第十章 出会い
ある夏のスペインでの事だ。エンリケスがいつもと同じように教官としてUOEの隊員たちに指導をしていて、訓練後の休憩時間にスペイン軍の士官向けの掲示板に張り紙がしてあるのが眼に入って来た。エンリケスは、普段はそんなに興味を持たないのだが、今回の張り紙には大きな字で『世界最強を目指すリーダーたちへ』と書かれているのがとても気になったのだ。エンリケスは、常により上を上をと考えていて、今よりも素晴らしい人間となり、そして今よりも素晴らしい指導者となるべきだと常日頃考えているのだった。そんな思いを抱いている所に、今回の張り紙を見て、エンリケスは心を打たれたのだった。エンリケスは次の瞬間にはもう既にスペイン海軍事務課へと向かって小走りしながら急いでいた。数分後にはスペイン海軍事務課の前に到着していた。エンリケスは、スペイン海軍事務課のドアを軽く数回ノックすると、ドアを押し開けた。エンリケスは、辺りを見廻しながら、事務課の職員に「あのう、士官向けの掲示板に張ってある事についてなのだが。その事について教えて貰いたくて来たんだ。誰と話せば良いかな?」といった。事務課の職員は、嬉しそうに、エンリケスに「私はフロレスといいます。私で十分対応出来ると思います、それで聴きたい事とはどんな事でしょうか?」といった。エンリケスは、せき込んだ様子で、フロレスに「ああ、『世界最強を目指すリーダーたちへ』という張り紙についてなのだが、どうすれば出席出来るのか教えて貰いたいんだが」といった。フロレスは、にこやかな笑みを浮かべて、エンリケスに「はい、『世界最強を目指すリーダーたちへ』という講演会の事ですね、特に出席するにあたってやっておく事はありません。このチラシを見ると分かると思いますが、ここに書かれている八月十一日の午後四時に在籍基地のミーティングルームに行って貰えれば講演会に出席する事が出来ますよ」といった。エンリケスは、自分の要件を済ませると、ほっとしながら立ち尽くしていた。するとフロレスは、礼儀正しい口調で、エンリケスに「ではこのチラシを差し上げときますね。ではどうぞ」といって、士官向けの掲示板にある張り紙と同じチラシを押しやった。エンリケスは、はっと我に返り、フロレスに「ああ、とても助かるよ、ありがとう」といって、チラシを受け取った。エンリケスは、海軍事務課を後にすると、再び教官としての職務を果たしに行った。いつも通りの穏やかな午前と午後を迎えて、今日のスケジュールを確認すると、エンリケスは「今日はいつもよりも早く帰れるな」とひとりごとをいった。エンリケスは自分のデスクで帰り支度を済ませると、小走りで海軍基地施設の外へと出てから開けた場所にあるベンチで携帯電話を出して、早速電話を始めた。
エンリケスの携帯電話が、トゥル、トゥル、トゥルルと鳴っている。数秒後、携帯電話で電話している相手が出た。電話相手は、高い声で、エンリケスに「あら、あなたなの。今日は仕事は無いの?」と携帯電話でいった。エンリケスは、心が弾んでいる様子で、電話相手に「ああ、そうだ。ナタリア、今日は仕事が早く終わってね。これから帰る所だよ、だから夕食は一緒に食べられるよ」と携帯電話でいった。エンリケスの電話の相手はナタリアだ。ナタリアは、心が高鳴る様子で、エンリケスに「あら、そうなの。では今日の夕飯はとても腕をふるう事にするわね、家に到着して直ぐに、美味しい出来立ての食事が食べられる様にするわ」と携帯電話でいった。エンリケスは、心が穏やかになり、柔らかい口調になって、ナタリアに「それは嬉しいな、久しぶりの家族みんなでの食事だな。娘たちは元気にしているかい?」と携帯電話でいった。ナタリアは、しっかりとした口調で、エンリケスに「二人のうち、上の子はもう小学校に通う歳だから、本格的な宿題が出てきて大変だって、アリシアが文句を言ってましたよ。下の子はまだ幼児学校に通っている段階だから、みんなと色々な事を学べて楽しいって、セリアは言っていました。今日の夕飯の時に最近の二人について聴いて見てあげて頂戴。二人とも昔よりあなたとの時間が無くて、寂しがっていましたよ」と携帯電話でいった。エンリケスは、胸躍る気分で、にこやかに笑いながら、ナタリアに「それは嬉しい話だな、私と過ごしたいという事だね。