ある日の小鬼ちゃん日記 番外編

『『『···っ』』』ぷるぷる


ただいま小鬼ちゃんたちは三人抱き合って震えてます。


きゅるる『大丈夫。襲いはしない』

『そうだよ。ちょっ~とばかし協力して欲しいだけだからさ』

『じっとしてればすぐ済むからさ』

『なんたって今日の主役だからねぇ』


『『『···っっ』』』ぷるぷるぷる


きゅるる『子供たち』

『『『やっておしまい!』』』びしっ


きゅるるん『『『がってん!』』』

きゅるるん『『『『しょーち!』』』』

きゅるるん『『『『『『『てやーっ』』』』』』』しゅるるんっ


『『『···ぴゃあぁぁぁ』』』


ぴたぴたぴたっ


きゅるる『よくやった』

きゅるるん『『『『『『『いえ~い♪』』』』』』』


『『『ぁぅぅぅ···』』』


子グモちゃんたちの働きで、小鬼ちゃんたちは引き離された。


『はいはい。採寸するよ』

『うんうん。さすが子グモちゃんたち』

『実に採寸しやすい立ち姿に固定されたね』

きゃるるん『『『『『『『えっへん!』』』』』』』


そう。小鬼ちゃんたちはおかみさんたちの工房の作業台の上に小鬼ちゃんたちの糸で固定されている。


今日は聖域で暮らすようになってちょっとふっくらしてきた小鬼ちゃん達の採寸をやり直して、新しいお洋服を作るのです。まあ、他にもやりたいことはあるんだけど


『ん~それでもまだ、つむたちはやっぱり細いね』

『もっと食べて大きくならないとね』

『そうだよ。聖域の美味いもんちゃんと食べてたら大きくなるからしっかりお食べ』


『『『は、はぃ』』』

『だぃじょうぶ』

『たくさんたべてる』

『ごはん、ぉいしいから』


きゅるる『いい子』なでなで


『『『···っ』』』きゅっ


小鬼ちゃんたちは、聖域に来てから自分たちはたくさんご飯を食べさせてもらってるのに、みんなにもっと食べるように言われるので、ちょっと困惑気味。

あと、まだまだ撫でられることに慣れなくてついつい、目を瞑っちゃいます。


ぼそ

『『『···まだまだだねぇ』』』


そんな小鬼ちゃんたちを、早くこういう触れ合いに慣れて欲しいとみんなが思っています。


『それで今回は海に凛さんもついて行ったんだって?』

『そりゃあ、また海切りとって来られても困るしね』

『ああ、サーディンランとか言うんだったかい?魚が群れですごい動きしてたよね』


きゅるる『凛さんが行っても結局なにかやらかすと思うけど』


『『『違いないね』』』


そう。おばあちゃんはアルコン様、エル様、ヴァル様、バートさん、というメンバーを聞いて

『あらあらまあまあ、何だか不安だわ』

と、ついて行ったのだ。


『サーヤちゃん達は?』

『あ、ゲンや山桜桃ちゃんたち、それにぽぽたちも巻き込んで何かしてたよ』

『ああ、大豆の他に落花生を収穫してたね。今は何か料理してるみたいだよ』


きゅるる『楽しみ』


きゅるるん『『『つむちゃんたちは』』』

きゅるるん『『『『すきなものできた?』』』』


『『『ぇ?み、みんな、すき。ぉいしい』』』

聖域の料理はたしかにみんな美味しいけど


きゅるるん『『『そうなんだけど』』』ふりふり

きゅるるん『『『『そうじゃないんだな~』』』』ふりふり

子グモちゃんたち肩を竦めて頭ふりふり


『『『···?』』』こてん

今まで必死に生きてきた小鬼ちゃんたち、食べることができるだけでも、とっても幸せなので、食べ物の好き嫌いという感覚がよく分からない。


『ん~とね、今まで色々食べてきたろ?』

おかみさんがどうやったら伝わるか、試行錯誤しながら話し出した


『『『ぅ、うん』』』こく

どれもこれも食べたことのないごちそうばっかり。すごくぜいたくなことだと思う。


『その中で特に、これは美味しいとか、また食べたいって思ったものはないかい?』


『『『ぇえと?』』』

みんなおいしく食べれたよ?


『じゃあ、苦手なものはなかったかい?』


『『『ぇえと、たべられたよ?』』』

食べられないものはないよ?


『『『う~ん、やっぱりちょっと違うね』』』はぁぁ

きゅるるん『『『『『『『だよね?』』』』』』』ふりふり


『『『···?』』』こてん

どういうことかな?


きゅるるん『甘いもの、辛いものあったら、どっちがいい?』

絹さんが聞き方を変えてきた

『『『ぇ?』』』

どっち?


きゅるるん『そう。今日から3日間このどちらしか食べれない。選んで』


『『『ぇと、ぁ、あまいの』』』

3日間も辛いのばっかりはちょっと、ツライ、かな?


きゅるる『じゃあ、しょっぱいのと、苦いのは?』


『『『しょ、しょっぱい、かな?』』』

苦いのはその辺に生えてる葉っぱを思い出すから


きゅるる『じゃあ、甘いのと塩っぱいは?』


『『『あ、あまいの、かな?』』』

甘い方がたくさん食ベられる気がする


『あはは、やるねぇ、絹さん』

きゅるる『それほどでも』


『らいちゃん、つむちゃん、ひょうちゃんは甘いものが好きなんだね』

『それで、苦いのが苦手なんだね』


『『『ぇ?』』』

そうなのかな?


