事故でカラダを失ったおっさんに憑依された女の話

@jam05241

第1話

 皆さまごきげんよう〜。

オレはこの物語の主人公である杉村シゲル。

45歳の独身で女に冴えないサラリーマン。

そんなオレは今日もいつもの会社に出勤しようとしていた。


その時、一本の電話が鳴った。


「コラ杉村!!今何時だと思ってるんだ!!」


やべぇ・・・。


 部長からの着信だ。

時計を見ると時刻は朝の9時を過ぎていた。

それにしても今日は電車が混んでいたな。

車やバスもいつもより多い気がするが。


 といっても電車の動きは変わらんので、着くのを待つだけ。そして、駅に着いて通路を歩き会社が目の前まで来た瞬間、事件は起きた!!


"ガシャーン‼︎"


 物凄い衝撃とともにオレの体は近くの電柱に吹き飛ばされ意識が無くなってしまった。

そう、オレは交通事故に遭ったんだ。


「ったく、杉村のヤツ何やってんだか・・・」


 事故を起こした運転手は前をよく見ていなくてたまたま歩道に乗り上げたらしいが、巻き込まれた人物がオレだけでホッとした。


 現場は騒然とし、加害者は何とか自力で脱出したらしいが、当然オレは意識不明の重体で病院へ運ばれた?


「ってか、さっきから感覚が変だぞ?意識がないと普通は考え事なんて出来ないけど」


 事故に遭ってからしばらくすると、何故か意識がハッキリしていた。でも、オレの体は起きる様子がない。


「まさかな・・・。試してみるか!!」


 オレは、救急車に揺られてるにも関わらず、体を起こした。


「やはりな‼︎オレ、幽体になっちまったよ!!」


 どうやらオレの体と魂は、激しい事故によって完全に分離してしまったようだ。周りの状況がよく分かる。


「あっ・・・。急に胸が!!」


 これからどうしようかと考えていたその時、急に胸が苦しくなった。どうやら他人の体に憑依していないと自我を保てなくなるらしい。


このままでは非常にまずい。

本当に死んでしまうぞ‼︎


 そう思ったオレは救急車をすり抜け、誰かの体を借りる事にした。


「ヤバい!!本当に死にそう‼︎おっ?あそこに中々良さげな人がいるじゃん‼︎」


 誰かに憑依したくてたまらなくなったオレは、相手の理由などお構いなしに、たまたま救急車の近くを歩いていた女子大生に憑依したのだった。


「ハッ?何これ?」


 その女子大生は買い物帰りだったようで、一瞬抵抗したかと思うと、その場で買い物袋を落とし、起立した状態になるのだった。


「ごめんね・・・。石田優香ちゃん、君の借りないとオレ、生きていけないから!!」


そして、体を無くしたオレの第二の人生が幕を開けるのだった。

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