第45話 す~ぱーなちゅらる
ズダーンッ‼
海岸に銃声が鳴り響く。
「うむ…ゾンビ物らしい音だな…」
少し離れたところで寛いでいた立花先生がビクッとなってカクテルグラスを落とすほどの銃声であった。
「なに? なに? 先生の平和の日常を崩すような音がしたわよ」
スイカ割りフィールドに走ってきた立花桔梗が見たものは…。
所々で砂浜に細く上がる硝煙と火薬の匂い、木っ端ミジンコのスイカとゾンビの頭部。
そして…ガタガタと歯を鳴らし怯える夏男であった。その顔はスイカの汁なんだかゾンビの血なんだか解らんが真っ赤に染まっていた。
「何するですか‼」
ひっくり返った冬華が目隠しを取って立ち上がる。
「ごめんあそばせ…」
発泡直前、春奈は冬華に膝カックンをかましたのだ。
逸れた銃口は夏男には当たらなかったらしい。
「うわぁ…うわぁぁぁぁー‼
砂浜に埋まった夏男が天に向かって叫ぶ。
「うむ、共同チャペルとはなんであろう? 小太郎会長」
「共同チャペル…今、あの人エルサレムって言ったんじゃないですか?」
「そうか? しかし夏男という男は、いやはや運がいいというか…ゲームを盛り上げてくれるな、天晴‼」
「異能生存体みたいですね…」
「炎の匂いで咽てるしな…アイツ」
「血とスイカと火薬で咽てるんですよ」
「春奈‼ 邪魔するなです‼」
「アレは私の獲物ですのよ…それに妨害工作はアリですわ、このゲーム」
「ムクククッ…覚えているです‼」
今、女の争いも勃発したスイカ割り、静かに3番手がグルグル回されていた。
「よし‼いいぜ向井」
「コレは…なかなか…きますね…」
フラフラと歩きだし、フィールド内で彷徨う向井。
手には何も持っていない。
「うむ…チョコボールは素手せいくのか?」
「ある意味、一番怖いかもしれませんね」
フィールド内で足に触れるもの全てを踏み抜き殴りつけ彷徨うターミネーター。
スイカを割ったり、ゾンビの頭部を砕いたり…。
「地獄絵図ですね…アレ」
「うむ…地獄を見れば心が渇く…」
秋季が割り箸を咥えたまま、クーラーボックスからコーラを取り出す。
「あっ、先生にも頂戴」
そんな地獄を眺めながら小太郎は思った。
(しかし…死なねぇな~あの人)
埋められた異能生存体、目の前に転がったスイカを食べ水分補給している頃、向井は明後日の方向へ歩を進め、手あたり次第ゾンビを殴打していた。
「第3の脅威は去った…」
夏男が大きくため息を吐く。
「そして最大の脅威が訪れるのですわ…ホーッホッホホホ」
斧をぶん回す目隠しした春奈。
「小太郎会長、今度こそ…ダメかもしれないな」
「そうですね…でも、コレを乗り切ってこその異能生存体でしょうから」
「そうね、閣下が突然、舞い降りてくるかもしれないわよね」
どこまでも、他人事な立花桔梗、その人であった。
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