第43話 どろ~いんぐ・ろっと
ブォーン‼ ブォーン‼
春奈が斧を素振りしている、空を斬る重い音が小太郎の不安を煽る。
「不思議ですわ、この沸き上がる力を抑えきれませんの」
清々しい顔で春奈が額の汗をグイッと拭う。
「あぁ…副会長先輩、伝説の戦士に目覚めるんじゃねぇかってくらい目が怖ぇぜ…」
爽やかな表情、血走る眼光、あの青海が目を逸らすほどのバーサーカー状態の春奈。
「気が見えるようです‼」
冬華がグッとサムズアップ。
「いや…気というか…殺意が駄々洩れているような…」
小太郎が1歩後ろへ下がるほどの春奈の迫力。
スタイルの良い美人、ビキニ、斧…ファンタジーでは定番なのだが、リアルで見るとホラー感が半端ない。
「一発で仕留めて見せますわ」
「そうです‼ 冬華は目隠しなんていらないのです‼」
「目隠しなしとか…すでにスイカ割りの基本を無視してない?」
小太郎が不安げに埋められた夏男の方に視線をうつす。
目が合った小太郎に無言でHELPを訴える夏男。
小太郎が視線を逸らすと、夏男の目からブワッと涙が溢れる。
「小太郎…飼い犬を家の事情で捨てなければならない、そんな気持ちだな私は…」
ポンッと小太郎の肩に手を置く秋季。
「止められないんでしょうか?」
「うむ…見ろ、すでに青海と向井は順番を決める、あみだくじを砂浜に引き始めている…無力だな私たちは」
「こういう時こそ教育的指導が必要なのでは……」
小太郎が立花先生をキョロキョロと探すと、少し離れた場所にビーチパラソルを立ててカクテルグラスでアルコールを摂取していた。
脇でゾンビが大きな団扇で立花先生を仰いでいる。
「リゾート感だしている…」
「うむ…傍観を決め込む姿勢だなアレは」
「止められないんでしょうか?」
「うむ、無理だ‼ だが私は、それでも夏男は生還すると信じている‼」
パンッと扇子を広げてスタスタとその場から離れる秋季。
「あの…どこへ?」
「うむ…ヤキソバの準備をしようと思ってな、バーベキューの締めはヤキソバだろ?」
「アソコに埋まっている人生の締めを突き付けられている人はどうするんですか?」
「……小太郎…今は信じよう…奇跡を」
「……」
「オッシャ‼ 俺が1番だぜ‼」
そうこうしている間に、あみだくじで1番を引き当てた青海が釘バットを構えた。
「チッ‼」
整った顔を歪めて舌打ちする春奈。
「青海、オマエは目隠し必須です」
「ちっこい先輩…すいか割りなんだから目隠しは皆が必須だろ?」
「冬華は一発必中‼ 一撃必殺です‼ 目隠しなんて不要です‼」
「それじゃ勝負ならねぇじゃねぇか‼」
「勝負? あの不埒な者のヘッドを叩き割るだけなのです…勝負?」
「それじゃただの処刑じゃねぇか‼」
「いけないのですか? 冬華…せっかく2番なのに?」
「ダメだろ? 普通にダメだろ?」
「ゴチャゴチャうるさいですわ‼ 目隠しアリで構いせんから早く始めてくださらない?」
そういう春奈…4番であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます