることができているか、肩を前に出すができているか、下肢を曲げることできているか、下になる方の上肢を外側に開いているか、体幹のねじれが起きているかということをチェックできると、ご本人の力を生かした介助につながります。

 

 ベッド上での上方移動(寝た状態で体を頭部側にずらす)を介助する場合は、まず対象者の膝をたてます。介助者は肩甲骨、臀部の下に手を入れ、膝をまげて移動する方向につま先をむけ、自分のつま先方向への重心移動を利用して移動させます。

 この時も、上方移動動作を構成する動きを対象者が実施できるかチェックするべきです。

 ねたままで水平移動の介助を行う時は、上半身を移動、次に下半身、というように部位を分けて介助を行います。側臥位にしてから水平移動の介助行う方法もあります。グローブ、スライディングシートを使用し摩擦や力学的な負担を減らす方法もあります。 

 練習は、構成運動に分けて実施するといいでしょう。

・上方移動の構成運動 頭を上げる、寝返り動作で半身を浮かせる、足でけって骨盤を押し上げる

・側方移動の構成運動 頭を上げる、腰を支点に胸部、腰部を持ち上げる、手を移動する側にもっていく、膝をたてる、足を上げる、足と胸郭を支点に骨盤をうかせる(筋トレのブリッジの姿勢です)。

 

 座り直しのときは、両肩からお尻に圧力をかけ臀部の感覚を確認します。次に前かがみを促します。介助者は後方から、両手を臀部の下か太腿に手を入れ、臀部だけを後ろにひくように介助します。

対象者が自分で行うには、座った状態から体を前に傾ける動作、圧中心点を臀部〜足底の支持基底面の中におき、左右に臀部を重心移動する動作や、もしくは少し臀部を浮かせて中腰になる動作など、何らかの形で臀部が浮かせた時に臀部を引きます。深く座ることができるまでこれを繰り返すことが必要です。

 

 日常生活動作の学習には、受け身、ネガティブ、安心安定を過剰に求めることは制限因子となります。動作の学習には、能動的な学習、視覚的、空間的定位、課題の遂行が必要だからです。

 姿勢の定位、寝返りや立位、歩行の獲得など、自律的といえる運動学習は、発達段階で乳児期より実施してきた基本動作学習です。基本動作学習を利用して日常生活動作を学習するため、能動的に、自律的に体を動かし運動を学習する要素が必要です。

 中枢神経姿勢制御機構の考えかたは以下になります。

・姿勢筋緊張 姿勢の変化にともなう筋肉の緊張の変化、動作に伴う筋緊張の変化を評価する。

・相反神経支配 近位部と遠位部の関係、上部体幹、下部体幹の関係が、相反神経支配が働くことで姿勢の保持・協調的動作に関与する

・運動パターン 定型的ではないか、協調的な運動ができているか

・感覚固有受容覚コントロール 

 一度に多くの感覚を取り入れ統合できるか、視覚有意になることはないか、固有受容覚がとりこめているか、自分の体の位置や動き、力の入れ具合や感覚がわかるか、運動のコントロール(ゆっくりと関節を動かす)、力の加減ができてるか、ボディイメージ(身体の地図)や自分の体の機能を把握できてるか、自分の体の傾きやスピードを把握できてるか(前庭覚)ということがあります。

 

 基本動作訓練の前段階として、重心移動訓練を実施することがあります。端座位での側方体重移動では、移動側中殿筋、大腿筋膜張筋、大臀筋上部線維が働きます。このとき、移動側股関節筋の機能が重要です。立ち直り反応のためには、端座位で骨盤前後中間位および胸腰椎の最適な湾曲の維持が必要とされています。側方重心移動における体幹立ち直り反応では、移動側側腹筋群の遠心的活動と、非移動側の求心的活動があります。骨盤側方傾斜と移動側股関節筋の関係、側方体重移動による自律的な、反対側股関節の外旋、外転、下腿の傾斜、移動側股関節の内旋、外転作用の大腿筋膜張筋、中殿筋、外転作用の大臀筋を働かせる練習には、移動側臀部の荷重を多くし、側方傾斜姿勢を保持する練習が考えられます。  

 徒手にて姿勢保持活動を促すときは、左右姿勢保持の反応が出るところを見極めます。でたら前後、立位のまま8の字ループ、と多様な重心移動を促し、望ましい反応を引き出していきます。

 

 人は、乳児期より、平衡反応から立ち直り反応へ、基本動作から日常生活動作学習へとレベルを向上し発達していきます。発達のパターンと同様に、重心が低く支持面が広い、安定している座位姿勢から、支持面がせまく重心が高い、常に細かな調整、制御が必要な姿勢(立位)へと変化させ、基本動作練習をレベルアップしていくことが考えられます。

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