ふふふっ、それは凄く楽しみだ。今日は家族で楽しい夜を過ごそう」と携帯電話でいった。ナタリアは、気分を浮き立たせながら、エンリケスに「そうよ、早く帰って来てね。もう直ぐこっちの仕事が終わり次第、夕飯の支度を始めるわ、愛しているわアントニオ。では後でね」と携帯電話でいった。エンリケスは、低くて深みのある落ち着いた口調で、ナタリアに「ああ、分かった。じゃあ何か飲み物でも買って行くよ、じゃあまた後で。愛しているよナタリア」と携帯電話でいって、通話を終えた。エンリケスは、座っていたベンチから立ち上がると、海軍基地施設の併設している駐車場へと向かった。夏が近い、夕方のスペインの陽射しはさすが太陽の国スペインだと思わせる程だ。エンリケスの額に汗が流れた、目は黒いサングラスを付けているので、それほど陽射しの強さは感じさせない。しかし歩くと汗が出るくらい暑いのである。大きな木々の並木道を抜けると、とても広いグラウンドが見えて来る、その向こうにエンリケスの車を停めてある駐車場があるのだ。駐車場に入って行くと、色々な車があるのが分かる、シルバー、青、赤、緑、茶色、黒などの色の車である。駐車場にはとても整頓されている様に綺麗に車が停めてある、それはさすが軍施設のものである様な光景である。エンリケスが少し駐車場を歩き回っていると、自分の車を発見した。彼の車はスペインの自動車メーカーCOMARTH(コマルト)の外装が白い四人乗り用の車だ。この車はとてもコンパクトで少しおもちゃの様な見かけの車だが、そこが御洒落に見えるのである。エンリケスは、自動車メーカーCOMARTHの白い車のドアの鍵を開けると、すっぽりと運転席に座って、エンジンをかけ始めた。エンリケスは、用心深く、自分の車を駐車スペースから出すと、海軍基地の正面玄関へと向かった。正面玄関で、エンリケスは運転席からスペイン海軍将校の身分証明書を見せて、正面玄関でガードマンとしてHECKLER & KOCH(ヘッケラー&コッホ:H&K)のUSPというピストルを腰に装備して待機している、スペイン軍兵士にゲートを開かせた。エンリケスは、ガードマンの兵士に軽くお礼を言うと、スペインのマドリード市内へと車を繰り出した。
エンリケスが、いつも夜のデパートやホテル、そしてお店が並ぶ道を帰り道として車を運転しているが、今日は午後の早い良い時間に、いつもの道を車で走っている。道路脇にはいつも黒い塊にしか見えない、大きな木が午後の陽の光で綺麗な緑色に輝いているのが分かる。陽の光がとても綺麗に辺りを包み込んでいる様だ。それは普段とは違った風景である。十五分程車を走らせていると、道路沿いにMERCADONA(メルカドナ)という店の名前が緑色の文字で書かれている、とても大きな看板が目に入って来た。エンリケスは、ゆっくりとした運転で、MERCADONAの駐車場に入って、静かにエンジンを停止させた。COMARTH(コマルト)は、スペインの電気自動車メーカーで、ゴルフカートも製造している会社である。つまりエンリケスの乗っている車は、COMARTH(コマルト)の外装が白い四人乗り用の電気自動車なのだ。MERCADONA(メルカドナ)は、スペインのバレンシア発祥のスーパーマーケットである。このMERCADONAはスーパーマーケット市場で圧倒的な好成績で一番の売り上げである。そしてこのMERCADONAは、豊富なプライベートブランドの製品がある事、店内の空間がとても広い事、肉や魚などの食材が豊富である事など、これらの強みがあるスーパーマーケットなのだ。MERCADONAの建物は、正面の看板に緑色の文字でMERCADONAと書かれていて、全体的に明るい茶色のレンガで出来ている建物だ。この建物の直ぐ横にMERCADONAの駐車場があるのだ。この駐車場には車の他に小型バイク、自転車なども停められているのだった。エンリケスは、車から降りると、車に鍵をかけて、コツコツと地面を踏み鳴らしながら、MERCADONAの正面玄関へと急いだ。スーパーマーケット内へと入ると、そこにはたくさんの品物が揃えられていて、色々な品物が眼に入って来た。店のあらゆる棚に商品が顔を出して、自分たちの存在を強調している様である。エンリケスが、ゆっくりと店内を進んで行くと、まず目に入った商品はチョコレートの棚だった。