破滅の君

桜咲 人生

第1話終わり

「起きろ、人間のゴミ」

なにか言われたと思い目を覚まそうとした時、頬を思いっきり叩かれ何事かと目を覚ました。

目を擦り、視界が開けるとそこには一人の少年が立っていた。

久しぶりに叩かれたため、頬を抑えながら少年を見る。

その少年は目立つ銀髪に金色の瞳を輝かせ、私服と思わしき白いシャツを着ており下にはジーンズと軽い服装をしていた。

「起きたか、クソ野郎。

これからは俺の独断で行わせてもらう」

そう言うと彼は近くにあった椅子に座り俺と向かい合った。

「その柔らかい椅子は懐かしいだろ?

お前が前に愛用していた椅子だよ」

彼はそう言いながら座っている椅子をコンコンと叩きこちらに睨んできた。

「ここは特別な空間だぜ。

抜け出そうだなんて考えるんじゃねぇぞゴミ。

まあ、てめぇ如きじゃ100億年早ぇだろうよ。

そんじゃ始めるぜ。

決意と覚悟をもって挑め、ここはもう一方的にやられる戦場なんだからよ」

彼は楽しそうに笑っている。

意味が分からない。

そもそもここはどこだ。

周りはくらく、奥行などほぼ無いに等しい。

だが、ここだけは何故か明るく2人を照らすスポットライトのようだ。

「さて、話を始めようか。

お前の1度目の終わりからでいいか。

あれは最悪だったよな。

家族が殺され、メイドが殺され、そしてお前さえも殺された。

思い出すか?

あの忌々しい記憶。

王国の政治が悪くなり、市民たちの反発も増え抑えようとしも暴れるばかり。

何しようと上手くいかず八方塞がり。

少しでも良くしようと税を減らし、他国に侵略し奴隷を増やす。

いくら労働力増やそうが、土地が悪けりゃ育たないというのに。

馬鹿馬鹿しい話だよな。

笑える実に笑えるって、おこるなよ。

人の話は最後まで聞けよ。

そんな中起こった。

そう革命だ。

革命が起きてめぇらが殺され、国は潰れた。

そうして新しいリーダーができ、お前らの時代は終わりを告げた。

そう思っていた。

だが違った。

なんかの因果かそれとも神の奇跡か。

お前は生き返った。

それも、前の記憶を持って。

そうしたら、てめぇは復讐を誓った。

自分の家族を最愛の人をそして自分自身を守ると。

そうしたら速かったな。

お前は市民を権力で支配し、他の国には徹底抗戦を張り、無害な魔物たちを殺す。

いやはやこの世の地獄だったな。

そう思わないかお前さん」

ずっとにやにやしている彼はそう言ってきた。

何を話されるかと思いソワソワしていたが、何故か安心した。

そんなことか、そんな程度の低いことかと。

「ああ、そうだクソガキ。

それで悪いのか?

俺の意見に否定をするやつを殺して、他国の奴らをこき使って支配してはいけないと?

そんな綺麗事が通るとでも思っているのか。

優しければ世界は救えるか、強ければ人を守れるか。

否、違う。

重要なのは権力だ、支配だ、絶対的な力だ!

ペンは剣よりも強し!!

お前には分からないだろ。

俺の気持ちが、裏切られたこの気持ちが!

奴らは裏切ったのだ。

私の気持ちも知らず、自分勝手に俺を恨み、自分のせいだとも思わず切れている。

そんな奴ら許せるものか。

許せるわけがないだろ。

だから殺してやったのだ

俺のため私利私欲の為に」

彼は静かに聞いていた。

何も言わずただ静かにニヤリともせず。

ただ俺の方を向きながら。

いつの間にか立ち上がっていたため座り、足を組んだ。燃え上がった気持ちも落ち着き、自分の中にあった鬱憤が晴れ、気持ちよくなった。

清々しく心地がいい。

彼ははぁと息を吐き、上を見上げた。

俺も合わせて上を向いてみたが、そこには暗い空間が拡がっていた。

彼はもう一度こちらを向いて話を始めた。

「お前は主語がでかいんだよな。

まぁ、いいか。

それで、お前は後悔などせずそれで良いと。

流石だな。

クズを極めればお前にたどり着くのかもしれないな。

まだ、悪魔の方がマシってものだ。

じゃ、お前は考えた事があるか?

