#09. Past II 〜絶望〜
俺たちは今学期、物質と化学結合について学んでいる。今日は化学結合と物質の性質を学ぶために、今からある実験を行おうとしている。
「全班、実験に必要な器具はありますか?薬品はこれから僕が各班ごとに渡していきます」
「はーい」
一部を除くみんなは、一斉に
確かに次の時間のテストは普段のテストよりは難しいらしい。だから、テスト勉強したくなる気持ちも分かる。それでも、化学の実験は危険性が伴うため、先生の話をしっかり聞くべきだと俺は思う。
足利先生はとても優しい先生で、先生が怒った姿を一度も見たことが無かった。加えて、他教科を化学の授業中にやっていても、あまり注意をしない。眠たそうな生徒には「寝てて良いよ」とも言う。一方で、数学の富井先生は授業中に他教科に取り組んだり、居眠りすると宿題とは別に追加で課題を出される。
こんなにも優しい足利先生が、まさかあんなことを起こすとは今の俺たちの中では誰も思っていなかっただろう。
「では、今から実験方法を説明します。まず、試験管に入っている各個体について、テスターを入れて調べて、ノートに記録して下さい。次に、電気が通らなかった試料につ‥‥‥」
足利先生は丁寧に一つ一つ実験方法を教え、各班に薬品を配り終えると、「少し職員室に取りにいくものがある」と言い残して職員室に向かっていた。
この時、俺はふと思った。薬品やガスバーナーを使用する実験において、生徒だけおいて教員が数秒でも教室からいなくなることが許されるのだろうか。
しかし、足利先生の性格などを知る俺たちからしてはあまり気に障らなかった。きっと、直ぐ戻ってくるだろう。
足利先生は教室を出ていく際にドアを閉めて行った。足利先生が居なくなってから15秒ほど経過すると、教卓の方から何か煙が出ているのに一人の生徒が気づいた。
「火事だー!!」
確認した生徒は教室中に響くように叫んだ。
「え!?」
その叫び声に全ての生徒は気づき、一斉に教卓の方に振り向いた。
「私、先生呼んでくる」
俺のクラス委員長は足利先生がいる職員室に行くために席を立ち上がった。そして、ドアを開けようとすると、ドアが開かなかった。
「ドアが開かない。どうして!?」
彼女は何度もドアをスライドさせていて、どうしてドアが開かないのか分からない様子だった。
きっと鍵がかかっているからドアが開かないのだろう。俺はこの時、何か嫌な予感がした。
そう思ってると、火事元の近くにいた生徒がいきなり倒れてしまった。
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