ジャスティス・ウォー スペイン編セビリア大聖堂の金塊

@asakai

第一章 幸せな週末

 季節は、春が過ぎて、六月の初めの初夏の季節だ。六月の英国のロンドンは気温が二十度前後で、空は厚い雲に覆われて、にわか雨が降り出す、そして時々太陽が顔を出すといった天気だ。そんな中、六月の初めの週末の午前中に、ルイス警部とその奥さんのエメットと彼ら二人の間に生まれたパスカルは、自分たちの車であるオレンジ色のJAGUAR-C-X75を大分走らせて、スタッフォードシャー州にある英国で最も人気のあるALTON TOWERSという遊園地に来ているのである。ルイス警部は、遊園地に着くと直ぐに、オレンジ色のJAGUAR-C-X75の車を駐車場に停めて、それからその車のトランクから荷物を詰めた大きなリュックサックと自分と奥さんのエメット用にニ人分の傘を出して、パスカルを腕に抱きながら、遊園地の入り口に向かった。リュックサックは、イギリスのリュックサックブランドのCHAPMAN(チャップマン)で、色はNAVY(ネイビー)だ。ルイス警部は、にっこりしながら、エメットに「エメット、君はここで待っていてくれ。僕が直ぐに受付を済ませて来るよ、実はエメット、君に今日はゆっくりして貰おうと思って、遊園地のチケットを既に購入しているんだ。だから直ぐにここに戻って来るよ、いいかい?」といった。エメットは、口元に柔らかい微笑を浮かべながら、ルイス警部に「ありがとう、ルイス愛しているわ。ええ、ルイス、あなたに任せるわ。うん、ここで待っているわ、直ぐに来てね」といった。ルイス警部は、大きな笑顔を見せながら、エメットに「ああ、僕も愛しているよエメット」といって、元気良く小走りして、ALTON TOWERSの遊園地の受付に向かった。ルイス警部は、遊園地の受付に「あのう、これチケットです。それからここのALTON TOWERSの赤ちゃん用のバギーを貸して頂きたいのですが、良いですか?」といった。遊園地の受付は、にこにこしながら、ルイス警部に「はい、チケットを確かに頂きました。赤ちゃん用のバギーですね、一日六ポンドです」といった。ルイス警部は、ズボンのポケットから財布を取り出し、遊園地の受付に「では、これ六ポンドです」といって、お金を差し出した。そして遊園地のバギーを貸して貰うとルイス警部は、パスカルをそのバギーに座らせて、奥さんのエメットと腕を組みながらバギーを押して遊園地内を歩き出した。ルイス警部の名前は、ルイス・ジョナサンで、英国人、英国海兵隊に入隊後直ぐに、英国海兵隊特殊部隊SPECIAL BOAT SERVICE(SBS)に選抜される。その後SBSから英国海軍特殊部隊特別制圧対応部隊に引き抜かれ、三十三歳で除隊する。英国海軍での階級は少佐である。今は英国の警察官の警部を務めていて、英国軍と英国の警察組織の協力下で編成した捜査機関である英国特別捜査機関の特別捜査官も務めている、今の歳は三十五歳である。髪型は頭の上は短く切って、もみあげと頭の左右の横と後ろを短く刈り上げている。髪の色は黒である、目の色は青で、身長は背が高い。洋服は上半身が、FRED PERRY (フレッドペリー)の半袖のポロシャツで色はワインレッド、下半身はFRED PERRY (フレッドペリー)のズボンで色はベージュで、靴はFRED PERRY (フレッドペリー)の革のスニーカーで色は茶色を履いている。エメットの名前は、エメット・ジョナサンで、ルイス警部の奥さんだ。プリンストン大学の経済学部卒で、輸入会社の営業と買い付けの仕事をしている。勤めている輸入会社の名前は、freight of treasure(宝物の貨物運送)である、英国人で、髪型はロングヘアーの髪の毛を後ろに束ねていて、髪の色はプラチナ・ブロンドで、目は青色であり、唇はピンクである。身長はルイスよりも少し低い位だ。歳は二十九歳である。洋服は上半身がMARKS&SPENCER(マークス&スペンサー)のサテンブラウスで色はライトブルーで、下半身はSKINNY JEANSで色は黒色で、靴はBALLY(バリー)のウィメンズ アイスブルー ファブリック ローカットスニーカーを履いている。パスカルはルイス警部とエメットとの間に生まれた子供で、名前はパスカル・ジョナサンで、歳は零歳と約三か月だ。髪の毛の色は母譲りのプラチナ・ブロンドで、目の色は父譲りの青色だ。洋服はブランド”NEXT”のベビーロンパース・カバーオールを着ている、元気な男の子だ。暫く、ルイス警部とエメットとバギーに乗せたパスカルで、遊園地内を進んで行くと赤いモノレールが見えて来た。ルイス警部は、ワクワクした様子で、エメットに「あの乗り物で、少しばかり遊園地内を回ってみようよ、どうだい?」といった。エメットは、にこやかに微笑みながら、ルイス警部に「良いわよ、パスカルも喜ぶわ」といって、二人はパスカルのバギーを押しながら、モノレールの受付場所まで行った。ルイス警部は、エメットとパスカルを待たせて、モノレールの乗り方を聴きにいった。エメットは、パスカルのバギーを揺らしながら、あやしている。エメットは、辺りをゆっくりと見回しながら、ふと今日はとても天気が良い日だわと、しみじみと思った。ルイス警部は、急いで、モノレールの受付の男性に「ちょっと良いですかね、あのモノレールに乗りたいんですけれども、どうすれば良いですか?」といった。受付の男性は、きっちりと遊園地の指定された仕事着を着て、はきはきとした言い方で、ルイス警部に「ええ、はい、そうしますとあの列に加わって頂くと乗ることが出来ますよ。今日はいつもより少し空いていますよ、ですから直ぐにモノレールに乗る事が出来ますよ」といった。ルイス警部は、何かを急に思い出した様子で、受付の男性に「ああ、それから小さな赤ちゃんが一緒なんだが、危険じゃないかね?」といった。受付の男性は、毅然とした態度で、そしてはっきりと、ルイス警部に「はい、移動速度は遅い設定なので、小さな赤ん坊も危なく無いですよ」といった。ルイス警部は、ほっとした表情で、受付の男性に「ありがとう、それではこれで失礼するよ」といった。受付の男性は、きっちりと整頓された綺麗な白い歯を見せながら、ルイス警部に「それではごゆっくりお楽しみください」といって、お辞儀をした。ルイス警部は、陽気な足取りで、エメットとパスカルの待つ場所へと向かった、それからエメットとパスカルの居る場所が見えて来ると、大きく手を振った。するとエメットが、パスカルのバギーを揺らす手を止めて、その手を大きく振り返しながら、ルイス警部に「こっちよ、ここよ、ルイス!」といった。ルイス警部は、少しばかり走って、エメットに「ごめんよ、待ったかい?」といって、エメットに微笑んだ。エメットは、目をきらきらさせながら、そしてにっこりとした表情で、ルイス警部に「大丈夫よ、全然待っていないわ、凄く早く戻って来てくれたわ。」といった。早速、ルイス警部とエメットとパスカルは、赤いモノレールに乗り込んだ、すると直ぐに赤いモノレールがゆっくりとカタカタと音を出して動き出した。