そこに置かれているチョコレートで、眼に入った来たのは、クッキーの片方の面だけにチョコレートを塗った様なチョコレートのお菓子だった。その次に眼に入って来たのは、とても大きな色々な種類のナッツの入っているチョコレートだった。どちらも美味しそうな、パッケージが書かれている、思わず手に取りたくなる程だ。次のコーナーはクッキーだった、このクッキーは大きな箱に入っている物で、やはりチョコレートと同じでとても美味しそうなパッケージが書かれているのだった。それから先に進むと、色々な種類のパテがあるのだった。このパテはパンに付けて食べるのが一般的であるのだ。次の棚に進んで行くと、スペインを代表する商品であるオリーブオイルがあるのが分かった。そしてまた先へと進むと、棚に色々な色の入れ物に入っている、色々な種類のヨーグルトとケーキがあった。その棚の前でエンリケスは、今日は子供たちに、何か甘い物やお菓子を買って帰ると、良いかなと思考を巡らせた。そうこうしながら、エンリケスは、店内に入る前から、買おうとしている飲料コーナーへと歩いて行った。すると、ワインの棚を見る事にした、ワインの棚には色々な種類のワインが並んでいた。最初に眼に入った物は、フレシネ・コルトンネグロというワインで、十八ヶ月の瓶内熟成を行ったものである。次に棚に並んでいるワインはフレシネ・ブリュット・バロッコで、このワインであるバロッコは三十ヶ月以上の瓶内熟成をした物である。フレシネのワインは千八百六十一年に造られた物が始まりで、とても長い歴史があるワインなのだ。その長い歴史とは二つの名家の結婚が始まりなのだ。その二つの名家とはサラ家とフェラー家の事だ。次に並ぶのはロベジャ・グラン・レゼルヴァ、カンポス・デ・エストレジャス、コドルニウ・クラシコ・セコ、コドルニウ・キュヴェ・レイナ・マリア・クリスティーナというワインが並んでいた。コドルニウは、スペインのカバ生産会社で、世界最大規模のワイン会社であり、カバの製造において世界最古であり、世界中へとワインを届けている。そして初めてカバのスペイン王室御用達となった。エンリケスは、久しぶりの家族みんなでの、夕食となるので、なかなか普段は味わう事の出来ない、王室御用達のコドルニウ社のコドルニウ・キュヴェ・レイナ・マリア・クリスティーナを買って帰る事にした。そうと決まるとエンリケスは、王室御用達のカバを手に取り、しげしげと眺めてから近くにあった、買い物かごに入れた。エンリケスは、次は子供たちの飲み物だなと思い、ワインの棚と反対方向の棚を見た。エンリケスの予想通り、そこには炭酸飲料が並んでいた。エンリケスは、にこにこと微笑みながら、スペインの主要な炭酸飲料であるKASで美味しそうな味の物を探し始めた。するとエンリケスは、じっくりとKASの種類を見ながら、ある事を思い出した。確かKASで一番人気を誇っているのは、レモン味のKASだった事を、思い出したのだ。エンリケスは、その事を思い出すと、何のためらいも無く、買い物かごへと大きなペットボトルのKASを二本入れた。エンリケスは、子供たちの喜ぶ顔を想像して、にっこりと笑った。カバとはシャンパーニュ式製法で製造されるスペインのスパークリングワインだ。そしてエンリケスは再びケーキの棚へと引き返して、色々あるケーキの中から大きなタルタ・デ・サンティアゴを取り、買い物かごへと用心深く入れた。エンリケスは心の中で、これで今日のデザートは完璧だぞと言った。タルタ・デ・サンティアゴはスペイン語で聖ヤコブのケーキという意味で、聖ヤコブがまつられているサンティアゴ・デ・コンポステーラの修道院で作られたケーキだ。このケーキは、スペインの国全体で、好んで食べられる代表的なお菓子だ。タルタ・デ・サンティアゴはアーモンドパウダー、グラニュー糖、レモンの皮、シナモンパウダー、卵で作るのだ。エンリケスは、買い物かごを会計レジに持って行き、店を出た。自分の車の後部座席に荷物を置くと、運転席に座り、車のエンジンを起動させた。そして再びマドリード市内へと、車を発進させた。