死んだ人達の家族を。

残されたもの達の悲しみを。

辛さを苦しみをお前は感じたことはなかったか。

俺は道徳を説いてるんじゃえね。

ただ、お前の気持ちを知りたいだけだ。

お前の心の中をな」

彼は静かに淡々と喋っていた。

こちらを探るように、こちらの真意を見極めるように。

「思った事はあるぜ。

そりゃあな。

だが、俺だってやられた。

こっぴどく残らずやられた。

だったらおれだっていいだろやったって。

俺にも権利はあるはずだ。

復讐する機会がな」

そう言った。

本当の気持ちだ。

だから言ったのだ、綺麗事を言うこいつに。

「そうか」

と一言言ったあとまた質問をしてきた。

「じゃ、お前は今幸せか?

誰にも認められていないんじゃないか?

国民に蔑まされ、嫌われ、妬まれ、愛されず、それで幸せだったのか?

お前は孤独だったんじゃないのか?」

...

「どうした?

答えてみろよ?

さっきまでの威勢の良さはどうした?

現実に絶望でもしたのかい、絶対的な力を持つ王様よ」

...

「どうした?

震えてるぞ。怖いのか。

真実は毒にでも薬にもなるからな。

目を覚ますにはちょうど良かったかもな。

いい事教えてやろう。

この世で1番大切なのは心なんだよ。

その心を失った化け物には分からないだろうがよ。

権利にしがみつき、金を欲し、支配を愛したお前には、もう遅いかもしれないがな。

どれもこれも、心には勝てないぜ。

だって、全ての根源には心があるんだからな。

それを忘れたお前にはもう殆ど残っていないんだよ。

この世で最も価値のない、ガラクタばかりしかな」

俺はどうして答えられない?

簡単だ。

俺は幸せだと言ってやれば、終わりじゃないか。

なんでだ。

なんでなんだ。

怖い、もう怖い。

「そうだ。

一つ昔話をしよう。

あるところに1人の王様がいました。

その王様は嫌われており、皆から殺されてしまいました。

でも、王様は生き返りました。

王様は怒りました。

王様は復讐を決意しました。

そんなところに、1人のメイドさんがやってきました。

そのメイドさんはとても優しく、怒っていた王様を落ち着かせてくれました。

王様は後悔しました。

1度復讐をしようとした事を。

そして王様は決めました。

王様はもう王様を辞めて、1人の市民になろうと。

そう決めた王様は王様にならず弟に王位継承権を渡し、王の座を諦めました。

その後王国は弟の手により、成長し豊かになりましたとさ。

終わり。

どうだ、面白い話だろ。

今のお前にピッタリなお話だろ?」

やつは顔色一つ変えずにそう言ってきた。

やつのその金色の目は俺を捉えていた。

「それはどこの話だ?

こたえろ!」

叫びながらやつに掴みかかる。

「やだな。

ただの昔話じゃないか?

そう怒るなよ。

クソ野郎」

ぺっとたんを吐き俺を見てくる。

その小さい身長でこちらを見てくる。

何故かこちらが小さく見える。

どこか小さく、どこか悲しく。

手を離し、椅子に座る。

やつはたちながらただ呆然と見ていた。

ぱきと上から音がした。

「あれ、もう終わりかな?

お別れか。

意外と早かったな。

この後お前はどうなるか知らないが、どこの電車に揺られ度でもするのかな?

まあ、どうでもいい。

それじゃまたもう二度と合わないようにな、

そう言うと黒い空間が崩れ、光が入り込んでくる。

やつは向こうに行っている。

まて、行くな。

置いていくな。

俺はまだ、答えを出せていないんだ。

自分の答えが。

おい待ってくれ。

「おまえは、まだ悩んでいるのか?」

そう奴は言っていた。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

破滅の君 桜咲 人生 @sakurasakijinsei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