赤いモノレールから地面の緑色の芝生が、一面に広がっているのが分かり、その芝生の上には遊園地のALTON TOWERSの動物のキャラクターなどの銅像がカラフルに置かれているのが分かった。それから動物のキャラクターの近くに点々と子供が遊べる位の遊具が立ち並んでいて、その遊具の上に鳥の銅像が載っている、その遊具もカラフルなのだ。赤いモノレールは、ゆっくりとカタカタと動いている、その上を大きな木々がアーチを作りながら立ち並んでいる。赤いモノレールの中で、エメットが、とても幸せそうに深く座りながら、ルイス警部に「なんだかとても落ち着くわね、ルイス、いつも慌ただしくしているから凄く安らぐわ。ここに連れて来てくれて、ありがとう」といって、柔らかい視線を投げた。ルイス警部は、うっとりとした表情で、エメットに「いいんだよエメット、こんな事はお安い御用さ。君はなんて美しいんだろうね、とても君は美人だね、僕はとても幸せ者だ」といった。エメットは、元気良く声を出して、ルイス警部に「そうよ、あなたはとても幸せ者なのよ。私とパスカルがあなたの事を心から愛しているわよ、それにやっと気付いたのかしら?」といって、ルイス警部をじっと見つめた。ルイス警部は、見つめ返しながら、エメットに「そんな事は無いさ、いつもエメットとパスカルの愛を感じているよ。愛しているよ、エメット」といった。エメットは、輝きを放ちながら微笑み、ルイス警部に「私も愛しているわ、ルイス」といって、二人はキスをした。その瞬間パスカルが、手足をバタバタさせて笑った。エメットとルイス警部は、数秒間キスをした、そしてエメットは、声を出して笑いながら、ルイス警部に「あら、パスカルも私とルイスがお互いを愛しているのが嬉しいみたいね、パスカルが笑ったわ」といった。ルイス警部は、幸せでぼんやりとした様子で、エメットに「ああ、そうだね。パスカルは僕たちの太陽さ、パスカルは僕とエメットとの真実の愛を分かっているんだよ。絶対そうさ」といった。エメットは、満足した様子で、ルイス警部に「そうよ、パスカルは何でも知っているのよ。ルイスが私を心から愛している事、そして私がルイスを心から愛している事をね」といって、再び二人はキスをして、再びパスカルが二人の事を祝福している様子で笑った。その後暫くの間、ルイス警部とエメットはパスカルも一緒に乗れるアトラクションを回ったり、三人でゆったりと遊園地内をぶらぶらと歩きながら過ごした。ふと時計を見ると、いつの間にかお昼時間に差し掛かっていた。ルイス警部は、空腹でお腹から音を出しながら、エメットに「ここら辺りで、一度食事をしてエネルギーの補給をしないかい?エメット?」といった。エメットは、乗り気な様子で、ルイス警部に「名案だわ、ルイス、今のうちに栄養補給をしておかないと動けなくなるかも知れないわね。どこか良いお店があるかしら?どう思うルイス?」といって、ルイス警部の顔を見た。ルイス警部は、質問を待っていた様子で、エメットに「実はこの辺りで、良い所があるんだよ、エメット。ハンバーガーの美味しいレストランがあるんだよ、そこに行くのはどうかな?エメット?」といって、頷いて見せた。エメットは、ルイス警部に「ええ、良いわよ、ルイスが前から考えていたレストランなんでしょうからね。そこで決まりよ」といって、鈴音の様に声を出して笑った。ルイス警部は、嬉しさが隠せない様子で浮足立ちながら、エメットに「うん、じゃあ決まりだ。実を言うとエメット、君の言う通り食事の計画をしていた店なんだよ。了解してくれてほっとしたよ、早速そこに向かおう」といって、頷き返してパスカルの乗るバギーを押しながら歩き出した。少しばかり遊園地内を歩いて行くと、緑色の植木が点々とある住宅街の様な場所が見えて来た、その住宅街の様に立ち並ぶ建物はレスランなのだ。レストランは木で出来ていて壁を大きな丸形にくり抜かれていて、そのくり抜かれた丸形の所に木で出来た扉が付いている。そしてそのレストランの屋根は茶色で、壁は黄色に塗られているのだ。ルイス警部が指を指しながら、エメットに「ああ、あそこさ、エメット。僕たちの昼食を食べる場所に到着したよ、エメット、少し歩かせてしまったかな?疲れたかい?」といって、心配そうな眼差しを向けた。エメットは、背筋を伸ばしながら、ルイス警部に「いいえ、大丈夫よ。ルイス、あなたの予定していたハンバーガーが楽しみだわ、直ぐに食事にしましょう」といった。そしてエメットは、バギーに乗るパスカルに顔を近づけて、パスカルに「やっと着いたわよ、パスカルはお腹がペコペコかしらね、直ぐに食事になりますからね」といって、おでこにキスをした。パスカルはきょとんとしている様子で、手足をバタバタさせた。ルイス警部は、パスカルの乗るバギーを持ち上げて、レストランの扉に通じる木製の階段を上り、エメットとレストラン内へと入って行った。ルイス警部とエメットとパスカルがレストランの中に入ると、直ぐにALTON TOWERSのレストランの名前がプリントされている仕事着を着たウェイトレスが駆けつけて来て、ルイス警部とエメットに「お食事ですか?大人二人と子供一人で宜しいでしょうか?」といって、礼儀正しく返答を待っている様子だ。ルイス警部とエメットが同時に、ウェイトレスにその通りであると告げると、直ぐにテーブル席に案内された。ウェイトレスは、食事のメニューを二つ渡しながら、顔を交互に見ながら、ルイス警部とエメットに「ではご注文が決まり次第、お呼び下さい」といって、お辞儀をしてその場から離れようとした。するとルイス警部が、慌てた様子で、ウェイトレスに「ああ、待って下さい。もう注文は決まっているんです、このALTON TOWERS限定のハンバーガーとフライドポテトのセットを二つと飲み物はアイスティーを二つお願いします」といった。ウェイトレスは、にっこり笑いながら、ルイス警部に「かしこまりました、出来上がり次第直ぐにお持ちします」といって、その場から立ち去った。エメットが、パスカルにミルクをあげていると、先程のウェイトレスが、ルイス警部とエメットとパスカルの居るテーブル席へと戻って来た。ウェイトレスはハンバーガーやフライドポテトの載っている皿を二つとアイスティーが二つ載っているランチトレーを運んで来て、ルイス警部とエメットに「ご注文は以上で宜しいですか?」といって、再び交互に顔を見た。ルイス警部が、二つ返事で、ウェイトレスに「ああ、これで大丈夫だ」といった。ウェイトレスは、丁寧にお辞儀をして、ルイス警部とエメットとパスカルの居るテーブル席から立ち去った。エメットは、運ばれて来たアイスティーを一口飲んでから、ルイス警部に「頂きます。じゃあ、食べ始めましょう、ルイス」といって、ハンバーガーを一口かじった。ルイス警部も、大きな口を開けながら、運ばれて来たハンバーガーをかじり、口をもぐもぐさせながら、エメットに「このハンバーガーって、一見普通のハンバーガーで、下から上に説明すると、パンがあって、次にレタス、その次に牛肉、その次にパンといった作りになっているんだけど、ここまでは普通のハンバーガーだけど、牛肉の上のソースがALTON TOWERS特性のソースなんだって。