第33話 コーヒーを飲んだら部員が増えそうになりました
ガタガタ、と音を立てて部室の扉を開けて中に入ってきた
「……なんでここに
「文芸部の見学だって」
「……はい? 見学?? 部活の???」
「らしい」
放課後、今日は部活の活動があるということで、部室に向かおうとしたのだが……向かう途中で、
俺としては反対する理由も特になく、『
「だ、駄目ですよ。ハル先輩」
「何が?」
「うちの部活、2人で定員マックスです」
「そんな分かりやすい嘘、私にばれないとでも?」
「それで、
「部活の見学だけど」
「じゃあ、ハル先輩の横からどけてください」
「なんで?」
「そこは私の席なんで」
「席決まってるの?」
「はい。決まってます。ハル先輩の横が、私です」
「じゃあ、そっち側に座れば良いじゃない」
そう言って
「なんにも無いじゃないですか」
「床があるわよ」
「もう!」
なんて言いながらも、
うわ、これ
苦々しいというか、重く苦しい思い出である。
あの場は
あ、そこはちゃんと本を読むんだ……。
これなら良かった……と、心の底で胸を撫で下ろして、
こういう時にどんな本を読むのかってので性格が分かるよなぁ……と、思いつつ俺も読みかけのラノベを開く。こうして見ると、なんか俺だけ場違いな感じがするよ。
窓から夕暮れの日差しが差し込み、部室の中をオレンジに染めていく。校庭からは運動部の掛け声が聞こえてきて、上階からは吹奏楽部の音声が聞こえてくる。それら全てが1つになって、学校の音を奏でていく。
それらに、交わるように俺たちのページをめくる音もその中に加わって、1つの楽器になっていく。
しばらく、俺は本を読むのに夢中になっており……気が付かなかったが、ふとなんだかよく分からないが
「……?」
不思議に思って本から視線を上げると、さっきに俺と
「……おい?」
「どうかしたんですか?」
「……いや」
「別にこのままでもよくないですか?」
「狭くないか?」
「私は困ってないです」
つまりは移動するなということだろうか。
なんてことを思っていると、
そして、
そして、そのまま何も無かったかのような顔して本を読むものだから……俺だけが完全に置いていかれている。
いや、明らかに距離が近いなぁ……なんてことを思っても、俺はそれぞれ両端を抑えられているため、動けない。なので泣く泣く自分の席に座って、ラノベの続きを読み始めた。だが。
「
「何?」
「ハル先輩との距離、近くないですか?」
「幼馴染だから」
「いや、椅子の話です」
「そう? 私とハルはいつもこんな感じよ」
「なんでそんな分かりやすい嘘をつくんですか」
「本当よ。寝るときもこんな感じ」
「はい、嘘です。私はいつもハル先輩を起こしに行ってますから」
「毎日は来てないじゃない」
「付き合う前から毎日起こしに行ってたら恋愛対象にならなくなっちゃいますから」
全っ然、ラノベの内容が頭に入ってこねぇ。
いま一番の盛り上がりシーンなのに……。
「ま、何でも良いです。ね? ハル先輩」
と、言いながら、その「ね?」の部分で、
ちょっとお2人さん?
「なんにも出来ないんだけど」
「じゃあ、ハル先輩。私の本を一緒に読みましょう」
「いや、
「ハル。私の本ならどう?」
「あ、まぁ……
俺は本なんて漫画とラノベしか読まないような人間だ。
文学は難しくて手が出ない。
だが、それでもドラマになるような小説だったら読めると思う。
俺も時々はラノベだけじゃなくてそういうのも読むし。
「じゃあ、ハルのために最初からにするわ」
「部室でいちゃつくのやめてください」
「何を言ってるの?
俺の名前を最後に持ってきて、やけに強調する
やめて、心臓に痛いから。
「別にいちゃついてません。私とハル先輩はいつも部室でこんな感じです。もっと言えないようなこともやってます」
「やってないよね?」
「やってます」
俺は否定したが、その言葉にかぶせるように
「ハルの顔が変わらなかったから、
「え、なんですか。それ」
「私、ハルと付き合いが長いからハルが嘘をついたかどうか分かるの」
「な、何なんですかそれ!」
「ハルも私で出来るわよ」
そういって、ちょっとドヤ顔を浮かべる
できるか、そんなこと。
と、言おうとしたが……
「ちょ、ちょっと。なんでハル先輩が黙るんですか? 本当にハル先輩も、
「……まぁ」
嘘をついても
「ほらね?」
そういって、その大きな胸を張る
そのせいで制服が凄いのなんのって。
だが、俺の返答に
ちょっと悪いことしたかな……。
そう思いながら、俺は言い訳を紡いだ。
「あ、でも。別に、
「ほ、本当ですか? あ、でも……嬉しいような、嬉しくないような……」
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