第507話 おばあちゃん譲り?

ジュージューっ


大人数でも大丈夫なドワーフさんたち自慢のバーベキューコンロ。お外にいっぱい並んでます。


大人たちはもちろん、サーヤたちちびっこ同盟専用の安全対策ばっちりなコンロも、どこもかしこもジュージューと、おいしそう⋯ではなく、絶対においしい音と匂いが!


そんなちびっこ専用コンロでは今、


『サーヤたち、いくぞ。準備はいいか?』

おいちゃんが、片手に何か液体の入った瓶、片手にトングを持って、サーヤたちの顔を確認してから


「あいっ」ぴっ

『『『『『うん!』』』』』ぴっ

ぴゅいきゅい『『いーよ!』』ぴっ


『いくぞっ!』

ジャッ!ボワっ!


「ふおおおおっ」キラキラ

え~び~♪

サーヤは期待に目がキラキラ。でも


『わ~ファイヤーっ』

ぴゅいきゅい『『ぼわっ』』

『『こげちゃう~』』

『『『けさなきゃっ』』』

立ちのぼる炎!焦げちゃう燃えちゃうと慌てるちびっこ


『ワハハ!大丈夫、焦げたり燃えたりはしないから。アルコールを飛ばしてるだけだからな』

おいちゃんが笑いながら言うと


みゃあ『まっくろならないにゃ?』

『不思議なのだ。たしかに燃えたのだ』

『大きな火だったんだな』

『おいらが燃えるかと思っただよ』

『わたちもなんだな』


おいちゃんがエビにお酒をふって、ファイヤー!

みんなおっきなナプキンを両手でもって、おめめから上をぴょっこりだして、ビクビクしながらも一生懸命覗いています。


『サーヤちゃんたち、こっちもいきますね』

『こちらもです。準備はいいですか?』

春陽くんと山桜桃ちゃんたちの目の前には、ステーキとハンバーグ!手にはステーキソースと、デミグラスソース!


「あいっ!」ピシッ

ナプキンをお顔の前までまたピシッ!と!アツアツおソース、はねたら大変!でも、おめ目は出します!


『わわわっ待って待って~』ピッ

ぴゅいきゅい『『はいっ』』ピシッ

『『準備』』

『『『おっけー』』』

みゃあ『いつでもこいにゃ!』

『どうぞなのだ!』

ハクたちも準備OKです!


こそ

『ふふ、まあ、私も風の膜張ってるから大丈夫なんだけどね』

『しっ!サーヤたちは気づいてないんだから』

きゅるるん『『『ナプキンだって』』』

きゅるるん『『『『もえなくしてあるよ!』』』』

フゥとクゥは何をこそこそ言ってるのかな?そして、子グモちゃんたち、今すごいこと言った?


『『では、行きます』』


じゃっ!ジュワーっ


「うきゃーっ」

ぱちぱちくるーっ

『うわ~いい匂い~』

ぴゅいきゅい『『もくもく!』』

『『じゅわ~』』

『『『はやくたべた~い』』』

みゃあ『もうおいしいのわかるにゃ!』

『分かるのだ!』

『兄ちゃん!なずな!』

『うん!ちいにいちゃん』

『美味しそうなんだな』


あちこちで同じような歓声が上がってます。大人用の方は


『ぷはーっ酒を飲みながらの肉!』

『海鮮焼きってのと、酒も美味い!』

『エビに酒、最高だな!』バリバリ


『親父、美味いのはわかるがよ』

『ちゃんと焼けよ』

『ちゃんと配れよ』

親方たちドワーフさんが、みんなのお肉とか、お魚とか、貝とか、エビとかを焼きまくってくれてます。お酒片手に!こんがり焼けたエビはもちろん頭から殻ごと!バリバリ!