それからフライドポテトに付いて来たソースもALTON TOWERS特性のソースみたいなんだよ、味はどうだい?エメット?」といって、興味津々といった具合で見つめた。エメットは、頬を膨らませながら、ルイス警部に「このハンバーガー、本当に美味しいわよ、ルイス、このお店にして大正解だったわ。このハンバーガーのソースのことね、見た目はタルタルソースみたいだけど、実は野菜にかけるドレッシングみたいで油っぽく無くて、さっぱりしていて、とても美味しいわ。フライドポテトのソースもハンバーガーよりも脂身が無くさっぱりしていて美味しいわよ」といって、微笑みかけた。ルイス警部は、はははっと笑いながら、エメットに「喜んでくれて嬉しいよ、エメット」といった。ルイス警部とエメットとパスカルは、レストランでゆっくりと時間を過ごした。食事は大分前に終わっているのだが、食後のコーヒーなんかをいくつか注文をして過ごした。それから暫くして食後のデザートの時間を終えると、ルイス警部は、時計を見て、エメットに「そろそろここを出る事にしようか?エメット?」といった。エメットは、テーブルに両肘を付いて手のひらで顔を支えながら、微笑を投げながら、ルイス警部に「ええ、そうね、この後の予定はどうなの?教えて」といった。ルイス警部は、頷きながら、エメットに「ああ、ちゃんと予定してあるんだよ。この後は遊園地内をぶらぶらして、まだ見てない所を見てから、大きな芝生とたくさんの木々があって、池のある広場があるからそこに行って、景色を眺めて夕焼けが見える頃にここの遊園地を出る事にしようと思っているんだ。どうかな?エメット?」といった。エメットは、決意した様子で、ルイス警部に「ええ、賛成よ、それじゃあ、ここを出ましょう」といった。それからルイス警部とエメットとパスカルは、レストランを後にした。

 その後、ルイス警部とエメットとパスカルは、遊園地内をぼんやりと歩きながら小規模の動物園を見てから、池の周りに緑溢れる木々が並んでいて地面は芝生になっている大きな広場に到着した、その場所は池と芝生を陽の光が照らし、その光を反射して池と緑色の芝生を輝かせている、その池の向こう側にアトラクションの城が見えてとても神々しく見えるのだ。輝く緑一面の芝生にはたくさんの人たちが腰を下ろして座っていたり、寝っ転がっている人たちでいっぱいであった。ルイス警部は、驚いた様子で、エメットに「こんなに人でいっぱいだとは思わなかったよ」といって、目を大きく見開いた。エメットは、急いだ様子で、ルイス警部に「さあ、良い場所を確保するわよ、ルイス、急いで」といって、ルイス警部の腕を軽く引っ張った。ルイス警部は、エメットに圧倒されながらも、慌ただしくパスカルの乗るバギーを抱えながら、エメットに付いて行った。少しして景色を眺めるのに良い場所を見つけて、ルイス警部とエメットとパスカルは、その場所に腰を落ち着かせた。エメットは、ゆったりと地面に足を伸ばして、腕を上げて伸びをしてから、ルイス警部に「良かったわね、良い場所が見つかって。もうどうなる事かと思ったわ」といった。ルイス警部は、地面にどっかりと座りながら、安堵して溜め息をもらしながら、エメットに「考える事はみんな同じなんだな、危なかったね」といった。エメットは、目を細めながら微笑み、ルイス警部に「大丈夫よ、私が付いているもの、今回も大丈夫だったでしょ?ルイス?」といった。ルイス警部は、満面の笑みで、エメットに「エメット、君には驚かせられてばかりだよ、君は素晴らしいよ、本当に」といって、二人はキスをした。暫くの間、エメットが、ルイス警部の肩に頭を載せながら、ルイス警部はパスカルを腕に抱えながら、三人で夕方の午後三時半頃の陽の光に照らされながら、アトラクションの城の丁度真横に陽が見えて、池の水面がキラキラと輝く広場での景色に浸っているのだ。その風景はこの世のものでは無くて、ギリシャ神話の神々が暮らす世界の風体を連想させる様である。ゆっくりと時間が過ぎて行った、ルイス警部とエメットとパスカルは落ち着いた気分の表情で、夕陽を眺めている。ルイス警部は、ふと我に返った様に、エメットに「そろそろ家に帰る事にしようか?エメット。段々と辺りが暗くなってくると、足元が暗くて怪我をするかも知れないからね、どうだい?」といって、エメットを眺めた。エメットは、陽気な様子で、ルイス警部に「ええ、そうね。本当に良い時間を過ごせたわ、とても楽しかったわよ、ルイス」といって、見つめた。それからルイス警部とエメットはキスをした。午後の気持ちの良い風がふうっと、ルイス警部とエメットとパスカルの三人の間を走り抜けた。朝の熱い日差しと陽に温められた風では無く、もう夕方の涼し気な風なのだという事が分かった。パスカルは、ルイス警部の腕の中で、もう既に眠っている、先程の吹き付けた風にパスカルの少しだけ生えているプラチナ・ブロンドの髪の毛をピカピカと黄金色に輝かせながら揺らされた。ルイス警部はパスカルをエメットに一旦預けると、ゆっくりとその場から立ち上がって、背筋を伸ばした。そしてまたルイス警部は、エメットからパスカルを預かり、直ぐ近くにあるバギーに乗せた。エメットは、右腕を地面に付けて、腰を上げてから立ち上がった。それからバギーを押すための取っ手を掴んでいるルイス警部の右腕にエメットが腕を回した。エメットは、顔を向けながら、ルイス警部とパスカルに「さあ、帰りましょう。パスカルも疲れたわね、急いで帰りますからね、うふふ」といって、ルイス警部とエメットとパスカルの三人はALTON TOWERSの出口へと向かって歩き出した。遊園地はまだまだこれから楽しいイベントがあるのか、午前中よりも人々で溢れ返り出した。ルイス警部とエメットは満足げな顔をして、パスカルはバギーの中で眠りにつき、三人は帰り道を進んでいる。暫くして三人は遊園地の出口に着くと、ルイス警部は、バギーからパスカルを抱き上げてエメットに渡して、空のバギーを遊園地の出口に居る職員に届けに行った。エメットは、パスカルを優しく抱えながら、パスカルに「良し良し、良い子ね、もう直ぐ車に乗りますよ」といって、軽く揺さぶっている。ルイス警部は、出口に居る職員に「あのう、これバギーなんですが、何処に渡せば良いか教えて下さい」といった。職員は、素早く対応しながら、ルイス警部に「ああ、はいはい、こちらです、そこに置いて頂ければ大丈夫ですよ」といって、にっこりと歯を見せて笑った。ルイス警部は、いそいそとバギーを職員に言われた通りに、指示した場所に置いて、職員に「それではありがとうございました、ここの遊園地楽しかったですよ」といった。職員は、嬉しそうな表情で、ルイス警部に「それは良かったです、また来て下さいね」といった。ルイス警部は、コクリと頷いて、その場から立ち去りエメットとパスカルの待つ場所へと行き、ルイス警部とエメットとパスカルは、遊園地であるALTON TOWERSの駐車場へと向かった。ルイス警部とエメットはパスカルを抱えながら、楽しい気分のままでゆっくりとした足取りで暫く歩き、自分たちの車の場所に到着した。それからルイス警部は、オレンジ色のJAGUAR-C-X75の運転席に座り、エメットとパスカルは後部座席に座ると、車のエンジンをかけて、エメットに「それでは準備万端かな?エメット?」といって、後ろを振り返った。エメットは、はきはきとした口調で、ルイス警部に「ええ、大丈夫よ。パスカルもシートベルトをしたわ、オッケーですよ、ルイス」といって、指でジェスチャーして見せた。するとルイス警部は、きりっとした表情で、エメットとパスカルに「出発進行」といって、車を発進させた。