『そうだよ。どの選択肢でも甘い方を選んだろ?それで、一番迷いなく切り捨てたのは苦いだった。よね?』


『『『そ、そうかも?』』』

甘いのは何だか幸せで、苦いのは聖域に来る前を思い出すから


『それで、辛いとしょっぱいは迷ったろ?ちなみにこのふたつだったら?そうだね、ポテトチップスこの間食べたろ?赤い辛い味のと、普通のうす塩あじ、のり塩でもいいね、どれがいいかい?』


『『『の、のりしお、かな?』』』

辛いのはたくさんは無理かな


『そうかい。なら、辛いものより塩味の方が好きってことだね』


『『『そうなの···?』』』

そんなの考えたことなかった


きゅるるん『『『ぼくたちも!』』』

きゅるるん!『『『『あまいのだいすき!』』』』

きゅるるん!『『『『『『『おんなじだね!』』』』』』』にこにこ


『『『う、うん』』』

子グモちゃんたち、うれしそう?


きゅるるん『ぼくはね、ケーキすき!』

きゅるるん『『『プリン!!』』』

きゅるるん『やきいも!』

きゅるるん『パンケーキもあるよ!』

きゅるるん『あんこ!』

きゅるるん『『『それも』』』

きゅるるん『『『あったか~』』』


『『『···』』』

甘いもの、たくさんでてきた

『『『すきなもの?』』』


きゅるるん『『『そうだよ!』』』

きゅるるん『『すきなあまいもの!』』

きゅるるん『『ほかにもあるよ!』』


『『『···』』』

そんなにたくさんあるの?


きゅるる『すきなものたくさん、いいこと』

『小鬼ちゃんたちも、少しづつ増やしていくといいよ』

『さっきので少し気づけただろ?』

『パンが好き、ご飯が好き、魚が好き、肉が好き、どんどん気づいていけばいいよ』


きゅるるん『『『すきなものわかったら』』』にこっ

きゅるるん『『『『おしえてね!』』』』にこにこっ


『『『ぅ、うん』』』

すきなもの


『『『あ···』』』


きゅるる『何か思いついた?』


『『『さいしょ、もらった』』』

サーヤちゃんたちがくれたお菓子


『ああ、サーヤちゃんたちにチョコとか、クッキーもらってたね』

『一口ずつ回しながら食べてたね』

『あの頃に比べれば大分食べられるようになったよね』

きゅるるん『えらいえらい』なでなで


『『『···っ』』』

また撫でられた!


きゅるるん『早く慣れる』なでなで


小鬼ちゃんたちのこと、みんなが好きなことにも慣れてもらわないとね。


「こんこんこん。はいっちぇましゅか?さーやでしゅよ」

『ぼくたちもいるよ~』


『『『ぷっ』』』

きゅるる『サーヤ』

『あの言い方は直らないねぇ』

『いいじゃないか、あのままで』

『そうそう。はいよ!今あけるよ』


がちゃ


『いらっしゃい。どうしたんだい?』

「おばあちゃん、かえっちぇきちゃ!」

『アルコン様たち帰って来たからお迎えに来たんだ~』

ぴゅいきゅい『『しゅごいの!』』


『おやまぁ、またとんでもないもんとってきたんだろ?』

『『『『『だいせいかい!』』』』』

『やっぱりね』


「こおにちゃ!いこ!」

『『見に行こうよ!』』

『『『すごいよ!』』』

みゃあ『おさかないっぱいにゃ!』

『海鮮祭りなのだ!』


『『『で、でも』』』ちら


『大丈夫。行っといで』

『採寸は終わったからね』

『私らもあとから行くよ』


『『『ぅ、うん』』』

「いこーっ!」


今日の主役は小鬼ちゃんたち。


『ふぅ。マグロにカツオにエビに大量ね。タラの白子、どうしようかしら♪からあげもいいわね。小鬼ちゃんたの好みに合うのは何かしら』

〖俺はさっき言ってたたこ焼きってやつが食いたいな!〗

〖鍛治神の好みは聞いてませんよ。私は海鮮チヂミというのが気になります〗

『海鮮焼きそばを忘れては困りますよ』

『凛、海鮮丼も頼む』

『あらあらまあまあ、今日は小鬼ちゃんたちの好きな物を探すのが目的なのをお忘れなく。エビフライはどうかしらね?』うふふ


『おお!すげぇな!こりゃ作りがいがあるな!』


そう。みんな小鬼ちゃんたちに『おいしい』だけではなく『好きな物』を見つけて欲しいのだ。そのために新鮮な海の幸ならどうだろうと海まで行ったのだ。おばあちゃんもおいちゃんも張り切っている。



そして

『『『ぁ···』』』

「うにゅ?」

『どうしたの?』

ハクの背中の上、小鬼ちゃんたちが急に声を上げた。


『すきなもの』

『あった』

『たべものじゃ、ないけど』

はにかみながら小鬼ちゃんたちが話し出した


きゅるるん『『『なに?』』』

きゅるるん『『『『なに?』』』』


『サーヤちゃんたちの、て』てれてれ

『ハクくんの、せなか』てれてれ

『あったかいの、すき』てれてれ

小鬼ちゃんたち、真っ赤


きゅるるん『『『『『『それもおなじだ!』』』』』』

「しょっか~さーやみょ、すち!えへへ」

『ぼくもうれしいな~♪』

ぴゅいきゅい『『たべものじゃないけど』』

『『うれしいね!』』

『『『『『うん!』』』』』


きゅるる『うふふ。すきなもの発見、おめでとう』

『『『良かったねぇ』』』ぐすっ


『『『ぅ、うん!』』』


小鬼ちゃんたちに好きな物が出来ました。もっともっと増えるといいね。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございます!(´▽`)

福は内!良い鬼は内!悪い鬼は外!小鬼ちゃんに豆ぶつける訳にはいかないですもんね。

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