ジーニ様や、エル様たちのところは


『うちの出来の悪い息子らが世話になって』じゅうっ

『リノ様、あいつらほんとに力を使えたんですかね?』ひょい

『遠慮なんかしないでバシバシ本当のこと言ってくれて構わないんですよ』しゅばばば


おかみさんたちが高速で、お肉の山を焼いては配り、海鮮を焼いては配り、もちろん自分たちの分も忘れない。


『大丈夫ですわ。おかみさん。ちゃんと浄化の力を使えてましたわよ』

〖そうですね。それより次はあなた方だと思いますよ〗


『『『へ?』』』ピタッ


エル様の予想外の言葉にさすがに固まるおかみさんたち。


〖お肉、焦げますよ〗


『あっ、すまんね』じゅっ

『これ、食べ頃だよ』ひょい

『こっちもだね』しゅばっ


〖ありがとうございます。⋯うん、美味しいですね。皆さんもちゃんと召し上がって下さいね〗


『『『ありがとうございます⋯じゃなくて!』』』


しれっと爆弾発言をして、更に何も無かったかのように、食べ続けるエル様。我に返ったおかみさんたちが食ってかかると


〖何か不思議なことでも?お忘れですか?あなた方ドワーフたち全員が妖精まみれになったことを。特に金剛や紅たち六人は、身動きが取れないほどだったはずですよ〗


『『『あ⋯』』』


そうです。結葉様が前に


『『みんなぁ~お気に入りのドワーフさんたちと契約したい子ぉ~。ドワーフさんたちにと~まれぇ♪』』


と、精霊の呼声とやらで声をかけた結果、聖域中の妖精さんたちが集まって大変なことに⋯


〖思い出されましたか?〗にぃっこり


『そうだったね⋯』

『『『思い出したよ』』』

『集られたね⋯』

『『『思いっきりね』』』

『魔力吸われたね⋯』

『『『チューっとね』』』


大変良い笑顔のエル様に、苦虫を噛み潰したような顔のおかみさんたち。

エル様のしてやったりな顔が憎たらしいっと思ったりしてるが、その間も手は動いている。


〖あの中にしっかりといましたからね。全属性が〗しれっ


『『『は?』』』


サラッと、しれっと衝撃発言を繰り返すエル様。何食わぬ顔で、しかもパクパク食べながら


〖天河たちは急がないといけませんでしたからね。今回はあなた方は後回しにして、天河たちを優先させた訳です〗ぱくぱく


『『『⋯⋯』』』ジュウッ ささっ


〖その間にあなた方には天河たちや、あちらの里の装備を色々と揃えて頂けましたから、結果として良かったのですけどね。あっ、そのエビも頂けますか?〗ぱくぱく


『『『⋯⋯』』』ひょいっ


〖ありがとうございます。天河たちが里に帰ったら、今度はあなた方の番ですよ。せっかくの可能性を埋もれさせる訳にはいきませんからね。そうそう、アルコンやギンたちも他人事ではありませんよ。今更などと言わせませんよ。サーヤや私たちといる為か、あなた方の力も強くなって、使える魔法も増えてるはずですからね〗ぱくぱく


『『『⋯⋯』』』ジュウッ

『『⋯⋯』』

飛び火⋯


〖あ、それにイヒカあなたもですよ。あなたのその色、間違いなく光側ですからね〗パクパク


『⋯⋯』

『ととしゃま?どうちまちたか?かたまっちゃいまちた。ジーニしゃま、ととしゃま、かちかちでしゅ』

〖そ、そうね〗


とばっちりはどんどん拡がっていく、エル様効果⋯

終いにはイヒカ様まで。


〖鹿の子も素質がありそうですが、まだまだ小さいですからね。まずはサーヤたちと一緒に、しっかりと少しずつやりましょうね〗

鹿の子ちゃんまで?


『はいでしゅ。かにょこ、がんばりましゅよ』

〖鹿の子はえらいですね〗にこ

『えへへ♪ありがとでしゅ!』

しっかり鹿の子ちゃんが強調されてます。


『『『······』』』ひょいぱく

『『······』』ぱくぱく

『······』カチンっ


標的にされた大人たちは無言でぱくぱく。あ、イヒカ様だけ固まったままだ。

重い空気に、たまりかねたジーニ様が


〖ま、まあ、そういう話は後でいいじゃない。今は楽しく食べましょう〗

空気を変えるべく、ジーニ様が頑張ると

〖そ、そうですね。お母様の言う通りです。ご馳走は美味しく頂かないと。ね?アイナ、リノ〗

『そ、その通りですわ』

『ほ、ほら、お肉硬くなってしまってはもったいないですわ』

『『ね?お母様』』

皆さんも援護射撃!


『そうねぇ。サーヤたちみたいにねぇ』くすくす


『『え?まあ!』』

〖あらら~〗

〖かわいい~♪〗

〖魔神、目は大丈夫ですか?〗

みんなびっくり!