 車の中でルイス警部が眠らない様に、エメットが話しをしながら、二人でお菓子を食べながら、夕陽が街を照らす中を進んで行った。帰る道からは人々の行きかう様子がたくさん見えて、建物からもたくさんの人々が出て来るのが分かった。みんな週末を楽しんでいる様である、もちろんルイス警部とエメットとパスカルも今日を思う存分楽しんで来たのだ。街の人々は週末であるから午後の遅い時間も遊ぶ予定であるらしく笑顔で携帯電話で話しをしている、恐らくこれから友達を呼んでもっと遊ぶ予定なのであろう。週末は若者たちも老人たちもみんな週末を謳歌しているのが、誰からでも分かる程だ、みんな何かしら予定を立てて実行しているのだろうという事が誰にでも分かる様である。暫く車を走らせると遊園地付近の街の様子とは違った雰囲気になって来た、英国の大都市ロンドンに近づいて来たという事だ。ロンドン付近の街はとても近代的な造りの建物がずらりと並び、威厳をかもし出している、ロンドンはとても素晴らしい街なんだぞっと、まるで街自体が言っている様である。たしかにロンドンは素晴らしい街なのである、またもう暫く車を走らせるとロンドン市内にある自分たちの家にルイス警部とエメットとパスカルは到着した。車は家の駐車場に停められると、運転席のドアが開き中からルイス警部が出て来て、後部座席のドアを開けて、エメットとパスカルを車から降ろした。ルイス警部は、車のドアに手を載せながら、エメットとパスカルに「家に着きましたよ、お姫様、それから僕たちの天使であるパスカル」といった。エメットは、顎を突き出しながら、ルイス警部に「あら、もう着いたのね、ルイス王子様。今日は凄い幸せな時間をありがとう、愛しているわルイス」といって、柔らかい視線を注いだ。ルイス警部は、手と腕を使って敬意を表すジェスチャーをしながら、エメットに「それはそれは光栄ですよ、お姫様。僕も愛しているよエメット」といって、二人はキスをした。そしてルイス警部とエメットとパスカルは家の中へと入って行った。

 少しばかりか時間が経ち、エメットがパスカルを二階の部屋に寝かし付けて来て、一階へと下りて来た。そこにルイス警部は、キッチンで飲み物を入れながらエメットに声を掛けた。ルイス警部はエメットに、ほんの少しだけゆっくりと熱い紅茶を飲まないかという事を言ってみたのだ。エメットはルイス警部の提案に賛成して、二人はソファのある部屋へと紅茶を持ちながら、軽い食べ物としてチョコチップクッキーを箱ごと持ってソファの部屋に移動した。そのソファのある部屋は本がいっぱいに詰め込まれた中位の大きさの茶色の本棚と何か記念で貰った年代物の食器が並べられている中位の大きさの白い棚があり、部屋の黄緑色の壁には黄色い色がベースになっている絵とオレンジ色がベースになっている絵と白と青色がベースになっている絵が、大きな額縁に入って飾られていて、絵が飾られている壁の左隣には大きな窓があり、その大きな窓からは朝は気持ちの良い日差しが入って来るのだ、今は外が真っ暗で光は射してこないのである。窓の前には大きな花瓶があり、その花瓶には黄色い花が挿してあり、花瓶は赤い花柄の模様の花瓶なのである。部屋の中央には大きなベージュのソファがあって、その足元にはベージュに茶色の線の入ったカーペットが敷いてある。ソファには同じ大きさの白と黄色のクッションが一個ずつと二つのクッションより少し小さいオレンジ色のクッションが一つ置いてある。ソファの前には、ガラスのテーブルが置いてあり、そのテーブルの上にはガラスの花瓶があり、そのガラスの花瓶には白とオレンジ色の花が挿してあり、テーブルの前にはテレビがあるのだ。ルイス警部とエメットはソファに深々と座り、ルイス警部は片方の手にはセイロン紅茶の入ったコップを持ち、もう片方の手にはチョコチップクッキーを持って、サクサクと口から音を出しながらクッキーを食べている。エメットは両手でセイロン紅茶の入ったコップを持ちながら、熱い紅茶をゆっくりと飲んでいる。ルイス警部は、クッキーを飲み込むと、エメットに「素晴らしい一日だったと思わないかい?エメット?これからテレビでも見ながら過ごさないか?」といって、微笑んだ。エメットは、ゆっくりと紅茶をすすると、ルイス警部に「本当に素敵な日だったわ、ルイス。良いわよ、どんな番組をやっているかチェックしましょう、もし面白そうな番組が何も無かったら、そうねチェスでもしましょうよ、どう?ルイス?」といって、微笑み返した。ルイス警部は、頷きながら、エメットに「良し分かった、それで決まりだ。早速まずはテレビ番組調べからだ、ではいくぞ」といって、テレビのリモコンを掴み番組を調べ始めた。エメットは、テレビ番組を見ながら、ルイス警部に「これはどうかしら?面白そうじゃない?ミステリー番組よ、どう?ルイス?」といって、視線を投げた。ルイス警部は、眼を輝かせながら、エメットに「良いね、一緒に推理でもしようか」といって、セイロン紅茶を一口飲んだ。そうこうしていると、いきなり家の呼び鈴が鳴った。エメットが、テレビ画面を見ながら、ルイス警部に「こんな時間に誰かしらね、何事も無いといいけど、折角の週末が台無しにならないといいけど」といって、溜め息をついた。ルイス警部は、クッキーを一口かじると、エメットに「本当だな、ここで待ってて、直ぐに様子を見て来るよ。そしたらまたテレビの番組調べだ。エメット、ねっ」といって、微笑みかけた。エメットは、ルイス警部の微笑みに気付いて、大きな笑顔を見せた。ルイス警部は、ガラスのテーブルに置いてある皿にクッキーを置いて、紅茶の入っているコップをそのガラスのテーブルに置くと、直ぐにソファから立ち上がり、家の玄関に向かって歩き出した。ルイス警部は、訪問者に向かって「今ドアを開けますよ」といって、玄関の覗き穴から外を見た。ルイス警部は、驚いた様子で、訪問者に「これはこれは、どうしたんですか?こんな時間に?何か問題でも起きたんですか?さあ、取り敢えず中に入って下さい」といって、玄関のドアを大きく開けた。訪問者は、ルイス警部に「ああ、済まないね、ジョナサン警部、実は相談したい事があってね、それで来たんだ。では失礼ながらも中に入らせてもらうよ」といって、開かれている玄関のドアを通り抜けて入って行った。先にルイス警部が家の中に入って、その後に訪問者がついて行った。エメットが、テレビから顔を上げて振り返りながら、ルイス警部に「誰だったの?」といった。