ニ十分位車を走らせていると、自分の家に到着した。時間は午後五時十五分だ。スペインのマドリードの午後五時十五分なので、まだまだ外は明るい陽射しにさらされている。エンリケスの家は、地面が綺麗な濃い色の緑色の芝生が広がっていて、玄関へと通じる道と中庭へと通じる道は茶色のレンガで出来ている。レンガの周りには南国の植物が植えられていて、玄関口付近で三段程の階段がある。家自体は円柱状の白い建物と、台形状の低い建物と、台形状の高い建物がくっついて出来ていて、この三つの主要な建物の間に中庭があるのだ。この家の入り口は、円柱状の建物に備え付けてある、扉がそうであり、明るい茶色の扉だ。この扉の上にはランプが備え付けてある。低い台形状の建物には大きなエメラルドグリーンの窓枠がある、大きな窓が備え付けてある。高い台形状の建物の二階には中位の黒い縁の窓が三つ備え付けてある。低い台形状の右横から中庭に行ける小道があり、主要な三つの建物の屋根は明るい茶色の瓦屋根だ。エンリケスは車から降りると、家の呼び鈴を鳴らして、ドアを数回叩いて「私だアントニオだ。ここを開けてくれ」といった。家の中から「はいはい、今開けますよ。直ぐに行きますよ」という声が返って来た。エンリケスは、その場で荷物を両手で持ちながら、待っていると、ヒューという音と共に玄関扉が開いた。そこに現れたのはナタリアだ。ナタリアは、名前はナタリア・エンリケスという名で、フランスの大学のヴェルサイユ・サン・カンタン・アン・イヴリーヌ大学の自然環境学を学び、その後イビザ島などから生産される食塩を販売する自営業を行っている。その店の名前は『美味しさの真ん中に』という名前だ。歳は三十七歳であり、スペイン人である。髪の色は豊かな栗色で、髪の長さはカールしたミディアムである。そして真ん中で前髪を分けている。目の色は琥珀色である。ナタリア・エンリケスの服装は上半身が白いタンクトップで、下半身が明るい青い色のデニム生地のワイドパンツを着ていて、靴は灰色のビーチサンダルを履いている。ナタリアは、にこにこしながら、エンリケスに「お帰りなさい、あなた。今日は早く帰ってこられたわね、何かあったの?それとも素直に喜んで良いのかしら?」といった。エンリケスは、微笑み返して、ナタリアに「ああ、大丈夫だよ、ナタリア。何も心配する事は無いよ、今日はたまたま仕事が早く終わっただけなんだ。心配掛けたね、ナタリア」といった。ナタリアは、落ち着いた様子で、エンリケスに「あら、そうなら、安心したわ。では今日はゆっくりと家族の時間を過ごしましょうよ」といって、エンリケスが持っている荷物の一つを受け取って、家の中へと入って行った。エンリケスもナタリアの後に続いて家の中へと入って行った。エンリケスとナタリアは、細長い通路を抜けた先のキッチンのある部屋へと入った。二人はキッチンに買って来た荷物をゆっくりと置くと、キッチンにある蛇口をひねり手を洗い始めた。キッチンは辺り一面真っ白い材質で出来ていて、このキッチンには中位の明るいベージュのキッチンカウンターが置いてあり、この机の傍に明るいベージュの椅子が四つ置かれていて、キッチンカウンターの真ん中に、赤い花の入った花瓶が置かれて、色々な大きさのボウルに果物が入っている。入っている果物はオレンジやリンゴやブドウである。キッチンの壁には茶色の棚があり、そこには色々な食器が重ねられていて、フライパンなどの調理器具なども置かれていて、棚の端にはジャムが入った瓶が並べられている。エンリケスは、手を洗い終えると、ナタリアに「それで今日は、どんな料理を作っているんだい?」といった。ナタリアは、嬉しそうに、エンリケスに「今日はピストと鶏肉&トマトのルスティードを作っているのよ」といって、振り返った。エンリケスは、顔がほころんで、ナタリアに「それはご馳走だね、とても美味しそうだ。私が買って来た物をまだ言っていなかったね、ワインのコドルニウ・キュヴェ・レイナ・マリア・クリスティーナとレモン味の炭酸飲料のKASとケーキのタルタ・デ・サンティアゴを買って来たんだ。どうだい?今日の食事に合いそうかい?」といった。ナタリアは、歓声を上げながら、エンリケスに「ええ、大丈夫よ。わざわざ買って来てくれてありがとう、しかもデザートまで買って来てくれるなんて。あなたって最高だわ!」といって、二人はキスをした。すると、ナタリアは、キッチンのフライパンの操作に戻った。