笑わないの?

野口マッハ剛(ごう)

笑わないの?

 とある小さな会社の職場にて。

 半田は働いている。主に雑務、職場の掃除や会社の敷地の草むしり等、毎日変わる。

 半田は給料が楽しみである。

 職場の人間関係は、まあまあ。

 自分が社会の一員と言われたら? うーん?

 生活や体調はボチボチ。

 あんまり今を疑問には思わない半田。

 自分はなんのために働いているのだろうか、と時には考える半田であった。

 半田には好きな同僚の女性がいる。半田は二十九歳で、その女性は林元という名前で健常者で二十八歳。

 今日も雑務をしている半田。チラッと林元の方を見る半田。半田は好きな女性を振り向かせようと、わざと冗談を言ってみる半田、ちょっとぎこちない。

 林元は真っ直ぐに半田を見て無表情である。

 あれ? そう思った半田。

 そのすぐあとに、同じ冗談を言っている男性上司。すると、笑っている林元。この時に半田はこう考える。

 健常者がすると笑い、障害当事者は真面目を求められる?

 少し傷付く半田。

 健常者の林元としては、きっと、笑ってよいのだろうか? そう思ったと思われる。でも、あの時は笑って欲しかった半田。どうでもいい時に笑われたりの半田。

 雑務の間に、半田は中学生の頃の楽しかった思い出をいろいろと思い出している。友だちと遊んで、ふざけた青春、片思いを寄せていた青春。楽しかった思い出。

 それじゃ、今はどうなのだろうか。

 人に笑って欲しいけど、それじゃ、今の自分は笑っているかい?

 半田は雑務の確認のために、林元にこう報告する。

「もう、雑務はありませんか?」

 すると、クスッと笑った林元。

 半田は、ちょっとびっくりした。

 けれども、林元がクスッと笑ってくれたので、ちょっと嬉しい半田。

 半田と林元はお互いに笑顔で話している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

笑わないの? 野口マッハ剛(ごう) @nogutigo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