ルイス警部は、少し慌てた感じで、エメットに「僕の上司のバイミラーだった、ヒューバート・バイミラーだったよ、それで何か相談したい事があるんだって、だから家の中に入れたよ」といった。エメットは、あたふたしながら、ルイス警部に「それは急な話ね、仕方ないわね。今から何かお茶を出して、私も相談事を聴くわ、どんな話しかしら嬉しいお話しだと良いんだけど」といって、溜め息をもらした。ヒューバート・バイミラーは、四十二歳の英国人で、ルイス警部の所属する英国警察の直属の上司で、英国軍と英国警察組織の協力下で編成した捜査機関である英国特別捜査機関の捜査部隊に所属している特別捜査官たちの上司でもある。髪の毛の色はダークブロンドで、髪型はとても短く髪の毛を刈り上げていて、顔に短い無精ひげをたくわえていて、目の色はライトブラウンとダークグリーンの中間の色のヘーゼルである。眉毛が太く少し頑固さが窺える、しかし強い優しさも感じさせる。体格はがっしりしていて、背も高い方である。洋服はスーツ姿で、白いワイシャツの上に色がネイビーブルーのベストを着て、ズボンもネイビーブルーで、ジャケットもネイビーブルーの三つ揃いのスーツで、胸ポケットにはワイシャツと同じ白のハンカチを入れている。ネクタイは赤と黒茶色の中間のえんじ色のネクタイを締めている。靴は茶色の革靴を履いているのだ。ルイス警部は、上司のバイミラーをキッチンの傍の食卓のテーブルの席の一つに座らせると、エメットがバイミラーに出すお茶を待ちながら、ちょいとした世間話しを始めた。バイミラーは、最近のニュースの話題を持ちかけて来て、意見を求めて来た。ルイス警部は、軽く自分の思った事を話し出した。暫くしてバイミラーがルイス警部とエメットの子供であるパスカルの話しを聞いて来たので、最近のパスカルの成長に付いてとパスカルと過ごした事、楽しかったイベントを話して聞かせた。そうこうしているとエメットが紅茶のダージリンティーと少し小さい一口サイズのビスケットを皿に何枚か出して運んで来た。エメットは、いきなりの来客で戸惑いながらも用意が出来たので機嫌良く、バイミラー上司に「どうぞ、紅茶とお菓子ですよ。こんな時間にどうなさったんですか?うちのルイスに何か関係がある事ですか?悪い事ですか?」といった。ルイス警部は、待っていたという様子で、バイミラー上司に「そうですよ、午後八時半ですよ、いったい何事です、まさか世間話しをしに来たんじゃありませんよね?相談事があるって言ってましたね。それはいったいどんな事なんです?」といって、鋭い視線を注いだ。バイミラーは、ニ回程頷いてから、ルイス警部に「そうだな、早速本題に入る事にしようか。実を言うと又しても盗難事件が起きたんだ。場所はスペインなんだよ。私が又と言ったのは、その盗難事件がそんじょそこらの連中では無理な盗難なんだ。もしかしたら私たちが担当した事のある国際的密輸事件が絡む犯行であるかも知れないと思われるんだ。しかし以前の国際的密輸事件は既に解決済みだという事実も否めないんだ。今の所は憶測に過ぎないんだ。しかし今回のスペインで起こった事件がもし私たち英国特別捜査機関が担当した事件の犯人たちの仕業なら、凶悪犯が野放しであるという事になる。それは英国政府としても許せる事では無いと思っている所なんだ。もう既に英国国家犯罪対策庁であるNCAが捜査に動き出しているんだ。NCAの連中は完全に前回と前々回の時と同じ犯罪組織が行った犯行であると見ているんだ。NCAは前々から追っている事件だから犯人たちの手口が以前に起った事件と全く同じだと分かるんだと主張し、今回のスペインでの事件もNCAが追っている国際的密輸犯たちだと断定して捜査を開始している。ジョナサン、私たち英国特別捜査機関は、正義を執行しなければいけない。英国政府は以前の国際的密輸犯たちの犯行と同じである可能性がある事と、信頼できる捜査機関に頼みたいと思い、私たちに捜査の任務を依頼して来たのだ。ジョナサン、特別捜査官として捜査任務に当たってくれないか?」といって、眼の奥を炎で光らせた。エメットは、難しい顔をしながら「それはとても困った事ですわね」とつぶやいた。ルイス警部は、とても慎重な面持ちで黙って座っている。バイミラー上司は、畳み掛ける様に、ルイス警部に「どうだね?引き受けてくれないか、ジョナサン」といって、熱い視線を注いだ。ルイス警部は、暫く黙って考え込んでから、バイミラー上司に「ええ、そうですね、ではその任務を当たってみる事にしましょう」といって、見つめた。バイミラー上司は、返事を聞いて安心した様子で、ルイス警部に「うん、嬉しい返答だ、ジョナサン。では早速今分かっている盗難事件の事を話そう。盗難があった場所の詳細はスペインのセビリアで、あの大航海時代の航海士であるクリストファー・コロンブスの墓がある、セビリア大聖堂の金で出来た木製祭壇衝立から金を剥がし採られたという事件なんだ。セビリア大聖堂は世界遺産で警備もちゃんとしていたという事なんだが、まんまと金を奪われたのだ。分かっている事はその位な物だが、英国特別捜査機関の捜査部隊がこれから現地であるスペインのセビリアへと飛んで、先にスペインに入国しているNCAと現地の捜査機関のスペイン警察と合同で今回のセビリア大聖堂で起きた事件の捜査を開始する予定だ。スペインのセビリアに行けば分かる事もたくさんあるだろう」といった。ルイス警部は、きりっとした顔を見せながら、バイミラー上司に「分かりました、ではいつスペインに行きますか?直ぐにでも捜査を始めないと手掛かりがなくなるかも知れません」といって、頷いた。バイミラー上司は、眼をしっかりと見開きながら、ルイス警部に「うん、ジョナサン、君の言う通りだ。君が準備を終え次第、直ぐにスペインに飛んでくれ。飛行機代はこちら持ちだから心配しないでくれ」といった。ルイス警部は、決断した面持ちで、バイミラー上司に「分かりました、これからスペインへの旅の仕度を始めます。仕度が出来次第スペインに向かいます」といった。バイミラー上司は、声を出して唸りながら、ルイス警部とエメットに「ううん、そうかでは頼んだぞ、ジョナサン。私は準備が整っているから直ぐにでも現地へと向かう、それでは後日スペインで会おう。ではジョナサン夫人、ご主人をお借りしたいと思います。捜査にとても役に立つと思いますから、それではまたお会いしましょう、ごきげんよう」といって、席を立った。ルイス警部は、バイミラー上司に「では後日スペインで会いましょう」といった。エメットは、慌てた様子で、バイミラー上司に「ええ、ルイスの事を頼みますわね。ルイスは仕事をとても頑張りますからね、バイミラーさんの力になれると思いますわ。主人を無事に返して下されば、それで十分です、ではまたお会いしましょう」といって、軽い会釈をした。ルイス警部とバイミラー上司は、食卓のテーブルの自分の席から立ち上がって、握手を交わして、その後にルイス警部とエメットは、バイミラー上司を玄関まで見送った。ルイス警部は、玄関の扉が閉まると直ぐに、エメットに「これからスペインに行く為の仕度を始めるよ、忙しくなるなぁ。