『ほっほ。あれはすごいですのぉ』

『ほっほ。顔中が口になったようですの』


サーヤたちは今


『サーヤ、自分の口の大きさ分かってる?』


「う?」もっきゅもっきゅ


『ハクたちもだぞ。体中で食べるわけじゃないんだぞ?』


『え~?』もぐもぐ

ぴゅきゅ『『う?』』もっきゅもっきゅ

『『ん?』』はぐはぐ

『『『⋯』』』もごもご

みゅ『にゃ?』ぺろぺろ

『だ···いじょぶ、···なのだ』もぐもぐ


フゥとクゥが呆れながら、こりゃ、もう何してもダメだ~とあきらめモード


サーヤたちは、自分の顔くらい大っきな伊勢海老を、手でむしっと、殻から外して、そのままお口に⋯


『もう手も顔もベトベトだな』

『お肉はフォーク使ってたんですけど』

『カニやエビはさすがに』

『まあ、そうだな。仕方ないな。だがな~』


お口いっぱいにエビを頬張ったサーヤたち。両方のほっぺはハムスターみたいにぷっくり。もっきゅもっきゅ夢中で食べてます。もう顔中、くわんくわん。


『あ~あ~喉つまらすなよ。まったく』


「『『『『『⋯⋯』』』』』」もっきゅもっきゅ


聞いちゃいません。 というか、聞いててもしゃべれません。


『つくし、なずな、これも三人で分けるんだな。ほら、切れただよ』

『『にいちゃん、ありがとなんだな』』

ぽぽちゃんたちは仲良く、三人で分けて食べてます。ちゃんとフォークで。


『ぽぽたち偉いな。綺麗に食べて。サーヤたちに見習って欲しいよな。あれ?そういや凛さんは?』


びくっ

『り、凛さんでしたらあちらに⋯』

山桜桃ちゃんが何だかビクッとしてから指さした方向は


『神棚?』

家の中にあるはずの神棚がなんで外に?


『り、凛さんとみあちゃんは、その横です』

今度は春陽くんが⋯


『横?⋯あ?』

凛さん、みあ、何してんだ?



『あれもこれも、素材は送っ⋯お供えしたから、次は料理よ。焼いただけのものは、みあ任せたわよ』

『任された』せっせっ

『サーヤたちはまだ素材を焼いただけよね。海と言えば焼きそばな気がするんだけれど、無いから、代わりに焼きうどんとかもいいわね。私は焼きうどんは醤油派だけど。あとは、お刺身でしょ?お味噌汁も魚のあらのと、エビのと作ったし、天ぷらとフライと⋯グラタンやクリームコロッケなんかもいいわね。うふふ。あら、サザエのつぼ焼きにお醤油たらさなくっちゃ♪』


かわいいくまの編みぐるみ姿のおばあちゃん。ここでは何も食べられない。ジーニ様を襲っ⋯頼み込んで天界の本体との『味覚共有』をゲットし、神棚を作り、お供えすることで、天界に食材を届けることもできるようになっている。なので⋯



『なるほど。自分で作って送ると⋯。だから、割烹着姿なんだな』

『はい。ずっとあんな感じです』

『お手伝いしようと思ったのですが、声をお掛けしていいのか⋯』

『そうだな。まあ、自分だけ食べられないのも気の毒だしな。そもそも、凛さんの大好物だらけだしな。今回⋯』

『あっ、サーヤちゃんのエビ好きって』

『そう。凛さんの大好物だからだよ』

『『なるほど』』

おいちゃんと山桜桃ちゃんと春陽くんが、おばあちゃんに同情の目を向けながら話していると⋯



『くふふふ。楽しみねぇ。はやく向こうで食べてくれないかしらね』

『はやくはやく』

『『くふふふふ、ふへへへ···』』



『ゲ、ゲンさん、あれ⋯』

『見てはいけないようなものを見たような⋯』

『⋯忘れろ。お前たちは何も見なかった』

『『は、はい』』

サーヤのエビ好きも笑い方も、しっかりおばあちゃん譲りだったということで⋯


『『何も見てない何も見てない⋯』』ぶつぶつぶつ

『山桜桃、春陽、すまん』



「おいちーにぇ。ふへへ」もっきゅもっきゅ

『おいしいね~うふふ~』もぐもぐ

『『『『『ね~♪くふふ』』』』』もぐもぐ


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

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