エンリケスは、辺りを見廻しながら、ナタリアに「何か手伝える事はあるかな?ナタリア?」といった。ナタリアは、フライパンの火の強さを観察しながら、エンリケスに「そうね、鍋が噴きこぼれない様に、見ていてくれると助かるわ」といった。エンリケスは、言われた通りに鍋に近づきながら、ナタリアに「分かった、任せてくれ」といって、鍋の火を調整した。ピストとは、スペインにおいての栄養価の高い季節の野菜を使った野菜の煮物。このピストは、スペインの伝統料理の一つで、カスティーリャ地方の料理である。このピストは目玉焼きに添えたり、ソーセージと一緒に食べられるのが一般的なのである。今回のピストは、トマト、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、しいたけ、ズッキーニ、ピーマン、にんにく、アンチョビを使っている。鶏肉&トマトのルスティードは、サラダ用の小皿にトマトとにんにくとローリエの葉を混ぜて置いておく。次に骨付きの大きな鶏肉に塩コショウで味付けをする。次にフライパンを用意してオリーブオイルをしっかりとたらす、そのオリーブオイルを良く伸ばし、次に先程の大きな鶏肉をフライパンの中へと置いて焼き始める。サラダ用の小皿にある物を玉ねぎと一緒にフライパンの中へと入れてから、白ワインを入れて、暫くして水を入れて煮込み上げる。大きな鶏肉が焼き上がったら、オイルソースと塩コショウで味付けして出来上がった料理である。そうこうしていると、二階から階段をトントントンと音を立てて下りて来る音が聞こえて来た。すると、その階段を下りて来た音の主が、今度はキッチンで音を立てている。その音が一旦止むと、小さな天使の様な可愛らしい小さな女の子が二人立っていて、二人のうちの一人の女の子が、ナタリアに「お母さん、とてもいい匂いがするよ。いったい何を作っているの?教えて」といった。すると、もう一人の女の子が、エンリケスに「ああっ、お父さんだ。いつ帰って来たの?全然分からなかった、帰って来たら直ぐに教えて、なかなか一緒に居られないんだから」といった。ナタリアは、話しかけて来た女の子に、向きながら「今日はピストと鶏肉&トマトのルスティードですよ、直ぐに出来上がりますからね。待っててね、今日は二人にジュースとデザートもありますよ」といった。エンリケスは、自分に話し掛けて来た女の子に「済まなかったね、そうだ、なかなか一緒になんか居られないもんな。よしよし、今日は二人が好きな炭酸飲料のKASを買って来たぞ、楽しみだろ」といった。ナタリアと話していたブロンドの女の子は、早口で大きな声で、ナタリアに「凄い、お母さん、凄いよ。とてもあたし楽しみだわ」といって、鈴が鳴る様に笑った。エンリケスと話していた女の子は、はしゃぎながら、エンリケスに「わぁーい、とっても楽しみ。お父さん、それでデザートって何を買って来たの?教えてよ」といった。エンリケスは、微笑みながら、話しかけて来た女の子に「そうだな、フランシスカ。今日のデザートはタルタ・デ・サンティアゴというケーキだよ。このケーキはサンティアゴ・デ・コンポステーラの修道院が発祥のケーキなんだ。とても見た目も素敵なデザインなんだよ」といった。フランシスカは、瞳を大きく広げながら、輝かせて、エンリケスに「うん、とても美味しそうなケーキだね、そのケーキを見るのも、食べるのも楽しみ。ああ、早く食べたいな」といった。ナタリアは、夕食の調理の仕上げをしながら、ナタリアと話していたブロンドの女の子に「そうでしょう、楽しみでしょう?アンナ、お椅子に座ってて頂戴ね。これから料理をみんなのお皿に盛り付けますからね、いい子にしているのよ」といって、キッチンで行ったり来たりしている。ナタリアとエンリケスは夕食の料理を皿に載せると食卓のテーブルに並べて、次に飲み物として自分たちにはワインを子供たちには炭酸飲料をそれぞれワイングラスやグラスに注いだ。夕食の用意が整うと、エンリケスとナタリアとアンナとフランシスカの四人がテーブルの席に着いて、直ぐに食事を始めた。四人は夕食を済ませると、デザートのケーキを食べて、四人家族みんなで有意義な夜を過ごした。
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