エメット、君は僕の両親の家に居ると良いよ、パスカルの事も安心して任せられるだろ、直ぐに僕の両親に連絡を取るよ」といった。エメットは、落ち着いた口調で、ルイス警部に「ええ、これからだから少し大変だけれど、あなたがそう言うなら、うん、スペイン旅行の協力をするわ。ルイスの両親と一緒に居ると、あなたが居ない間の不安な気持ちが軽減されるから、とても助かるわ。ルイスのご両親と一緒に、パスカルと仕事に熱中していれば良いんですもの、そうすれば、あっという間にあなたが帰って来る日になるわ。ルイス、とても良い提案だと思うわ」といって、元気良く頷いた。ルイス警部は、しゃきっと背筋を伸ばしながら、エメットに「旅行じゃなくて仕事だよ、でも何か御土産が買ってこれると良いなぁ。何か考えておくよ、期待していてね、エメット」といった。エメットは、笑顔を見せながら、ルイス警部に「ルイス、あなたの一番大事な仕事は私とパスカルと一緒に居る事よ、それ以外はお遊びよ、良いわね。あなたが行きたいと言うなら仕方ないわね、暫くの休暇を与えましょう」といった。ルイス警部は、口元に微笑みを浮かべながら、エメットに「そうだね、だけど今回のスペイン旅行で手柄を立てれば昇進や給料のアップがあるかも知れないよ、それってエメットとパスカルを幸せにする手助けになるんじゃないかい、絶対そうさ」といって、エメットの腰に腕を回した。エメットは、渋々相手の言い分を思案顔で認めて、ルイス警部に「まあそういう考え方もあるわね、まあ良いわ、スペイン旅行の仕度を手伝います。ご主人様」といって、ルイス警部とエメットはキスをした。

 少ししてルイス警部は、自分の両親であるアランとエレンに電話をしている。数秒してルイス警部が今電話で話しているのはエレンだ。ルイス警部は、息を弾ませながら、エレンに「やあ、僕だ。ルイスだよ、最近どうしている?母さん」と電話でいった。エレンは、少し戸惑いながら、ルイス警部に「あら、ルイスどうしたの?急に電話をしてきて。何かあったの?」と電話でいった。ルイス警部がエレンに電話している所に、相手側の電話口から「どうかしたのか?エレン、ルイスか?ちょっと代わってくれ」という声が聞こえて来た。するとルイス警部が話している相手がアランに代わった。アランは、驚いた様子で大きな声で、ルイス警部に「ルイスか?どうした?あっ事件か?」と電話でいった。ルイス警部は、先程より落ち着いた様子で、アランに「実はそうなんだ、エメットとパスカルの事を頼みたいんだ。今度の事件はスペインで起こったんだ。どうか二人の事をお願いしたいんだ、父さん」と電話でいった。アランは、少し興奮した様子で、ルイス警部に「良し分かった、父さんたちに任せなさい。エメットもパスカルの事も大丈夫だ、任せなさい。心配せずに捜査に打ち込むと良い、いつこちらに来るんだ?いつでも良いが知っておきたくてね」と電話でいった。ルイス警部は、ほっとした声色で、アランに「ああ、こちらの仕度が済み次第直ぐに向かうよ。なるべく早く行くつもりだ。父さん、母さんにも宜しく頼むよ。家を出たら連絡するよ、車で行くつもりだよ。それでいつ到着するか見当がつくと思う、じゃあまた連絡するよ」と電話でいった。アランは、合点がいった様子で大きな声で、ルイス警部に「そうか分かった、こっちで母さんと二人でお前とエメットとパスカルの事を心待ちにしているよ、じゃあね気を付けてな、連絡待っているよ」といった。それからルイス警部とアランは通話を切った。

 翌日の朝だ。夜が明けると太陽が家々を照らしている。ルイス警部の家もその一つだ、陽が家の中をとても明るく輝かせているのだ。ルイス警部は、昨日の夜遅くの旅の用意で疲れているのか、眼を擦りながらベッドから上体を辛そうに起こした。そして自分の隣を見てみると、柔らかい微笑みを浮かべて、ようく眺めた。隣にはエメットが横になっている、とても気持ちの良さそうに、すやすやと寝息を立てながら眠っているのが眼に入って来る。眠っているジョナサン夫人は、髪の毛のプラチナ・ブロンドが朝陽を受けて黄金色に輝き、そして陽の光が透き通るような肌を浮き立たせている。ルイス警部は、ベッドから出ると寝間着のまま、部屋にある窓に向かって歩いて行き、窓に到着すると外を眺めた。外は太陽がサンサンと照らしていて、小鳥たちがたくさん居て、その小鳥たちが飛びながらさえずっているのが聞こえて来る。窓から少し遠くを見るとご近所の人たちが自転車に乗っている所や犬を連れて散歩をしているのが分かった。ルイス警部は、自分たちもそろそろ起きて朝食をとり、出かけないといけないなと思い、一階へと行こうと思い立った。その前にまずはエメットを起こさずに、パスカルの様子を見る事にした。なぜならエメットは昨日かなり頑張って用意をしていたからだ。それなのに起こすのは良く無いと考えたのだ。エメットを起こすのは朝食を大人二人分と赤ちゃん用の食事の用意をしてからだ。ルイス警部は、忍び足でパスカルの部屋に行き、慎重にパスカルの具合いを確かめると、問題が無い事が確認できた。次は一階への階段を忍び足で下りて行った。するとルイス警部は、まずはキッチンで電気ケトルに水を入れてからスイッチを入れた。なぜなら熱いコーヒーを飲む為だ。少ししてコーヒーを飲んで目を覚ましながら、ルイス警部は朝食の用意に取り掛かった。最初にキッチンの戸棚から二枚の食パンを取り出し、一枚の食パンを包丁で三角形になる様に対角線上に切ると、フライパンに載せて大量の油でカリカリになるまで焼いた。次に冷蔵庫からトマトをいくつか取り出すと少し厚さを保ちながら切り、フライパンの上に載せて又してもカリカリになるまで焼いた。次は冷蔵庫から何枚ものベーコンを取り出して来て、ベーコンをフライパンの上に載せてこんがりとなるまで焼いた。次は冷蔵庫から卵を四つ取り出して、一回に二つずつ割った卵をフライパンに載せて塩コショウで焼き上げて、目玉焼きを作った。そして最後にキッチンの戸棚から缶に入ったベイクドビーンズを二つ取り出し、一缶ずつ蓋を開けて、底の深い皿に出すと、電子レンジで温めた。そして仕上げに食パンやトマトやベーコンや目玉焼きやベイクドビーンズを皿に載せた、ENGLISH BREAKFASTの出来上がりだ。ルイス警部は飲み物の用意に取り掛かった。英国人なのでやはり紅茶を用意する事にしたのだ。用意するのはセイロン紅茶だ。なぜ紅茶を用意したのかというとENGLISH BREAKFASTの脂っこさを失くす事が出来てとても美味しく料理を食べる事が出来るからだ。ルイス警部は、キッチンの傍の食卓のテーブルにENGLISH BREAKFASTの皿を二つとセイロン紅茶の入っている黄色とオレンジ色のコップを二つ並べて、パスカルの食事用のミルクを用意した。さあ朝食の用意が整った。料理の良い香りが上の階のエメットが眠っている部屋まで漂って行った。エメットは段々と眠りから覚めて来た。エメットは「あら美味しそうな香りだわ、ルイスが食事を作ってくれたのかしら。さあもう起きないといけないわね、今日の予定に間に合わなくなるかも知れないわ。