文芸部員たちの世界を救う物語?

一華ボタン

第1話 僕の日常

窓から涼し気な風が吹きカーテンを揺らす。

心地の良い風を受けながら、僕はパラりと小説のページをめくる。

今、教室では僕一人だ。

外からは、元気のいい運動部の掛け声が聞こえてくる。


僕はこの時間が好きだ。

完全に静かでは無くて、外から聞こえる元気な掛け声とか、他の教室とか廊下から聞こえてくる少しの声。

それでいて、教室には僕しかいない。

この雰囲気とかがいいものなのだ。


今日はこの小説を読んだら帰ろうかと思う。

この自由に帰れるところもポイントが高い。


落ち着いた気分で小説のページを捲っていく。


そんな中で、遠くの方で足音が聞こえてくる。

外からのものではなく、廊下を全力で走っている音だ。

僕はこの音をよく聞く。てか、ほぼ毎日聞いている。


「・・・・・・」


はぁ、とため息をつき小説に栞を挟む。

その間にも、その足音は近づいてくるのだ。


そして、扉が勢いよく開かれた。


「やぁ!空くん元気?私は元気だよ!」


息を切らしながら、ここまで大きな声を出さなくてもいいのでは?と思うほどの声で挨拶をしてくる女子生徒。

この声と勢いで彼女が元気な事は明白なのに、元気と言ってしまう少し変なところがある。


「あの、扉は静かにゆっくりと丁寧に開けてください。壊れます」

「ああ、それはすまなかった」

「僕は前にも注意しましたからね。気をつけてくださいよ」


そして、残念な事にこの人は僕のひとつ上の先輩だ。

いやもう、ほんとに残念だ。


「・・・君、なんか変な事考えてない?」

「考えてませんよ。美琴さんが先輩で残念だと思っただけです」

「それは失礼な事を考えていたね!?」

「残念な事は事実なので受け入れてください」

「無理だね!私はそんな事実は認めない!」


こんな感じの先輩で、こんな感じの関係だ。


「まぁ、そんな事はいいや!部活!今日も部活を始めるよ!」


それが結構気に入っていたりする。

落ち着いた気分もいいが、こんな感じのうるさくノリのいいのもまた悪くないとは思っている。

ああでも、残念とは思っているよ?


これが僕の日常だ。

学校で学ぶことを終えた放課後の時間。僕は部活動へと訪れる。

部室に入り、窓を開けて椅子に座って本を読む。


ここは文芸部。

これは僕たち文芸部員達で送る物語。

ふざけた日常会話をして、ふざけた物語を紡ぎ出す。そんなものだ。


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