よっこらしょっと、ううん、気持ちの良い朝だわ、急いで下に行かないと」とつぶやきながら、ブランケットを退けてベッドから立ち上がった。エメットは大きな鏡のある机を前にして、机の上にあったヘアーブラシで長い綺麗な髪をとかしてから、髪をヘアーゴムで結い上げてパジャマのままで、パスカルの居る部屋に行った。そしてパスカルの居るベビーベッドを覗き込んだ。エメットは、隅々までじっくりと観察しながら、パスカルに「ほーら朝ですよ、まだまだ眠いですね、昨日は良い子に眠っていたのですね、偉いですよ。じゃあ下に行って、下の様子を見たら又来ますよ、直ぐに来ますからね」といった。パスカルは両手を頭の上に伸ばし、眠ったままだ。エメットはパスカルの居る部屋から出ると、下の階へと階段をゆっくりと下りて行った。エメットがキッチンのある部屋へと入ると、ルイス警部がコーヒーが入っている白いコップを持って飲んでいる所が眼に入って来た。エメットは、部屋の中に陽の光が差し込んで光輝いているので眩しいという顔をしながら、キッチンのある部屋のドア越しに寄りかかりながら、ルイス警部に「おはよう、ルイス。もしかしてあなたが朝食を作ってくれたの?何かとても美味しそうな香りが上の階まで上って来たわ」といって、微笑んだ。ルイス警部は、一口コーヒーを口の中に含むと、エメットに「ああ、そうなんだよ、エメット。ゆっくりとした呼吸で、幸せそうに眠っている君を起こす訳にはいかないからね。僕が朝食を作ったんだ、どうだい美味しそうだろ?」といって、食卓のテーブルの上にある皿を指し示した。エメットは、驚いた口調で、ルイス警部に「凄いじゃないの、ルイス。とても上手く食事を作れているわ、見ているとお腹がとても空いて来たわ。さあ早速食べましょうよ、ルイス、直ぐにパスカルも連れて来るわ」といった。ルイス警部は、心の中でほっとした様子で、エメットに「君に褒めて貰ってとても嬉しいよ、エメット、ああ、そうだね。直ぐに食事を頂こうか、ああ、ここで待っているよ」といった。エメットはルイス警部との会話を終えると、直ぐにパスカルを迎えに二階へと向かった。少しばかり時間が経ち、ルイス警部とエメットとパスカルは朝食を食べ終えて、自分の家の駐車場に停めてあるオレンジ色のJAGUAR-C-X75に色々とたくさんの荷物を載せて、自分たちも車の中に乗り込んだ。先程ルイス警部は、寝間着姿から半袖と長ズボンの組み合わせに着替え、エメットもパジャマから六月の気候に合った薄手の洋服に着替えた、それからパスカルも外出着に着替えを済ませたのだ。ルイス警部は、運転席に座ると車の発進の準備をしながら、エメットに「どうだい?車を出しても構わないかい?エメット?」といった。エメットは、パスカルのシートベルトを確認して自分のシートベルトを確認し終えると、ルイス警部に「ルイス、あなたもちゃんとシートベルトを締めたわね?気が焦ってしまって、うっかりと締め忘れてるといけないわ。こっちは準備万端よ」といった。ルイス警部は、急いで肩から腰までに手を当てて、エメットに「ああ、大丈夫だ、きちんとシートベルトを締めているよ。では車を出すよ」といった。エメットは、明るい口調で、ルイス警部に「良しでは、出発進行」といって、片腕を上に上げた。

 車を大分走らせると、ルイス警部の両親の家に着いた。ルイス警部の両親の家の前にアラン・ジョナサンが手を振りながら立っていた。アラン・ジョナサンは、ルイス警部の父親で公園警察の仕事をしていたのだが、定年退職をして、今はリージェンツパークでガイドをしているのだ。アラン・ジョナサンの髪型は短く切っていて、髭を生やしていて、髪の色は黒であり、目の色は濃い茶色である。アラン・ジョナサンの洋服は色が薄いグレーのワイシャツの上に、色が濃いグレーのベストを着て、色がチャコールグレーのズボンに色が山吹色の革ベルトをしている。靴は色が茶色のレザースニーカーを履いていて、白いサンハットを被っている。エメットは後部座席から車の窓を開けて、手を振りながら、アランに「こんにちは、アランお義父さん。迎えに出てくれてとても嬉しいわ」といった。アランは、頬を大きく膨らませながら、エメットに「それはそうさ、大切な家族だからな、お前たち三人に会うのを心待ちにしていたよ」といった。ルイス警部は、大きな声で、アランに「ああ、それは嬉しいな父さん、直ぐにこの車を父さんたちの家の駐車場に停めるよ。待っててくれ」といった。ルイス警部は、車のギアをいくつかガシャン、ギギと音を出しながら操り、車を停車させた。するとルイス警部とパスカルを腕に抱いたエメットが、オレンジ色のJAGUAR-C-X75から降りて来た。車から降りて来た二人は、車のトランクを開けて荷物を引っ張り出して、ルイス警部は両手に荷物を持ち、エメットはリュックサックを背負って、アランの前に現れた。アランは、穏やかな口調で、ルイス警部とエメットに「では二人ともこっちだよ。ルイス、荷物を一つ渡しなさい、私が持とう」といった。ルイス警部は、少し疲れた声で、アランに「ああ、助かるよ、昨日はあまり眠っていないんだ。なんたって急な仕事の話しだったんだ、それの対応に追われていたんだよ」といった。エメットは、少し困った様な口調で、アランに「そうなんですよ、いきなりルイスの上司が家に来て、仕事だって言うんですよ。私、ですから仕方なく家に入れて、ルイスと一緒に話しを聞いてみたんです。するとなんと事件が起こったって言うんです、それも海外でスペインだって言うんですよ。ルイスの上司のバイミラーさんがスペインに飛んで捜査をして欲しいって言うんですよ、それも急いでとの事なんです。だから昨日はルイスも私も大忙しでスペインに行く為の用意をしていたんですよ、それも真夜中までなんですよ」と口を尖らせながらいった。アランは、真剣な顔付きで、ルイス警部とエメットに「そうか、中で詳しく話しを聴こうじゃないか。これからの事を相談しよう、中でエレンも待っている。エレンにも聴いて貰おう」といって、少し力強い足取りで家の中へと向かって行った。

時刻は昼食時の少し前だ。ルイス警部の両親の家は、正面の一階部分が茶色と白色のレンガで出来ていて、正面玄関のドアは白色であり、建物の左右の横から後ろは濃い茶色の木材の壁で出来ている。二階部分は、白色の木材の壁で出来ていて、窓がたくさん備え付けてある。駐車場は建物の右側にある駐車スペースを活用している。ルイス警部の両親の家は、正面のレンガ造りの所からは、とても威厳が感じられるが、左右の横や二階の部分の色合いからはとても可愛らしい感じを思わせている建物であり、住んでいるルイス警部の両親の穏やかでゆったりとした人柄を感じさせている。ルイス警部とエメットとパスカルとアランの四人は、家の中へと入った。するとエレンが玄関口でタオルで手を拭きながら立っていた。エレンは、にこにこしながら、ルイス警部とエメットに「いらっしゃい、あなたたちにまた会えて凄く嬉しいわよ。突然の事で少し驚いたけれど、いざとなったら家族が力になるものだからね、いいわ、いったい何が起きたのか話して頂戴。ここではなんだから広間に行きましょう」といって、手招きをした。ルイス警部の両親の家は白いドアを通り抜けると、家の中は辺り一面真っ白い家具が置かれてあり、天井と部屋の扉も真っ白くて、壁は白地に薄い水色の花模様がされていて、床は茶色の色の木製で出来ているのが分かった。玄関の近くのドアの隣には白いテーブルがあり、そのテーブルの上には白い花瓶に黄色い花が挿してあるのだ。エレン・ジョナサンは、ルイス警部の母親で花屋さんを経営している。エレン・ジョナサンの洋服は、白い長袖のセーターに半分が黒で半分が金色のネックレスをしていて、紺色のスカートを着ている。そして色がベージュのスウェードスリッパサンダルを履いている。エレン・ジョナサンの髪型は、髪の毛が顔の顎までの長さで、髪の毛を外側にカールさせている。髪の毛の色は茶色で、目の色は青色である。エレンに連れられて、ルイス警部とパスカルを腕に抱いているエメットとアランは、玄関から伸びている通路を抜けて広間へと入って行った。広間はとても広く、大きなグレーの長方形のソファーが二つと中位の白い椅子が二つあり、グレーの長方形のソファーと白い椅子で、四角く真ん中にある中位の白いテーブルを囲んでいるのだ。一つのソファーの上に四つずつのグレーのクッションとベージュのクッションが一つずつと白地に水色と茶色の線の入ったクッションが一つ置いてある。一つの椅子の上にはベージュに白い線の入ったクッションと白いクッションが置いてある。広間の周りは全てが白色で構成されていて、広間にある戸棚や大きなレンガで出来ている暖炉も白く塗られている。広間の部屋には大きなスライド式のガラス窓があり、このガラス窓から庭に出る事が出来る。またこのガラス窓は陽の光が射して部屋の白色によって光が反射されて、部屋の中がとても明るくなる造りになっているのだ。戸棚には植木鉢に入った植物が飾られていたり、大型のテレビが置いてあるのだ。ルイス警部は手に持っている荷物を大きなソファーに置き、エメットはパスカルを大きなソファーに置いてから背中に背負っている荷物を置くと、二人はふうっと溜め息を漏らした。アランは、荷物の一つを白い椅子の傍に立てかけると、エレンに「軽い食べ物と紅茶を持ってこようと思うんだ。ルイスもエメットもパスカルもとても疲れている筈だからね、どうかな?」といって、促す様に見つめた。エレンは、その場にいるみんなに対しての気持ちを察した様子で、アランに「そうね、直ぐに飲み物と食べ物を用意してあげましょう。アランは軽い食事の用意をして頂戴、私はルイスとエメットから話しを聴くわ」といった。少ししてアランが用意した軽い食事が行き渡った所で、エレンは神妙な顔付きで、ルイス警部とエメットに「ではつまり私たちに、エメットとパスカルの事をルイスが捜査でスペインに行っている間にお願いしたいという事なのね。いいわ、私たちに任せなさい、以前にも私たちに任せて仕事も上手くいったじゃないの。うん、ではこれからの事を話しましょう」といって、微笑んだ。ルイス警部とエメットがもう少し噛み砕いて自分たちの状況を話した直ぐの事だ。エメットが、少し心配そうな感じで、エレンに「前にも頼んだ事なんですけれど、パスカルの事を長い時間面倒を見て貰う事になるかも知れないんです、お願い出来ますか?ルイスが捜査に行っている間も仕事をしないといけないからなんです」といって、済まなそうに顔を曇らせた。ルイス警部は、前に身を乗り出しながら、エレンに「そうなんだ、エメットの仕事の給料も家計の大きな助けになっていてね。エメットの頑張りが無いと少しやっていけない所があるんだ、また頼んでも良いかな?」といって、眉間にしわを寄せた。エレンは、寛大な様子で、ルイス警部とエメットに「大丈夫よ、心配せずにルイスもエメットも仕事に打ち込みなさい。うん、大丈夫よ孫の面倒なんて嬉しい事ですよ。ルイスもエメットも私たちの事を信用して頼りにしている証ですもの。それからエメットの仕事を頑張って、お金を家に入れている所もとても凄く感激する事ですよ。なかなかそう出来る事じゃないわ。エメットが仕事に行く事のサポートをもちろんしますよ、エメットの事もパスカルの事も任せなさい、いいわね」といって、二人を交互に見た。

 ルイス警部の両親の家での平和で平凡な日々が過ぎて行って、ルイス警部が捜査の為にスペインに発つ日が訪れた。時は六月十八日の火曜日で時刻は午前七時半だ。ルイス警部は、仕事でスペインに行くので服装は白いワイシャツに明るい青いネクタイを締めて、ジャケットは濃い青色で少しだけ緑色が入っているのか光を緑色に反射して見える。ズボンもジャケットと同じ色合いを見せている。靴は赤茶色の革靴を履いている。その様な姿で大きなスーツケースを二つ程持って、ルイス警部の両親の家の前に立っている。するとアランが外出用の服装で玄関口の白いドアから現れて、ルイス警部に「良し準備は整っているんだな、ルイス?私がパディントン駅まで送って行くからな」といった。ルイス警部は、朝日で眩しそうな顔をしながら、アランに「ああ、ありがとう、父さん。とても助かるよ、今日も良い日だなここは。とても落ち着いた気分になるよ」といった。ルイス警部とアランが会話をしていると、慌ただしくパスカルを腕に抱いたエメットとエレンが小走りで、玄関口から出て来た。エレンが、部屋着の上にエプロンをしながら早口で、ルイス警部に「荷物は持ったの?スペインに着いたら迎えが来るのね?ちゃんと仕事先の住所やらは分かっているのね?」といった。ルイス警部は、二回頷くと、エレンに「準備万端さ、そう、現地に着いたら迎えが来る事になっているよ。ああ、捜査本部の住所をきちんと持っているよ、母さん」といった。パスカルを腕に抱いて部屋着姿のエメットが、ルイス警部に「ルイス、あっちに行ったら、直ぐに連絡を入れてね。心配して待っているからお願いね、パスカルも心配しているわよ、ルイス。小さな心臓が必要以上にドキドキしてるわ」といった。ルイス警部は、明るい気持ちの様子で、エメットに「分かってるよ、エメット、パスカルと君の為にも時間を見つけて、連絡を必ず入れる事にするよ。捜査で行き詰まったら、エメットとパスカルに連絡を入れて元気を貰うよ」といって、柔らかい視線を投げた。エメットは、落ち着いた様子で、ルイス警部に「ええ、待ってるわ、ルイス愛しているわ」といった。ルイス警部は、幸せな気持ちになった様子で、エメットに「必ず連絡を入れるよ、僕もエメット、君を愛しているよ」といって、二人はキスをした。すると直ぐにアランとルイス警部は、ルイス警部の両親の家の車であるJAGUARのXK8コンバーチブルで色がトパーズの車に乗り込んだ。

 暫く車を走らせると、パディントン駅に着いた。そしてアランが見送る中、パディントン駅からロンドン・ヒースロー空港へ向かう、ヒースロー・エクスプレスという名の列車に乗ったのだ。暫くして、ルイス警部は英国ロンドン・ヒースロー空港からスペインのセビリア空港へと飛行機で向かい、到着した時刻は午前十一時少し過ぎだ。

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